第19話 最大最強のサメ、あらわる
「親分……ほんとにいいんで?」
そう、どこかつやを秘めた口調で、ささやくように問いかけたのはうっかり百八兵衛であった。
「ああ……サメ神さま〈ひっぷ〉ほどの存在を急いで招来するにはこれしかねェ。おめェこそ……本当にいいのかい?」
「あっしは、どこまでも親分についていきまさぁ」
エッチ後屋は片手をうっかり百八兵衛の腰にまわし、もう片方の手は、彼の手をつかんで指と指を濃密にからみ合わせている。
興奮によって息を切らしたふたりのおじさんのひとみは、燃えあがる熱でぬれていた。
至近距離で抱き合ったまま、互いに深くうなずき合う。
「いまだから言うが……おめェの抱き心地、最高だったぜ」
「親分……」
じゅん、とぬれたような、とろけたような表情で、うっかり百八兵衛が目のまえのたけだけしい益荒男をうっとりと見つめる。
そうして、ふたりのからだがじんわりと発光しはじめた。
「あの光、まさか――いかん!」
なにが起きているのかと呆けたように見ていた半々蔵であったが、ふと異変に気がつくと高く跳ねあがり、丸腰のふたりに斬りかかった。
「オン・ズロースマチコタンラゲンソワカ……」
あのぶきみな呪文が、高速でエッチ後屋の口からつむがれてゆく――
「アイエエエエイッ!」
かたや、絶叫とともに渾身のちからを込め、半々蔵はひとつに融合してゆく光に刀を振りおろした。
が、その刀は刻一刻と輝きを増してゆく光にブニョンと受けとめられ――
「忍法、口寄せの術」
その言葉が、砂浜にぽつりと落ちた。
すると、そこから爆発でも起きたような轟音と旋風とが生じた。
そうして、その風に吹き飛ばされた半々蔵を追うように、ひとつのまがまがしい影が迫る――
「シャァァァァァク!」
そう、エッチ後屋とうっかり百八兵衛とが溶けあい、まざりあい、小島と見まがうほどに巨大なサメとなってこの世に顕現したのだ!




