第21話 決起したおヒメの突起
自分にできることは、なにかないか。
夢でも見ているかと自身の正気を疑いつつも、エッチ後屋たちがばけもののごとき大きさのサメへと変じたのを目撃したおヒメは、呆けつづけているわけにもいかずおのれを叱咤した。
半々蔵は、海のなかへとひきずりこまれてしまった。
いかな半々蔵といえども、海で自在に動くことはむずかしいだろう……。
かといって、まわりを見渡したところでここはなんの変哲もない海岸である。
あるのは流木ぐらいで、こんなものであのサメの動きを一秒でもとめられようとは思えない。
いや、よくよく野盗どもの死体へと目を転じれば、刀があった。
しかし、しろうとの自分が刃こぼれのある刀をふるったところで、いかほどの働きができるであろうか……。
自分自身を見ても、白くて簡素な装束へとおババさまに着替えさせられたため、それ以外にはなにも身につけていない。
それすらサメのあげた水しぶきで濡れねずみの状態である。
もはやほかにはだれもいないのに、なんとなく胸もとをかき寄せていたおヒメは、とある武器に気がついた。
「もしかして、これなら……」
気づくと、走って海に飛び込んでいた。
偶然にも、すぐ近くの海底からのびた岩に、半々蔵がめりこんでいる。
(半々蔵さまッ!!)
海でしゃべれぬ代わりに、心でさけんだ。
泳ぎは、得意である。
むかしから、イヤなことがあったときは泳いで鬱屈をまぎらしてきた。
自分の涙と、艱難辛苦を、海だけは知ってくれている……。
海の過酷さを知るとともに、海の慈愛を、おヒメは信じていた。
(死ぬなら、あなたさまとともに……)
念じて、半々蔵のまえに、大の字となって立ちはだかった。
少し先から、あの巨大なサメが一散にこちらへと驀進しているのが、見える。
あんな村で死ぬなら、ここで海に包まれ、彼とともに死にたいと思った。
そう覚悟を決めても、人よりも大きく、肉を切り裂くためにあることがありありと伝わる鋭利な歯をひらめかせて、すさまじい速度で海をかきわけて迫りくるサメは、臓腑が震えるほどにおそろしい。
死ぬなら、痛みを感じるまもなく、死にたい。
いつもみたいに痛いのは、イヤだなぁ……。
そう思いながらも、もっともっとと腕を広げる。
そうして、思いっきり胸をはる。
そうすると、もともとはだけていた着物はズリズリと下がり、胸もとがあらわになっていく……。
それはひとつの賭けであった。
負ければ死ぬる、命を張った大博奕――
その賭けの代価は、おヒメの胸の突起――そう、現代の一般向け作品であれば黒塗りや謎の光でかくされるであろう、乳首であった。
着物がはだけ、その乳首がまさに「こんにちは」とあらわれ出ようとした、そのとき――
ビターン!
おヒメの胸に、高速ではじき飛ばされた海藻が貼りつけられたのである!




