第4話:港の倉庫と無反応な九尾
薄暗く、潮風が吹き込む港の倉庫に、四葉とたくみは監禁されていた。手足を縛られ、口も塞がれている。冷たいコンクリートの床に座り込み、四葉は今の自分の無力さを痛感していた。大人の体であれば、こんな拘束なんて容易に解ける。だけど、今の彼女は、ただの小学生の体だ。
たくみは恐怖に震え、涙ぐんでいた。そんな彼を見て、四葉は決意した。この状況を打破するには、あの力しかない。
四葉は意識を集中し、心の奥底に語りかける。 (九尾!おい、九尾!助けろ!早く出てきて、こいつらを追い払うんだ!)
しかし、何の反応もない。体の中に宿るはずの九尾の気配は、まるで眠っているかのように微動だにしなかった。
(なんでだ!?出てこいってば!)
焦りともどかしさが募る。四葉は、必死に呼びかけ続けた。 (危機的状況だろ!?助けろよ、役立たず!)
だけど、九尾は相変わらず沈黙を貫いている。きっと、四葉が「絶命しかけた時」でなければ姿を現さないんだろう。あの時の激しい拷問を思い出すと、ゾッとする。今の状況は、九尾にとって「危機的状況」とは認識されていないんだ。
(このーーー!役立たず!)
心の中で、四葉は九尾に向かって怒鳴りつけた。だけど、九尾はやはり、何一つ反応しない。子供の姿のままでは、どうすることもできない。四葉は、悔しさと無力感に唇を噛み締めた。




