第14話「文学少女、家庭科のレシピをすべて詩で書く」
今回は“家庭科”すら文学の舞台に。
分量も手順も詩で語られるという、料理を通じた“言葉の実験”!
もちろん混乱は起きましたが、意外な感動も生まれました。
「今日の家庭科は調理実習でーす! オムレツ作りますよー!」
そんな元気な先生の声で始まった、平和な5時間目。
ゆいとまなは、気合いを入れてエプロン装備。こよりは卵を丁寧に割っている。
「よし、今日こそ成功させようね! 前回のカレーは完全に固形だったし」
「まな、包丁逆だよ! ねぇ逆ってば!」
「ぎゃー! ちょっともう不安しかない!!」
だが、その騒がしさを一瞬で静寂に変える人物が、またも現れた。
そう――詩音先輩である。
「料理もまた、詩のようなもの。
材料が言葉で、熱が感情。
そして味は――読後感です」
「うわぁぁ、キッチンに詩が来たーー!!!」
「今から卵焼こうとしてんのに、心が先に焼かれそう!!」
そして、配られたレシピカードを見ると――
『オムレツの作り方』
【たまご】――やわらかな朝の色
【ミルク】――優しさを溶かす雫
【塩こしょう】――風がくれた刺激
【バター】――滑らかな別れ際の香り
“混ぜる”というより、“出会わせる”。
火にかけるときは、焦らず。
それは恋と同じ。焦れば、固くなる。
「いやレシピっていうか詩集なんですけど!?」
「“焦らず”の比喩が重すぎてフライパンに向き合えない!!」
当然、生徒たちは混乱。
「え、何グラムって書いてないの?」
「“雫”って何ml換算なの!?」
「『味見は、心で』ってどうしろとーー!!」
先生も手に取った詩音レシピに眉をひそめながら、
「これは……調理技術より感受性が育ちそうね」と微妙な感想を残す。
結果、詩音先輩の班の料理は――
もはや“哲学的スクランブルエッグ”としか形容できない何かが完成していた。
だが、彼女は静かに語る。
「料理に失敗はありません。
すべては、“味覚の行間”です」
「料理にまで行間生んでくるとは……!!」
「卵割ってるだけなのに、心が読書感想文になった気分だよ……!」
それでも、詩音先輩の“詩レシピ”を気に入った子もいて――
一部の生徒は帰りの会でこんな感想を言っていた。
「なんか……料理って、もっと自由でいいんだなって思いました」
「詩音先輩のレシピ、うちでもやってみたいです!」
「……感動しちゃってる!?!?!」
今日の一句:
「分量も 心で測る 詩の味」
次回、第15話「文学少女、体育祭の応援合戦をポエムに変えてる」
走れ! 叫べ! でもリズムは五・七・五!?
応援合戦に響く“詩の檄文”とは!




