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第23話 伝説的大怪獣と化したサメ神さま


「シャーシャッシャッシャッ……」


 聞こえてくるはずのないその声に動揺したのは、おヒメのみならず、半々蔵(はんはんぞう)もまた同様であった。


「あれほどの術を浴びて、なお……」


 驚嘆(きょうたん)のうめきが、意図せずして臓腑(ぞうふ)からもれ出る。


 天を見れば、まだ、サメと化したエッチ後屋(ごや)は赤々と燃えている。

 そして、土遁(どとん)の術にて形成した砂のドリルも、たしかにサメへと到達している。


 が、刮目(かつもく)して見よ。

 硬質な何本もの砂のドリルは、本来であれば名匠(めいしょう)の鎧をさえたやすく砕いてみせるが、サメの肌は、肉は、まったく貫かれてはおらぬ。


 肉体へとのびた何本かは、これまでとは比較にならぬほどのかたい鮫肌で、その衝撃を緩和され、ずらされ、ほんのささやかな刺し傷をつけるにとどまっている。

 そしてのどを突き刺さんばかりにのびた、急所への一本は、ああ、なんというおそるべき魔技(まぎ)であろうか……。


 サメの側面から、(いわお)のごとく頑丈な、たくましき二本の腕が生え、ドリルをその人外の膂力(りょりょく)にて抑えこんでいるのだ!


「シャーシャッシャッ! この奥の手を出すことになるたァな……。三柱(みはしら)最強のサメ神さまの奥義、とくとご(ろう)じろってなァ!!」


 そう叫び、その場で残像が生ずるほどの速度で回転すると、おのれを包む火をたやすく消し飛ばしてみせる。

 そうして、跳んだ。


 サメであったはずの生物が、まさしく跳んだ(ヽヽヽ)――跳躍(ちょうやく)したのである。


 そうして地面をゆるがしながら着地したそのカラダには、隆々(りゅうりゅう)たる二本の脚が生えている……。

 二本足で立ち、二本の腕をもち、怪獣のごときけたたましい咆哮(ほうこう)を発したその姿はまさに……。


「ゴッジィィィラ……」


 日本人の魂がはるかなる時空を超え、日本の誇る伝説的大怪獣のその名を、決して知るはずのない半々蔵(はんはんぞう)になぜか流暢(りゅうちょう)な英語調で独語(どくご)せしめたのであった!


「なんて?」

「わからぬ……これは、幻術か……? 意味のわからぬ単語が、拙者の脳裏によぎったのでござる。これほどの怪物がこの世に存在しうるとは、にわかには信じがたい……」


 頭部は完全にサメのままであり、まことに奇妙な現象だが、エッチ後屋(ごや)はその姿のまま人間としての声を発した。


「シャーシャッシャッ! 小せェ、小せェなァ。踏みつぶしておしまいになっちまいそうだぜ。しかしおめェらは、ちゃァんとサメ神さまの腹におさまってもらわにゃァ、困る。そして嬢ちゃん、よくも、よくもおれの信念を踏みにじってくれたなァァァ!! おれのエッチ信念を利用して窮地(きゅうち)をのがれるたァ、ほめてやりたい以上に不愉快だぜェ……。もうおめェらがどんなエッチ窮地(きゅうち)におちいろうが、助けてはやるめェ。喰らいつくしてやるよォォ!!」


 そう吠えたが、一閃(いっせん)半々蔵(はんはんぞう)さえも反応できないほどの速度で、ゴクリとおヒメが丸のみにされてしまったのである……。


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