第6話「文学少女、図書室の本を全部“朗読アレンジ”する」
“静寂の空間”図書室にも、詩音先輩のやらかしは届く。
QRコード朗読というハイテク手法で文学布教!
さすがに怒られたけど、心にはちゃんと何かが残った……のかも。
放課後。テスト勉強のため、こよりたちは久しぶりに図書室へ。
「たまには静かな場所で集中しようよ」
「うん、ここだけは平和だし……って」
ゆいが言いかけたその瞬間、館内に響きわたる声。
「ページの音が、季節をめくる。
一枚一枚、わたしの心も、追いついていくのです……」
「……ん?」
「え? なんか聞こえたよね??」
「静寂じゃなくて詩が流れてるんだけど!?」
こよりたちは奥の書架へ向かう。
するとそこには――マイクスタンドを前に朗読中の詩音先輩の姿。
ベレー帽は本棚色。BGMはクラシック(持ち込みスピーカー)。
「……えっと、何やってるんですか?」とまなが声をかけると、
詩音先輩はマイク越しにふわりと答えた。
「本に、声を吹き込んでいるんです」
「静かな本たちも、読まれたがっているはず。だから“朗読アレンジ”を」
「なんだそのアーティストっぽい発想!?」
「ていうか、“アレンジ”って何勝手にリミックスしてんの!?」
実際に置かれた本を見てみると、
ブックカバーの裏に小さなQRコードが貼られている。
読み取ってみると――
「……詩音先輩の朗読ボイスが始まった……!?」
「“吾輩は猫である”。そう名乗ったとき、
すでに彼は“名もなき日常の観察者”だったのです――」
「勝手に“情緒”増し増しで語られてるぅぅぅ!!」
「なんか、明治の文豪が詩音先輩にプロデュースされてる感じ!!」
図書室の司書の先生も、最初は困惑していたが――
「でも、確かに静かすぎて読まれない本に、
“声が届いた”って感じはするのよね……」
「先生までちょっと感動してるー!?」
その日の放課後、図書室にはふだん見かけない生徒たちが集まっていた。
「“声つき”なら、ちょっと読んでみようかなって」
「正直、眠くなったけど、詩音先輩の声だけは最後まで聞けた……」
「……すごい。文学、広まってる……」
ただし翌週、校内放送で生活指導の先生からアナウンスが。
「図書資料への無断QRコード添付は原則禁止です」
「そりゃそうだーーーー!!!」
「でも惜しい! ちょっとだけ、惜しかった!!」
詩音先輩は静かにコードを剥がしながら言った。
「でも、きっと誰かの中に、“声の本棚”は残りました」
「……やっぱりこの人、いちいちカッコつけるの上手いんだよな……!」
今日の一句:
「声の書棚 響くポエムに 静けさ割る」
次回、第7話「文学少女、謎の“詩道”部を立ち上げてる」
まさかの“武道×ポエム”爆誕!? 新団体、始動します!




