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文学少女、やっぱりまたやらかしてる  作者: たむ


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42/50

第42話「文学少女、非常階段に“落ち込んだとき専用の詩”を貼っていた」

今回は“非常階段の詩”。

にぎやかな日常の裏側には、誰にも気づかれない優しさがあるものです。

詩音先輩の、静かなやさしさが染みる回でした。

放課後、夕暮れどき。

こよりは、なんとなく校舎の非常階段に向かっていた。


教室も図書室も少し騒がしくて、

静かに一人になれる場所を探していたら、自然と足が向いていた。


鉄のドアを開けると、そこには夕焼け色の空と、ひんやりした風。

そして――階段の中段、踊り場の壁に貼られた一枚の紙が、こよりの目を引いた。


『落ち込んだときは ここにおいで

なぐさめは用意できないけど

ひとりの時間は 置いておいたよ』


「……詩音先輩……」


紙の端には、あの見慣れた署名――“しおん”の名前。


さらに、貼られた紙の裏にはもう一つ、隠された詩が。


『あなたが下を向いたまま

風が髪をなでていく

それでも 少しだけ顔を上げて

空の端っこだけ見てみよう

そこにも ちゃんと 光があるから』


「……ずるいよ……そんなの……」


こよりは、そっとその場に座った。

泣いてるわけじゃないけど、何も話したくないとき、

ただこの場所と、この詩が、すべてを分かってくれているようだった。


しばらくして、まなとゆいが心配して顔を出す。


「こより、こんなとこにいたのー?」

「……あ、なんか貼ってある」


ふたりも詩を読んで、無言でこよりの隣に座る。


誰も何も言わない。

でも、風が静かに3人の髪を揺らす。


言葉じゃなくて、

詩が、ここにちゃんとあった。


それだけで十分だった。


翌日、こよりは階段の壁に一行だけ書き足した。


『わたしも、この場所を“やさしい場所”にしていきます』


非常階段は今も、

ひっそりと心の避難場所として

学生たちに愛されている――詩とともに。

今日の一句:

「夕ぐれの 階段だけが 詩を知る」


次回、第43話「文学少女、職員室のホワイトボードに“先生への詩”をこっそり残していた」

まさかの教員エリアにも!? “見えない応援詩”に、先生たちは――。

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