第27話「文学少女、未来の自分宛てに詩を郵送していたことが発覚する」
今回は、詩音先輩の“時間差やらかし”回!
未来の自分へ、そして未来にいる“誰か”へ。
言葉は記憶だけでなく、時すらも超えて残っていくのかもしれません。
ある春の午後。
職員室に届いた、一通の古びた封筒。宛名はこうだった。
「未来の私へ 3年後の今日に届けてください」
――差出人:三年三組 西園寺 詩音
「……ついに時間まで飛び越えはじめたよあの人……」
先生たちも呆れ半分、興味半分でその封筒をこよりたちに見せてくれた。
封筒は封がされていて、中には詩音先輩が自分宛てに書いた**“未来詩”**の原稿が数枚入っていた。
『変わっていくことは 忘れていくことじゃない
ただ、いまの“私”が、“わたし”になるだけ。』
『誰かの言葉が、まだ胸に残っていたら
それだけで、生きてることに意味がある』
『未来のわたしへ。
あなたはもう、“夢”を忘れてしまいましたか?
それとも、“夢”という名前を変えましたか?』
読んだこよりたちは、思わず沈黙した。
「……この人……未来の自分にも、ちゃんと詩で声かけてるの……?」
「っていうか、“わたし”と“私”を使い分けてるの、文学的精密機器すぎん!?」
封筒にはもう一通、宛名のない詩も入っていた。
読み上げると――その場にいた誰もが静まり返る。
『わたしを覚えている誰かへ
もし、今日、わたしを思い出してくれたなら
それが、“いまのわたし”です』
誰のために送ったのか。
それはきっと、“自分自身”だけじゃなく――
**この詩を手にした“誰かの未来”**でもあったのだろう。
まなはぽつりと呟く。
「……なんかさ。
詩音先輩って、未来にも“居場所”を作ってるみたいだね」
その言葉に、みんなが頷いた。
手紙の最後には、彼女のサインと、日付の下に小さくこう記されていた。
「追伸:もしこの詩が開かれたなら、
どうか、あなたも“誰かの未来”に詩を残してあげてください」
こよりはそっと目を閉じて思った。
――たぶん、これは未来から届いたのではない。
詩音先輩が“未来に手を伸ばした”だけなのだ。
今日の一句:
「未来へと 綴る言葉に 時が泣く」
次回、第28話「文学少女、教室の机の裏に詩を彫っていたことが発覚する」
ついに物理証拠が出た!? 校舎という名の詩集は、まだまだ奥が深い!




