第10話「文学少女、文化祭のテーマを“詩”で塗り替えてる」
文化祭のテーマにまで、詩音先輩が干渉!
しかし思いのほか“文学スパイス”が生徒たちに刺さって、まさかのテーマ共存案へ……。
詩の侵食力、止まらず。
文化祭――それは高校生たちの輝ける一大イベント。
校内にはすでにポスターが貼られ、テーマも決まっていた。
「未来へのジャンプ! 〜青春は加速する〜」
「うん、まあ普通にいいテーマだよね」
「うん、“未来”とか“青春”とか定番だけど、ちゃんと盛り上がりそう」
「……いや、でもこの空気、油断してると来るよ。アレが」
そのとき、案の定――詩音先輩がステージに立った。
「文化祭のテーマ。とても素敵です。でも、少しだけ言葉を足してもいいですか?」
「来たーーー!!!」
「言葉、足す気満々だーーー!!」
詩音先輩が黒板に書きつけたのは:
「未来へ飛び跳ねるだけじゃなく、
そこに“誰かと手をつなぐ余白”があるといい」
「テーマ、急にポエムになったーーー!!!」
「ジャンプどこ行った!? 飛びながら考える余裕あんの!?」
それでも、周囲の生徒たちはなぜか静かに耳を傾けていた。
詩音先輩は続ける。
「ジャンプする青春もいい。でも、跳ねたあとに残るのは、誰かの言葉だったり、
ちょっとした心の景色だったり――そういうものだと思うんです」
生徒会長がやや警戒しつつ発言。
「つまり……テーマ案としてはどうしたいんですか?」
詩音先輩、すっと紙を差し出す。
新テーマ案:
『青春とは、言葉が交差する交差点。
飛び越えるのではなく、響き合う旅。』
「……いや、テーマが短歌みたいになってるよ!?」
「ポスターに全部入りきらないってば!!」
だが、これがなぜかウケてしまい――
翌日のアンケートで“詩音案”が2位にランクイン。
「いやちょっと待って!? 1位との差、僅差だったよ!?」
「詩音先輩、文学で投票動かしてるよ!!」
結局、最終決定はこうなった:
正式テーマ:
『未来へのジャンプ! 〜でも時々、ことばで立ち止まる〜』
「混ざったああああ!!!」
「共存してる! ポエムと青春が手を組んだーーー!!」
その日の昇降口には、新しいテーマポスターが貼られた。
そこには詩音先輩の書いたサブタイトルが、ふんわりと添えられていた。
『走るだけが青春じゃない。
ときどき、言葉に座り込むのも悪くない。』
「……なんか、文化祭のテンション下がりそうで、
でも落ち着くっていうか……うん、嫌いじゃない……」
今日の一句:
「文化祭 テーマに詩が ねじこまれ」
次回、第11話「文学少女、演劇部の台本を勝手に書き換えてる」
演劇台本、まさかの“詩バージョン”に改稿!? 演劇部、大混乱の予感!




