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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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27.健全なガール


「へ、へえ、中はこんな感じなんですねぇ……」


 見かけたことはあれど入る機会などなかった高級宿。

 流石に家具やインテリアは良い品を置いているようです。まあ大した審美眼があるわけではないので「なんとなく高そう」くらいの感想しか出てこないのが情けないところですが。


 まだ日の高い時間ではありますが、窓のカーテンを閉め切っているので室内の光源は幾つかのランプのみ。万が一にも外から見られるわけにはいかないので仕方ないとはいえ、この薄暗さが何やらいけないことをしているような気分を増幅させてくるかのようで……。



「りっちゃんさん?」


「はっ、ひゃい!?」



 勝手によからぬ想像をして緊張しているわたしと違い、マー君は堂々としたものです。制服姿の学生と修道女が二人でホテルの同部屋にいるという状況は、ただそれだけで良識ある世間の皆様から妙な誤解を招きそうなシチュエーションだと思うのですが、当事者の片割れたる彼はどんな心境でいるのでしょう。



「いや、その、こういう良いお部屋に入ったことってないもので。つい物珍しさを感じてしまいまして……ええ、それだけです。それだけですとも」


「ははは、そうですか。知らない建物を探検したりするのって楽しいですよね」



 何も聞かれていないのに変な言い訳などしてしまいました。

 この後のことを考えると、それも無理からぬことだと思うのですが。



「では、りっちゃんさん。そろそろ始めましょうか?」


「は、はい、不束者なりに精一杯努めますのでっ」



 ここに来るまでも雑談にそこそこの時間を使ってしまいましたし、帰りの時間を計算するといつまでものんびりとはしていられません。



「では……」



 大きなベッドの前で、マー君はシャツのボタンを外して肌も顕わに。


 そして、それから数分後。

 薄暗い室内には、二人の荒い息遣いと互いの肌と肌とを激しく打ち合わせる音が響き渡り――。




 ◆◆◆




 いや、違うんですよ。

 限りなく青少年の教育に悪そうな雰囲気だという自覚はありますけど、本当にそういうアレじゃないんです。ええ、令和の日本基準でもギリセーフではないでしょうか。



「はい、じゃあ次いきますよ……キィエエエエ!」


「ぐっ、ありがとうございます!」



 両手の毒手モドキで上半身裸のマー君を殴打すること十数分。

 平手で胸や背中を叩き、拳骨で抉り込むようなボディブローを入れ、裏拳や鉄槌で鎖骨や脇腹のあたりも念入りに。例の世界樹成分でダメージはすぐ消えるとはいえ、それでも叩かれた瞬間には痛みがあるのでマー君が苦悶の声を漏らすのも無理はないでしょう。

 殴るコチラにしても彼の体調を観察しながら一発一発、打ち込む場所と威力と使うべき技を考えないといけないので大変です。すっかり息が上がってしまいました。


 ……いえ、だから違うんですよ。

 そういう特殊なプレイとかではなく。

 この一見倒錯的な状況に至ったのには深い理由があるのです。



 先日、マー君のおかげもあって、わたしは晴れて院長先生から一人前のお許しを頂くことができました。あれはその場限りの方便というわけでもなかったようで、つまり今のわたしは見習いを卒業した一人前の修道女。晴れて毒手モドキでお金稼ぎができるようになったのです(余談ですが、同時期に入門したクーちゃんもわたしの翌日に一人前のお許しをもらったそうです)。


 そして最初のお仕事として紹介されたのが、これまで院長先生が専任でやっていたマー君の体質改善のための治療というわけです。いつもは習慣の酒場通いの前にフラッと立ち寄って施術を行っていたらしいのですが、その仕事がそっくりそのまま後任のわたしへと引き継がれた形ですね。


 幼い頃に色々あって極端に身体が弱くなってしまった彼は、これまでの継続的な治療により外を走り回れるくらいまで元気になったのですけれど、同年代の男性に比べるとまだまだ頼りない印象は否めません。


 それをもっと元気に大きくなってもらうのが現状の治療方針というわけです。

 原因がハッキリしている大怪我や大病を治すのに比べ、地道な体質改善というのは偉大なる世界樹の不思議パワーをもってしても長い時間がかかるのだとか。一回あたりの威力は弱めに、なおかつ頻繁に繰り返して、身体が対応できる範囲でちょっと多めの生命エネルギーをちょくちょく補充するような具合でしょうかね。


 なにしろ前に一度殺しかけたせいもあって最初は緊張していましたが、前回は過剰に力み過ぎていたのに加えて、パックリ開いた傷口から直接体内に世界樹汁が入ったせいで効き過ぎてしまったのが悪かったようです。健康な肌を手加減して叩くだけなら、あそこまで極端に効き過ぎることは恐らくないはず。



「ふぅ……どうです、マー君? 動悸とか眩暈とかありませんか?」


「はい、大丈夫です! あ、でも、りっちゃんさんへの熱い気持ちでドキドキはしていますけど」


「いやいや、そういうのは今いいので。まあ、このままちょっと休んで身体に異常が出ないようなら成功ってことでいいのかな?」



 治療の絵面が珍妙かつインモラルなのは否めませんが、さっきのは要するに神聖なる医療行為。つまりは健全で合法。何も問題はありません。そのはずです、多分。



「今日はありがとうございました! では、次は明後日にお願いしますね!」


「はいはい、こちらこそお願いします」



 そんなわけで最低でも二日に一度はマー君と会って健全な治療行為に勤しむことに。晴れて一人前になったわたしの生活は、こんな具合に変わっていったのでありました。


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世界樹汁、不味い!もう一杯! あれ?まさかエロエロしたら命にかかわる?
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