第9話「文学少女、校則の解釈に詩を持ち出す」
今回は“校則”という固いものに、詩音先輩がやさしく切り込む回。
文学的解釈で法律を揺るがすとは……詩の力、恐るべし!?
ある日、ゆいがため息をつきながら言った。
「はあ……前髪のピン、色つきだと注意されちゃった……」
「え、ほんと? そんな厳しかったっけ校則……」
「“華美な装飾は禁止”ってやつに引っかかったらしいよ」
そこへ、いつものように静かに現れた詩音先輩。
「校則に心を囚われてはいけません」
「うわ、出たよ名言っぽいやつー!!」
「でも先輩、これ以上ややこしくしないで……!」
詩音先輩はポケットから一枚の紙を取り出す。
『校則とは――
未来の不安を
いまに縫いとめるための、布
けれど布は、時に人を縛る
だからこそ、心で読み解くべきだと思います。』
「うわ、もう全文詩じゃん!? てか“布”ってなに!?」
「裁縫用語で攻めてきたよ……!!」
しかしこれに妙に感銘を受けたのが、生活指導の横山先生だった。
「うむ……たしかに、“華美”の定義は主観的だな……」
「もしかすると、今の時代にはアップデートが必要かもしれん……」
「ちょっ、マジで影響与えてる!? 詩で!? 校則に!?」
勢いに乗った詩音先輩は、ついに“校則の再解釈案”を作成。
第一条:服装は清潔であること。
(詩音注:心もまた、清らかであるべし)
第二条:携帯電話の校内使用を禁ずる。
(詩音注:沈黙もまた、学びの一部)
「いや、勝手に“注”つけてんじゃないよ!!!」
「なんか校則が詩集になってきてるんだけど!!!」
これが“新しい風”として生徒会で議題に上がりかけたところで――
生徒会長がバッサリ言い放つ。
「これは……“詩的すぎて校則として機能しない”ので却下です」
「そりゃそうだーーーー!!!」
肩をすくめる詩音先輩。
「残念。でも、言葉が誰かを少しでも考えさせたのなら、それで十分です」
「かっこつけたーーー!! でもちょっと納得しちゃうーー!!」
こうして、“詩による校則のゆるやかな改革運動”は静かに幕を閉じた――
が、生徒たちの間ではこんな会話がちらほら。
「詩音先輩の“注釈”、なんか好きだったな」
「“心で読み解く校則”って響きは、ちょっと残るよね……」
言葉は変えられなかったけど、考え方は少しだけ変わったのかもしれない。
今日の一句:
「縛るもの 読み方ひとつで ゆるむかも」
次回、第10話「文学少女、文化祭のテーマを“詩”で塗り替えてる」
ついに来た学園最大イベント! 詩音先輩の本気が文化祭を襲う!?




