第44話「文学少女、購買のレジ横に“励ましの詩クジ”を置いていた」
今回は“詩クジ”です!
購買のレジ横に詩を仕込むという、もはや“日常文学インフラ”に手を出した詩音先輩。
心に効く、やさしいおみくじでした。
「チョコパン、あと残り2個だよー!」
「ええっ!? ダッシュ! ダッシュ!!」
そんな昼休みの定番、購買の大行列の中で――
こよりは、ふとレジ横に置かれた小さな箱に気づいた。
《ひとこと詩クジ:ご自由にどうぞ》
「……詩クジ?」
箱の中には、折りたたまれた色とりどりのメモ紙がぎっしり。
まなとゆいと顔を見合わせつつ、それぞれ一枚引いてみると……
【こよりのクジ】
『今日もここまで来たあなたに拍手
パンを選ぶその手に、やさしい明日が乗っています』
【まなのクジ】
『迷って選んだメロンパンでも
きっと正解は“食べて笑顔になったこと”』
【ゆいのクジ】
『甘いものがほしい日は
きっと心がちょっとさみしい日
だから、遠慮せずに食べよう』
「え、なにこれ……パンと相性良すぎん……」
「詩が染みる……腹にも心にも……」
「まってこれ、どう考えても詩音先輩のしわざでしょ!!」
聞けば、卒業前に詩音先輩が購買のおばちゃんに手渡していったらしい。
「『あんまり目立たないところに、こっそり置いてください』って言ってたよ」
「“おまけの言葉があるだけで、パンがちょっとおいしくなる気がする”って、ふふ」
しかもその詩クジ、なんと約300枚すべてが手書き&手折り。
「……全校生徒分+α……」
「手作業で……まじで全力で文化祭レベルのやらかしだよこれ……」
中には「大吉」「中吉」などの文字が紛れており、
さらに「おみくじ風」や「なぞなぞ型詩」まであるという多様性。
『今日のラッキーアイテムは「くだものナイフ」
使わないで済む一日でありますように』
『疲れたら、
“す”のつくものを食べましょう。
スープでも、スイカでも、スイーツでも。』
現在その詩クジは、購買の人気コンテンツとなっており――
こよりたちは思わず、もう一枚ずつ引いてしまった。
『明日じゃなくて、今日をがんばってえらいあなたへ』
昼休み、パンと一緒に詩が売れている。
そんな不思議で、やさしい光景がそこにあった。
今日の一句:
「パンよりも 心にしみた 詩のくじ」
次回、第45話「文学少女、期末テストの裏に“応援詩”を印刷していたことが発覚する」
まさかの答案に文学!? 全生徒がちょっと泣いた“期末の奇跡”が明らかに!




