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転生して聖女見習いになったと思ったら何故か毒手の親戚みたいなトンチキ拳法を極める流れになってるんですけど!?  作者: 悠戯


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15.ビームとガール


 絶体絶命のピンチに駆けつけてくれたヒーローは王子様。

 それだけ聞くと何やらロマンチックな感もありそうなものですが。



「ははーっ! ありがたき幸せにございまする!」



 死にかけた危機感からの解放と偉い人を前にした緊張の落差で心が変な具合に整ったのか、ついつい妙な口調でお礼を言いつつ土下座ってしまいました。土下座る、なんとも使いどころが限られそうな動詞です。

 わたしの知る限りではこの世界に土下座の風習はないので相手を困惑させるばかりでしょうが、うっかり普段は忘れかけている前世の血が騒いだとでも申しましょうか。いえ、別に日本人やってた頃にも誰かに土下座をキメた記憶はないのですが。


 さて、そんな奇行を目撃してもクールな王子様は眉ひとつ動かしません。

 屋根の上から路地にいるわたしの目の前まで飛び降りてきて、特に足首やヒザを痛めることもなく華麗に着地。ただでさえ美術品のように顔が整っている上に、感情というものが備わっているかも怪しい無表情ゆえ、近くでまじまじと見られると異様な圧を感じてしまいます。



「あ、あのぅ?」


「金髪の、修道女……そうか」



 いったい何がどう「そうか」なのか分からないせいで不安ばかりが募ります。

 魔物と違っていきなり喰い殺されることはないでしょうが、知らぬ間に不敬罪の一つや二つやらかして機嫌を損ねていやしないかと緊張は増す一方。まるでお奉行様の沙汰を待つ罪人のようにハラハラドキドキしながら続く言葉を待っていたのですが、出てきた言葉はまるで予想外のものでした。



「礼を言う。友人が、マークがいつも世話になっていると聞く」


「はい、マー君ですか?」


「肯定する。これからも良くしてやって欲しい」


「え、ええ、それはまあ、はい」



 それはまあ彼と目の前の王子様は同級生なわけですから、何かの折にわたしのことを話題に出しても不思議はありません。だとしても、友達と仲良くしてくれたことに恩義を感じるというのは、ちょっと感情が重すぎやしないかと疑問に思わなくもないですが。それとも、やんごとなき身分の方々におかれましては、そういうのが普通だったりするのでしょうか。



「面白い修道女と知り合ったと聞いていたが、なるほど」


「あの、何が『なるほど』なのか伺っても……あ、いえ、やっぱいいです」



 さっきの土下座は異様な状況ゆえの特殊ムーブ。

 アレを通常の挙動だと誤解されるのは避けたいところではあるのですが……そういえば、今は街がたくさんの魔物に襲われて大ピンチの真っ最中なのでありました。大して長い時間話し込んでいたわけではないはずなのですが、路地の向こうから新手のナントカトゲトゲがワラワラと団体さんでやって来ているではありませんか。



「大丈夫だ、問題ない」



 しかし、クールな王子様はこんな状況でも表情を崩す素振りすらありません。

 列を成して迫ってくる魔物に向けて人差し指を突きつけると、なんと!



「光刃よ、奔れ」



 なにやら格好よさげなフレーズを呟いたと思ったら、指の先端から一条の光線が。狭い通路で一列になっていては避けられるはずもなく、恐怖の巨大昆虫は胸やお腹にポッカリと大穴を開けるとバタバタ倒れて動かなくなりました。

 先程の魔物がどうやって倒されたのかは見逃していましたが、このパーフェクトな王子様は希少な魔法の使い手でもあったようです。これだけ強いのなら、魔物の十や二十くらい物の数ではないでしょう。なにしろビームですよ、ビーム!



「む」


「はい、空に何か……ひぇ!?」



 しかし、新手を倒して安心したのも束の間。

 路地の隙間から空を見上げると、街の上空にはいつの間にやら先程のと同種の魔物が何十何百とブンブン飛び回っているではありませんか。いくら王子様が強いとはいえ、これは流石に分が悪いのでは……なんて、そんな考えはまったくの杞憂だったようです。



「大丈夫だ。ハァァ……カァ!」



 気合一閃。

 地上から周囲の建物の屋根上まで大きく跳躍した王子様は、両手の十指からそれぞれ先程と同等かそれ以上のビーム魔法を乱射。更には、なんと両の目からも魔法の光線を撃ち始めて、空を埋め尽くさんばかりの魔物を片っ端から撃墜しているではありませんか。


 わたしといえば、そんな戦いぶりをポカンと見上げていることしかできませんでしたが。



「あちらはまだ安全のようだ。行けるか?」


「あ、はい、お気遣いどうもです、へへっ」



 今の大跳躍の間に街中の魔物の散らばり具合や、人が集まっているであろう場所の確認まで済ませていたようです。つくづく何でもできますね、この人。


 欲を言えば安全な避難場所に着くまでマンツーマンで護衛をお願いしたいところでしたが、彼の異常なまでの戦闘能力をわたし一人のためだけに拘束するのは流石に気が引けるというもの。大雑把にでも安全地帯の場所が分かったのであれば、物陰に隠れつつ魔物の目を盗んで避難することくらいはできるでしょう。多分。



「では、また」


「あっ、はい。ありがとうございました」



 またの機会があれば、改めてお礼くらいは言いたいものです。

 王子様は再び屋根の上まで跳躍し……というか、空飛んでませんかねアレ?

 そうして空中に留まったまま、さっきと同じ両手の指プラス眼球からの十二本ビームを派手に撃ちまくっています。時折、射線が地上に向いているのは、わたしと同じく避難している人や戦っている方々への援護でしょうか。

 魔法使いについて詳しくはないですけど、魔力切れとか大丈夫なんでしょうかね。いえ、きっと大丈夫だからやってるんでしょうけれど。



「いやぁ、世の中にはすごい人がいるもんですねぇ」


 

 目からビームは……面白さとカッコよさを比べるとギリギリ面白さが勝る気がするけど。まあ強い上に面白いなら、かえってお得ぐらいのもんでしょう。


 道のあちこちに穴だらけになった魔物の死体が転がっていますが、それすなわち安全な証拠。たまに、まだ生きているのを見かけたら大急ぎで元来た道へ引き返しつつ、わたしは安全だと言われた方向へと少しずつ着実に歩を進めていきました。


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王子様ロボ?
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