第一話:神の国の盟主
遥か昔、神々の住まう世界は、その存在の飽和という未曾有の危機に瀕していた。増えすぎた神々の力は、世界の均衡を崩し、やがて来る破滅の予兆として、空間の歪みや時間の乱れが頻発していた。この危機を救うべく立ち上がったのが、吉本家の初代神の国の盟主、いのりであった。
いのりは、この世の全ての運命を操るという、途方もない「運命を司る魔法」の使い手であった。彼女の魔法は、過去、現在、未来、あらゆる可能性の糸を紡ぎ、世界のあり方を根底から変える力を持っていた。しかし、その力には、途方もない代償が伴う。一度使用すれば、永久に魔法を使えなくなるという、神としての存在意義を失うほどの代償であった。
いのりには、三人の娘がいた。長女のみゆき、次女のベルーシャ、そして三女の四葉である。特に三女の四葉は、母であるいのりと同じく、世界級魔法の才能を受け継いでいた。四葉の魔法は「幻想を司る魔法」と呼ばれ、法則すらも操り、無から有を生み出すという、創造の力を秘めていた。
いのりは、迫りくる世界の終焉を前に、苦渋の決断を下す。それは、神の世界の一部を切り離し、新たな世界を創造するという、まさに運命を弄ぶ行為であった。彼女は、自らの命と引き換えに、神の世界から「日本」という新たな空間を切り離し、そこに神々の一部と人間たちを移住させた。この壮大な魔法により、神の世界は一時的に飽和の危機を免れた。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。いのりは、神としての力を完全に失い、その存在は、世界の記憶から徐々に希薄になっていった。そして、彼女の娘である四葉は、母が世界を救ったという最も大切な記憶を、自らの魔法の代償として封印されてしまった。四葉は、母いのりがなぜ自分たちの前から姿を消したのか、その理由を知ることはなかった。
いのりの行いは、吉本家の歴史に、世界級魔法の代償という、拭い去れない影を落とすこととなる。それは、未来の世代へと受け継がれる、避けられない宿命の始まりでもあった。




