第46話「文学少女、卒業アルバムに“誰にも気づかれない一行詩”を仕込んでいた」
今回は“卒業アルバム詩”。
誰にも気づかれなくていい――そんな前提で仕込まれた詩だからこそ、心に染みます。
見返すたびに出会い直せる、最高の伏線でした。
その日、図書委員の手伝いで“卒業アルバムの見本”が図書室に届いた。
こよりたちは何気なくページをめくりながら、
「先輩たちってこんな顔だったんだねー」と笑っていた――そのとき。
「……ん? このページ、なんか……印刷が薄くない?」
ゆいが指差したのは、
卒業生の集合写真ページの、背景のすみっこ。
よく目を凝らすと、写真の空に溶けるように、
かすかに文字が刷り込まれていた。
『空に向かって笑ってるこの写真
未来って、たぶんこの一瞬の続きだと思う』
「……っ!! 詩音先輩だ……」
「うそでしょ!? アルバムって学校全体でチェックされるんじゃないの!?」
驚きつつも、次のページを確認すると、
別の背景にも、うっすらとした詩が隠れていた。
『別れがあるってことは
ちゃんと“いた”って証拠』
『背中が写っていても
きっと誰かの記憶には、正面で笑ってる』
全部で10カ所。
それらはどれも、**本当に目を凝らさなければ気づけないほどの“やさしい存在”**だった。
しかも、印刷業者に確認したところ、
「データ入稿時に“背景のデザイン調整”としてさりげなく追加されていた」とのこと。
「もはや文学的犯行……」
「そこまでして、“残す詩”だったんだね……」
まなはそっとつぶやく。
「“卒業写真って、未来の途中”ってさ……泣かせに来てるじゃん……」
職員室で聞いてみると、実はこの詩の仕込みは一部の先生だけが知っていたという。
「しおんちゃん、“気づかなくていいんです。でも、誰かが未来で見つけたら、それが嬉しい”って言ってたよ」
それはまるで、
未来の誰かに手紙を埋めていくような文学。
こよりたちは、卒業アルバムの空を見つめながら、そっとつぶやいた。
「きっとまた、私たちもやらかす側になるんだろうな。ね?」
今日の一句:
「未来にも そっと忍ばす 詩の影」
次回、第47話「文学少女、放送室の機材に“読み上げ用の隠し原稿”を置いていた」
誰が読んでも詩になるメッセージ!? 学校全体に響いた“声に出す詩”とは!




