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悲しみの先①~クラウス殿下視点~

本編よりもシリアス強めです。

幼い頃は身体が弱かった。しょっちゅう咳をして熱も出していた。

空気の綺麗な領地に療養に行かされたが、幼いながらに愛されているのはわかっていた。優しい使用人に囲まれ、折に触れ両親や兄が会いに来てくれたからそこまで寂しさも感じなかった。

こんな平和な日々がずっと続くと信じて疑っていなかった。


療養している私に会いに来る途中の事故だった。

幸いなことに兄はたまたま直前まで熱を出してしまっていたため、こちらに向かう予定の日には下がっていたものの念のためということで留守番ということになっていた。





「クラウス殿下。落ち着いて聞いてください。・・・・先ほど、両陛下がお亡くなりになったと知らせが入りました。」


そう私に告げてきたのは、当時宰相だったランバート・アルベルト侯爵だった。

突然の出来事に放心する私に、アルベルト侯爵は辛抱強く語り掛けてくれた。


「一緒に領地へ来てくださいませんか」という彼の言葉に、疑うことなくうなずいたのは幼い自分に向ける目がとても真摯なものだったからだ。

自分を単なる親を亡くした子供ではなくきちんと王族として扱ってくれていると感じられたから。


そうして握った手が、ほんの少し震えていたのには気づいたが、当時はその理由まではわからなかった。



無理もない。アルベルト侯爵と父は学生時代からの友人だったらしい。

戦友といえる存在を亡くしたばかりであるだけでなく、両親が亡くなったことが隣国や中央貴族達に伝わった後では、私自身の身も危なかった。

しかし、そんな危機的状況であることを、当時の侯爵は決して悟らせなかった。

私が純粋に両親を亡くした悲しみに浸れたのも、その胸を貸してくれた侯爵がいたからだった。侯爵は決して私にも、リーディアにも使用人達にさえ弱った姿を見せなかった。少し強張った顔はしていたが淡々と葬儀の準備を進めていた。


葬儀が終わった日の夜。ふと私は寂しさに目を覚ました。


リーディアはもう寝ているだろうが、大人の侯爵なら起きているかもしれないと、そっと彼の部屋に向かった。扉は閉じられていたが鍵は閉まっていなかった。

寝ていたら諦めて戻ろうとそっと扉を開けた時、一人酒を飲む侯爵の姿が目に入った。



彼は、静かに泣いていた。


「・・・マリア、ロディウス陛下・・エリス妃殿下・・・どうして皆、私を置いて行ってしまう。まだ、道半ばだと言っていたじゃないか。この国をもっと豊かにしたいと・・・そう一緒に誓ったじゃないか。二人の殿下の成長が楽しみだとっ言っていたじゃないか・・・。」


最後の方は涙で言葉になっていなかった。侯爵は最愛の妻と友人二人を亡くしたことになる。その悲しみは計り知れない。なのにそんな感情はおくびにも出さず私に接してくれていた。

顔は見えなかったが、震える背中に彼の弱さを見た。


気付かれぬうちに、そっと扉を締め部屋に戻った。

私の姿を見たら、彼はまた大人の仮面を被ってしまうとおもったから。




両親が楽しみにしてくれていたという私の成長。引き継いで見守ってくれている侯爵に報いるためにも、私は強くならなければならない。

そう、思った。


その日からまずは身体を少しでも強くするように心がけた。好き嫌いをなくし、息がすぐに上がるから嫌だった運動も始めた。

最初は少し歩いただけでも苦しくなってしまったが、続けていくうちに体力がつくようになってきた。


初めは心配そうにしていたリーディアも何かを感じ取ったのか野菜入りのお菓子をコックと一緒に作って差し入れてくれたし、エドワードは朝の散歩や元気になってきたら乗馬や剣の稽古に付き合ってくれた。


侯爵はそんな姿を見ても何も言わなかった。ただ優しく見守ってくれていた。


両親を亡くしてから2年。兄の事は気がかりだったもののやっと前を向けるようになってきた頃だった。


3話~5話くらいで完結予定。

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