はちゃめちゃ一家の日常 (17)
結衣は、自身の「幻想武装」を強く握りしめた。目の前では、五柱の「顔のない神々」が、四葉を圧倒しようと、それぞれ異なる「概念」の波を放っている。四葉の赤いオーラが、その波に飲み込まれ、徐々に薄れていくのが見て取れた。
(パパの言った通りだ……「概念の再構築」……!)
結衣は、自身の能力の真髄を理解しようと、深く集中した。彼女の「幻想武装」は、対象を「分解」するだけでなく、その「定義」を書き換え、新たな「概念」として「再構築」する力も持っている。
「忘れ去られた概念の神々」は、人々に忘れ去られ、存在意義を失った。だからこそ、彼らは既存の神々を「再定義」し、自らの存在を証明しようとしている。ならば、彼らを完全に消滅させるのではなく、彼らが再び人々に受け入れられるような「定義」を与えればいい。
結衣は、まず最も近くにいた、皇居の庭園を「無機物」へと変えようとしていた「顔のない神」に狙いを定めた。
(この神は、かつて『自然』や『豊穣』を司っていたのかもしれない。でも、今は忘れ去られて、その概念が歪んでしまった……)
結衣の脳裏に、その神がかつて持っていたであろう、穏やかな「自然」のイメージが浮かび上がった。そして、そのイメージを、現代の「自然」の概念と融合させる。
「幻想武装、概念再構築!!」
結衣は叫び、引き金を引いた。
ドゴォォォン!!
放たれた光の塊は、まるで生命を吹き込むかのように、「顔のない神」へと吸い込まれていく。光が当たった瞬間、神の体が激しく輝き、その曖昧だった輪郭が、ゆっくりと、しかし確かな形を取り始めた。そして、周囲の石と化していた木々が、再び緑を取り戻し、花を咲かせ始めたのだ。
光が収束すると、そこには、かつての「顔のない神」とは全く異なる、穏やかな表情をした、若々しい姿の「自然の神」が立っていた。その神は、周囲の木々や花々に優しく触れ、まるで長い眠りから覚めたかのように、ゆっくりと目を開いた。
「わ、わしは……再び……」
「自然の神」が、戸惑いながらも、その存在を確かに感じているようだった。
「やった! 成功したよ、ママ!」
結衣は、歓喜の声を上げた。四葉も、その光景に目を見張り、驚きを隠せない様子だった。
しかし、戦いはまだ終わっていない。残りの四柱の「顔のない神々」は、依然として皇居を破壊し続けている。
「結衣よ! 続けるのだ! 奴らの『定義』を、全て『再構築』するのだ!」
四葉の言葉に、結衣は頷いた。彼女は、次々と「顔のない神々」に狙いを定め、それぞれの神がかつて司っていたであろう「概念」を想像し、現代社会に適合する形で「再構築」していった。
「『歴史』を『忘却』へと再定義していた神には、『記録』の概念を再構築!」
「『生命』を『無機物』へと再定義していた神には、『進化』の概念を再構築!」
結衣の放つ光線が、次々と「顔のない神々」を打ち抜き、彼らは本来の姿を取り戻していく。皇居の建物や庭園も、少しずつ元の姿を取り戻し、混乱していた神装部隊の隊員たちも、その光景に希望の光を見出し始めた。
そして、ついに最後の「顔のない神」に、結衣の光線が吸い込まれていった。その神は、皇居の最も神聖な場所を「無意味」へと変えようとしていた。
(この神は、きっと『信仰』そのものを司っていたんだ……。だから、忘れ去られたことで、最も深く傷ついた……)
結衣は、その神に、『絆』の概念を再構築した。神と人、そして神々同士の「絆」。それが、この世界を再び繋ぎ止める力になると信じて。
光が収束すると、そこには、穏やかな光を放つ、『絆の神』が立っていた。その神は、結衣に深々と頭を下げた。
「感謝いたします、吉本結衣。貴女のおかげで、我々は再び、この世界に存在意義を見出すことができました」
「絆の神」の言葉に、結衣は涙が溢れそうになった。彼女は、この戦いの真の意味を理解した。これは、ただの破壊ではなく、「再生」の戦いだったのだ。
皇居の混乱は収まり、空には穏やかな光が差し込んでいた。神装部隊の隊員たちは、歓声を上げ、互いに抱き合って喜びを分かち合っている。
四葉が結衣の元へ歩み寄り、その頭を優しく撫でた。
「よくやった、結衣。お前は、ワラワの想像を遥かに超える力を示した。そして、この世界を救ったのだ」
四葉の言葉に、結衣は照れくさそうに笑った。
その時、通信機から拓郎の興奮した声が響いた。
「四葉様! 結衣! 素晴らしいです! 『忘れ去られた概念の神々』が、新たな『定義』を得て、人々に受け入れられ始めています! これで、神・日本国は、より強固なものとなるでしょう!」
拓郎の言葉に、結衣は安堵のため息をついた。
吉本家の「非凡な」日常は、これからも続いていくだろう。しかし、結衣は、この戦いを通して、自身の能力と、神と人の間に新たな道を切り開くことができるという確信を得た。彼女の物語は、まだ始まったばかりだ。




