第18話「文学少女、席替えのくじを短歌で作ってくる」
今回は席替えすら文学化!
詩音先輩による“短歌くじ”という、情緒と風流に満ちた革命が教室を席巻。
抽選よりも運命を感じさせる席替え、新時代の幕開けです。
新学期恒例、みんな大好き(?)――席替えの日!
「ねぇねぇ、窓際来い! 窓際来い!!」
「前の席は絶対ヤダ~~。後ろでのんびり生きてたい」
「……でもイケメンの隣なら前でもいいよね」
そんなテンション高めな空気の中、担任の田村先生が言う。
「えー、今回はくじ引きで席を決めます。くじは……綾瀬が作ってくれました」
「……綾瀬……って、まさか――」
「詩音先輩ーーーーー!!!」
「くじが詩の香りしかしないーーー!!!」
そして配られたのは、見事に手書きの和紙短冊。
しかも番号や座席名の代わりに、すべて短歌が書かれている。
「春霞 揺れる窓辺で 夢を見る
風の音にも 君を感じて」
「黒板に うつる影さえ 切なくて
前の席でも まぶたをとじる」
「やばい! どこがどの席かわからない!!」
「これ、くじっていうか一首ずつの人生なんですけど!?」
「“前の席でも”って、これ前の席確定!?」
案の定、先生も把握していなかったらしく、こよりが質問する。
「せ、詩音先輩……これはどうやって席を決めれば?」
詩音先輩、微笑んで答える。
「その歌の情景に、心が動いたらそこがあなたの席です」
「抽選って概念どこ行ったーーーーー!!!」
結局、“席の情緒”で生徒たちが自発的に移動するという、前代未聞の席替えに。
「窓辺の風が、君を選んだ」
「黒板の前で、あたしが目立つべきなんだと思った」
「後ろの席、やっぱり“過去の余韻”っぽくて落ち着くよね」
「何その理由!?!?」
「“この席が私の詩”ってどういうこと!?」
最後、余った席に誰も行かず、しんとした空気になる。
詩音先輩が静かに言った。
「この席は、“まだ誰の物語にもならない席”。
でも、きっといつか誰かの一行目になる。」
「……なんか、すっごい納得しちゃった自分が悔しい!!」
今日の一句:
「くじ引きも 詠まれて座る 物語」
次回、第19話「文学少女、風紀委員の腕章にポエムを刺繍する」
“規則”の象徴に“詩”を縫い込む!? 学校中に静かなる反抗の美が漂う!




