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☀️神バズ!~神様とJKと重すぎる愛~☀️  作者: 希望の王
吉本シロネと吉本クロネの物語:『吉本家の新星 :魔法の珍事と学園の影』
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第八話:それぞれの激突、それぞれの真実

【場面:アステラス製薬・地下研究施設・製造ライン – 夜】


クロネが全身の闇魔力を放出し、製造ライン全体を包み込んだ。その闇は、フェミタルの培養槽から漏れ出る緑色の魔力を瞬時に吸収し、無力化していく。


「ぐっ……があああああっ!!」


クロネの口から、苦悶の叫びが漏れる。深夜の闇魔法が、制御不能なほどの勢いで彼女の身体を蝕み、激しい痛みが全身を駆け巡っていた。彼女の鼻から血が流れ、意識が朦朧としていく。


「クロネ! やめなさい! そのままじゃ、あなたの体が持たない!」


シロネが叫び、必死にクロネの元へと駆け寄る。彼女も満身創痍で、警備員たちの攻撃をかわすのが精一杯だった。


その時、施設内のモニターから、龍幻の怒鳴り声が響き渡った。


「馬鹿な! あの小娘が、そこまでの力を……! くっ、だが、これで終わりではない!」


龍幻の言葉と共に、製造ラインの奥にある隔壁が開き、新たな強化警備員たちが次々と現れる。彼らの身体からは、これまで以上の、より強力な魔力が放出されていた。


「これではキリがない……!」


シロネが歯を食いしばる。クロネは、ほとんど意識を失いかけていた。


(このままじゃ……私も……ユキも……)


クロネの意識が闇に飲まれそうになったその時、遠くから微かに聞こえる声があった。


(クロネ! 負けるな! お前は、一人じゃないぞ!)


それは、深夜の声だった。そして、アルファや拓郎、宗介、ベルーシャの声も。


(……みんな……!)


クロネは、最後の力を振り絞る。彼女の闇魔法は、ただ魔力を無力化するだけではなかった。それは、魔力の根源である「概念」そのものに干渉する力――吉本家の魔法の血筋が持つ、真の力だった。


クロネは、製造ラインの「フェミタルを生成する」という概念に、闇魔法を叩き込む。


「止まれ……止まれ、止まれぇええええええええっ!!!」


彼女の魂からの叫びと共に、闇魔法が製造ラインの核に直撃した。


キンッ――という高音が響き渡り、製造ライン全体が停止する。培養槽の緑色の液体は、瞬く間に濁り、泡立つのをやめた。稼働していた巨大な装置は、異音を立てて沈黙した。


「やった……止まった……!」


シロネが歓喜の声を上げる。しかし、その声は、力尽きて倒れ込むクロネには届かなかった。


【場面:アステラス製薬本社・社長室 – 夜】


社長室では、龍幻と京子が激しく口論していた。


「あなた! 私たちのステラは、そんな世界を望んでいないわ!」


京子が、龍幻の頬を叩いた。龍幻は、痛みに顔を歪ませるが、京子の言葉は届いていないようだった。


「うるさい! お前にはわからない! 魔法を持たない者の絶望が! 私は、ステラを……あの子を救うためなら、何だってする!」


その時、室内に設置されたモニターが、大きな音を立てて一斉に消滅した。地下研究施設からの映像が途絶えたのだ。


「馬鹿な! 製造ラインが……止まっただと!? あの小娘が、まさか……!」


龍幻は、動揺を隠せない。彼の狂気が、一瞬にして揺らいだ。


「……龍幻」


みゆきの声が、社長室に響いた。みゆきとベルーシャが、静かにドアを開けて立っていた。


「みゆき……吉本みゆき! 何故お前がここに……!」


龍幻は、驚きと警戒の表情を浮かべる。京子は、みゆきの姿を見て、希望の光を見出したようだった。


「ご心配なさらないで、京子さん。私は、あなたの味方です」


みゆきは、京子に微笑みかけると、龍幻に向き直る。


「龍幻さん。あなたの、娘さんへの愛は理解できます。私も、かつては、愛する者を守るため、世界を自分の理想に染めようとしたことがありましたから」


みゆきの言葉に、龍幻は目を見開く。


「な、なんだと……?」


「しかし、それは、本当の愛ではありません。それは、愛する者を、そして自分自身をも、苦しめる歪んだ理想です。あなたは、娘さんの笑顔を、本当に見ていますか?」


みゆきの言葉は、龍幻の心の奥底に深く突き刺さった。彼の脳裏には、フェミタルに苦しむ人々の姿と、そして、これまで自分が見ていた「悲痛なステラ」の姿が交錯する。


「お前が、何を知っている……!」


龍幻は、机を叩き、怒鳴る。しかし、彼の言葉には、以前のような確信はなかった。


「ステラさんは、あなたが思っているほど、不幸ではありませんでした」


ベルーシャが、静かに付け加える。


「我々は、彼女を吉本家で保護しています。彼女は、そこで精気を取り戻し、そして、初めての友達ができたと、心から喜んでいました」


ベルーシャの言葉に、龍幻は息をのむ。「初めての友達」という言葉が、彼の心を強く揺さぶる。彼は、これまで娘は孤独で、自分しか理解者がいないと思い込んでいたのだ。


その時、龍幻の身体から、不自然な魔力の波動が放たれる。彼の「歪んだ理想」が、彼自身を蝕み、狂気へと引き戻そうとしていた。


「嘘だ……! 私のステラは、そんなはずがない……! お前たちは、私の邪魔をする気か!」


龍幻は、怒りの表情でみゆきたちに魔力を放とうとする。


【場面:吉本家・地下研究室 – 夜】


拓郎は、地下研究施設から送られてくるクロネの生体データを必死に解析していた。


「クロネの魔力出力が、異常な数値を叩き出しています! あんな無茶な制御、よく耐えられたな……」


拓郎の額には、冷や汗が流れる。宗介とアルファ、深夜も、その報告に息をのむ。


「だが、製造ラインは完全に停止した。クロネがやってくれたんだ……!」


宗介が、安堵と誇らしげな表情で呟く。


「このままでは、クロネの意識が戻らないかもしれない……! 大急ぎで、本社へ急行するぞ!」


アルファが指示を出す。吉本家の精鋭たちが、クロネを救うため、そして事態を完全に収拾するため、アステラス製薬本社へと向かう。

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