第28話「文学少女、教室の机の裏に詩を彫っていたことが発覚する」
今回は机の裏という、まさかの“詩の隠し場所”が発覚。
ノートよりもリアルで、卒業アルバムよりも近くにある言葉たち――
詩音先輩の残したものは、まだまだ尽きません!
新学期。
1年生たちが使用することになった旧3年3組の教室で、ちょっとした騒ぎが起きた。
「先輩……机の裏に、なんか彫ってあるんですけど……」
「え、落書き? 消しといたほうが――」
「ちがいます。“詩”なんです」
どれどれ、とこよりたちがのぞき込むと――
『春、机の上にはノート
机の裏には、落とした言葉。
どちらも、わたしの手のひら。』
「これ……まさか……」
「絶対、詩音先輩でしょ!!!!」
しかも見つかったのはひとつの机だけではなかった。
順次見回った結果、旧3年3組のほぼすべての机の裏側に、
それぞれ違う詩が彫られていたことが判明。
まな「なにこの机裏ポエムギャラリー!? いつの間にこんなに!?」
ゆい「っていうか彫刻刀で彫ってたの!? それとも爪!? どうやって!?」
その一部を紹介しよう。
『わたしが寝ていたこの机は、
わたしが夢を見ていた場所でもあった』
『机の裏に隠した言葉は、
ノートの上よりずっと、本音だったかもしれない』
『今日つまらなかった人へ。
それでも、ちゃんと時間は通り過ぎたよ』
生徒たちは、下校後もライト片手に机の裏チェック祭りを開催。
「これは……文学という名の彫刻展だな」
「これだけの数……昼休みの積み重ねでやったのか……」
「“文化的器物破損”として後世に語り継がれるやつだこれ!!」
後輩たちはそれぞれ、自分の使う机に彫られていた詩に
“名前のない卒業生からの手紙”のようなものを感じていた。
そしてこよりも、自分の机をそっとのぞき込む。
そこにあったのは、短く、でも深く刺さる一行。
『きみがここにいるなら、それでいい』
「……またこの人、机の裏で名言残してる……」
「なんなの……卒業してまで、こっちの胸をえぐってくるの……」
だけどそれは、どこかあたたかくて。
まるでこの教室が、まだ詩音先輩に見守られているみたいだった。
今日の一句:
「机裏 見えぬ場所にも 詩はある」
次回、第29話「文学少女、文化祭の屋台看板に名もなき詩を残していたことが発覚する」
毎年使われる文化祭の看板に仕込まれた詩!? 祭りの中に、静かな文学の火が灯る!




