第31話「文学少女、図書室の本にこっそり挟んだ詩が発掘される」
今回は図書室に残された“挟まれた詩”の発見回。
紙のしおりのように眠っていた詩たちは、ようやく誰かの指先に触れ、目覚めていきます。
図書館にまで仕掛けを残すなんて、さすがです詩音先輩。
その日、こよりは図書室で昼休みを過ごしていた。
レポート課題の参考文献を探しながら、ふと手に取ったのは古びた詩集。
「……この本、誰かに読まれたの、ずいぶん前だな」
そう思いながらページをめくると、
ぴらり、と一枚の紙が落ちた。
「ん……しおり……? じゃない、これ――」
そこに書かれていたのは、手書きの詩。
『静かに閉じたページの間に
まだ読まれていない言葉がいる
誰かに届く日を ずっと待っていたみたいに』
「……これ、詩音先輩の字だ」
その詩は、紙の端にこっそり「読まれるまで、しばらく眠ります」と添え書きされていた。
つまり――この詩は、“誰かに見つけられるまでの時間”も詩の一部だったのだ。
「やっぱりこの人、時間ごと詩にしてる……」
後日、図書委員による調査の結果、
図書室のさまざまなジャンルの本から、**計12枚の“挟まれた詩”**が発見された。
『推理小説のラストに挟んだ嘘
それはたぶん、読者に一番優しい真実だった』
『辞書の“こころ”のページに挟んだ詩
意味なんてなかった。ただ、そうしてみたかった』
『レシピ本に混ざった詩
材料:少しの孤独と、大さじ一杯の夢』
まな「……図書館でさえ、もう詩音先輩に占拠されてる……」
ゆい「本にまで詩を棲みつかせるって、もはや言葉の精霊か何かでは……?」
そして、こよりが借りた詩集の巻末――
誰にも読まれないまま、そっと挟まれていた最後の一篇。
『この詩が誰にも届かなくても
それでもわたしは、詩を書き続ける
だってそれは、誰よりわたしが“読みたかった”言葉だから』
誰かのために書いた詩であり、
同時に、誰より自分のために残したもの。
詩音先輩は、言葉を未来に棲ませていったのだ。
図書室――それは彼女の“静かな詩の時間爆弾保管庫”だった。
今日の一句:
「開いたら 眠れる詩が 目を覚ます」
次回、第32話「文学少女、卒業アルバムの寄せ書きに仕込んだ詩が後輩の心を撃ち抜く」
一見ただの寄せ書き、でもよく見ると……それは“最後の一手”。文集の裏に潜む文学の刺客!




