表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
文学少女、やっぱりまたやらかしてる  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/50

第29話「文学少女、文化祭の屋台看板に名もなき詩を残していたことが発覚する」

今回は文化祭という活気ある舞台に、そっと灯された詩の話。

派手な看板の裏で静かに語りかける言葉は、どこか遠い日の優しい記憶のようでした。

秋の風が校庭を渡る頃、文化祭の準備は佳境を迎えていた。

こより、ゆい、まなもそれぞれ屋台の設営に追われる中、ひとつの噂が教室中に広がった。


「ねえ、知ってる? 去年の文化祭の屋台の看板に、詩音先輩の詩が隠されてたらしいよ」

「え、まじで? どんな詩?」

「誰も気づかずに毎年使ってる看板に、小さな文字で詩が書かれてて、それがすごく綺麗なんだって」


興味津々のこよりたちは、当時の屋台看板を探しに文化祭実行委員室へ。


「うわ、これだ……」

古びた木製の看板には、さりげなく小さな文字が彫り込まれていた。


そこに刻まれていたのは――


『笑い声が波のように揺れて

焦げた匂いが時間を染めていく

祭りの夜は、いつも少しだけ

寂しさを隠している』


「うわあ……これ、すごく情景が浮かぶ」

「屋台の熱気も、遠くの夜空も、全部見えるみたい」

「しかも、なんだか知らないけど胸がきゅんとする」


さらに探ると、看板の隅には小さくこう書かれていた。


「名もなき詩人より」


「まさか詩音先輩……名乗らずに詩を残してたのか!」

「この人、もう何でもアリすぎて怖いよ!!」


文化祭当日。

来場者は無意識のうちにその詩に触れ、ふと立ち止まり、そして笑顔を増やしていた。


こよりはそっと言う。


「詩ってね、こうやって誰かの心に静かに灯るものなんだ。

名前がなくても、それはちゃんと伝わるんだなって思った」


ゆいも頷く。


「文化祭の喧騒の中に、静かな文学の火がずっと灯ってる感じ。

詩音先輩の詩は、見えないけど確かにそこにあるんだね」


まなは感慨深げに締めくくる。


「いつか私たちも、誰かにそんな灯りを届けたいな」


そんな風に、詩音先輩の“名もなき詩”はまた一つ、

学校のどこかで誰かの心に寄り添っていた。

今日の一句:

「祭りの灯 言葉の影に 詩宿る」


次回、第30話「文学少女、卒業生からの手紙が後輩に届く」

卒業しても続く縁、文字に込められた想い。後輩たちに渡る最後の詩のバトン――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ