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文学少女、やっぱりまたやらかしてる  作者: たむ


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32/50

第32話「文学少女、卒業アルバムの寄せ書きに仕込んだ詩が後輩の心を撃ち抜く」

今回は、寄せ書きを“構成詩”にしてしまう詩音先輩の最終兵器回。

読んでいるうちに、まるで自分の言葉までもが詩になっていく――

そんな感覚が、後輩たちの心を深く揺さぶります。

ある日の放課後、職員室で先生から呼び止められたこよりは、一冊の卒業アルバムを手渡された。


「これ、去年の卒業生の予備分なんだけど、詩音先輩のページ、ちょっと見てみてくれる?」


「え、また何かあったんですか?」


「ああ……うん。なんていうか、“仕込まれてた”みたいで……」


言われるがままにページをめくるこより。

詩音先輩の寄せ書きページは、ぱっと見、ごく普通に見えた。

“ありがとう”とか“お元気で”とか、“詩、好きでした”とか――


でもその文字をじっくり読んでいくと、ふと、気づく。


「……これ、もしや……全部の寄せ書き、詩になってない!?」


なんと、寄せ書きの内容を順番通りに読むと、一つの長い詩になっていたのだ。


『きみの書く言葉が好きでした

それはときどき、わたしの気持ちみたいで

たぶん、わたしには書けないけど

でも、わたしも何かを残せたらいいなって思った』


こよりは思わず背筋がぞくっとする。


「自分のページに寄せられた言葉に、“詩の構成”させるなんて……!!」


実はこの詩、卒業前に詩音先輩が寄せ書きをお願いする際に、暗黙の構成指示をしていたことも判明。


・最初に「あなたの詩が好きでした」と書いてください

・その後に「わたしは〜」と続けてください

・言葉に迷ったら「残す」「届く」「書けない」のどれかを入れてください――


つまり、他人の寄せ書きの“断片”を繋げて一つの詩にするという、前代未聞の“寄せ書き文学”を実現していたのだ。


まな「なにこの、他人の言葉を使った共同詩プロジェクト!? まるで詩音先輩が編集長じゃん!!」

ゆい「もはや文学版“ブラックボックス作品”。見抜いた人だけが泣けるやつ……!」


最後の行に、詩音先輩の書いた返答だけが、小さく残っていた。


『ありがとう。

この詩は、みんなとわたしの共同制作です。

ずっと大切にします。

きっと、未来でも。』


静かに本を閉じたこよりたちは、黙って目を閉じた。


誰かに言葉をもらい、誰かに言葉を返す。

それもまた、詩音先輩の“やらかし方”だったのだ。

今日の一句:

「書き残す 誰かの言葉も 詩になる日」


次回、第33話「文学少女、購買部のおばちゃんに贈った詩が壁に貼られていた」

地味に購買部にも侵食!? しかもおばちゃんが感動してラミネート加工!?

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