第17話「文学少女、学食のメニューを勝手に詩に変えてる」
今回は学食が舞台!
メニュー表すら詩で彩る詩音先輩、ついに胃袋にまで文学の手を伸ばしてきました。
カロリー以上に“言葉の余韻”が残るお昼、いかがでしたか?
昼休み――。
今日も学食には長蛇の列。
「お腹すいた~、今日って確かカレーうどんの日だよね」
「わかる~! あの辛さが逆に元気出るんだよね!」
「てか最近、メニュー表の字、なんか変じゃない……?」
そう、そこにはたしかにこう書かれていた。
【本日のおすすめ】
『スパイスの中の孤独 〜汗が心を浄化する午後〜』
「いや! それ! 絶対カレーうどん!!」
「メニュー名のクセ強すぎて意味わかんないよ!!」
よく見ると、すべてのメニューが文学的に“改変”されていた。
通常表記:唐揚げ定食
改変表記:『揚げられた意志 〜焦げた希望にレモンを添えて〜』
通常表記:焼きそばパン
改変表記:『パンの中で、麺が夢を見る。』
「もう全部ポエム!!」
「しかも内容で正体は分かるけど、注文しづらいんだよ!!」
騒然とする学食に、やっぱりいたのは――
詩音先輩。
「食とは、心に栄養を与える行為。
だから、そのメニューも“読まれるべき”だと思いました」
「読まれたら困るから“早く出せる”って価値があるのにぃぃ!!!」
「昼休み短いんだからやめてえええ!!」
一方、意外にも一部の生徒からは好評。
「え、“放課後のさみしさバーガー”頼んだらめっちゃうまかった」
「“満ち足りた孤独ライス”って、チャーハンだったよね。語感すき……」
「あれ!? なんか文学メニューが浸透し始めてない!?」
学食のおばちゃんすら言い出す。
「最近、注文に“想い”がこもってて、作るこっちも気合入るのよね~」
「な、なんか美談化してるぅぅぅ!!!」
そして昼休みの終わり、こよりはつぶやいた。
「……“うどん”って言ってただけだったお昼が、
ちょっとドラマチックになったかもね」
「悔しいけど……文学、腹にしみたかも……」
今日の一句:
「昼メシに 意味と情緒が 追加され」
次回、第18話「文学少女、席替えのくじを短歌で作ってくる」
運任せのはずの席替えが、なぜか和歌調に!? 教室に和の風が吹き荒れる!




