19話:神の死と、軋むベッド、そして新たな生命
タコの神の消滅は、瞬く間に神・日本国中に衝撃を与えた。駆けつけた神装部隊によって現場は制圧され、事件は明るみに出た。これは、「神の死」。それも、神の国の盟主の命令を受けた人間によって為されたという事実は、アニメに心酔し、秩序を顧みなかった神々や、彼らを崇めていたカミオタたちを、震え上がらせるのに十分だった。
この事件を境に、無秩序な「撮影会」は急速にその数を減らしていった。やがて、それは都市伝説のように語り継がれ、いつしか「伝説の行事」として祀られることとなるのだが、その何倍も、拓郎にとって恐怖だったのは、多数の証言者によって公にされた四葉の年齢、そしてそれに伴う彼の新たな受難だった。
あれ以来、拓郎のベッドは、毎朝、激しく軋むようになった。
「はぁ……はぁ……」
朝の光が差し込む部屋で、汗だくになった四葉が、どこか満足げな表情で何かを呟き、バスルームへと向かっていく。残されたのは、完全に精気を吸い尽くされ、干からびたような20歳の拓郎だった。彼の体は、もはや骨と皮だけになったかのように痩せ細っている。
「も、もう無理……で、出ない……き、きつい……か、母さん……た、助けてくれ……」
拓郎の口から、蚊の鳴くような声が漏れる。もはや抵抗する気力もなく、彼はベッドの上で白目を剥いていた。
その時、半開きになったドアの隙間から、自称38歳、しかし外見年齢は28歳と見まがうほどの若さを保った、拓郎の母・みつばがニヤニヤと顔を覗かせた。
「たくちゃんも、もう立派な男の子だね♡」
母の言葉に、拓郎は最後の力を振り絞って懇願した。
「ば、馬鹿言ってないで、と、止めてくれ、あいつを……。も、もう、限界だ……」
みつばは、拓郎の悲痛な叫びをどこ吹く風と、さらに満面の笑みを浮かべた。
「そういえば、たくちゃん? 四葉ちゃん、できたそうよ?」
その言葉に、拓郎の僅かに残っていた理性が、警報を鳴らした。
「な、なにが?」
みつばは、口元に手を当てて、楽しそうに囁いた。
「こ・ど・も」
拓郎の思考が、完全に停止した。
彼の目には、真っ白い天井が、ただ虚しく映っていた。
夫婦の営み
新しい命




