第一話:覚醒の時
吉本アルファは、神鳴学園に通うごく普通の生徒、しかしその血筋は並外れていた。吉本家は代々、世界級の魔法を操る神の国の盟主を輩出してきた家系だ。祖母・四葉は「幻想」、母・結衣は「概念定義」の魔法の使い手。そしてアルファもまた、「空間を司る魔法」の才能を受け継いでいた。
しかし、彼女はその巨大な力をうまく制御できず、周囲からは「落ちこぼれ」と陰口を叩かれていた。学園生活は、彼女にとって居心地の悪いもので、吉本家の名にふさわしい自分になれない焦燥感と、周囲の視線に晒される孤独に苛まれていた。
そんなアルファの唯一の心の拠り所は、幼馴染のミカだった。ミカは、アルファがどれだけ不器用でも、どんなに周りから白い目で見られても、常に変わらない笑顔で隣にいてくれた。彼女は、アルファの能力の有無に関わらず、ただ「アルファちゃん」として接してくれる、唯一無二の存在だった。
ある日の午後、学園は突如として、未曾有の危機に直面した。空に巨大な亀裂が走り、その奥から、巨大な浮遊大陸が姿を現したのだ。それは、学園の真上へとゆっくりと、しかし確実に落下し始めた。生徒たちはパニックに陥り、教師たちは必死に避難誘導を試みるが、その巨大な質量を前に、為す術がなかった。
「みんな、逃げて!」
アルファは、その場で立ち尽くすミカと、恐怖で動けなくなっている生徒たちを見た。このままでは、学園も、そこにいる全員も、浮遊大陸の下敷きになってしまう。その瞬間、アルファの奥底に眠っていた力が、爆発するように覚醒した。
「止まれっ……!」
アルファが叫ぶと、彼女の体から、目に見えない強大な力が放出された。その力は、浮遊大陸を包み込み、ゆっくりと、しかし確かにその落下を食い止めた。血管が切れ、全身に激痛が走る。これは、彼女の「空間を司る魔法」の代償だった。だが、彼女は痛みに耐え、歯を食いしばって大陸を押し返した。大陸は、学園から離れ、やがて夜空の彼方へと消えていった。
アルファは、その場に倒れ込んだ。彼女の身体は血に濡れ、意識は朦朧としていたが、学園を救ったという事実に、微かな達成感が胸を満たした。この日、吉本アルファは「落ちこぼれ」のレッテルを剥がし、「英雄」として、学園中の注目を集めることとなる。




