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ヘルファイヤ・クラブ~名門貴族の若様と若きギャングスターの華麗な冒険~  作者: ヨシオカセイジュ


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デッドマンズ・ウォーキング part1

 気がつくと三人の周囲をいくつもの人影が取り巻いていた。

 いやーーそれらは正確には、とてもではないが”人“と呼べるような代物ではなかった。

 身体は半ば腐り果て、 両眼はうつろに濁り切り、ポッカリと空いた口から声ともいえない奇妙な“音”を発している。

 両腕はだらりと下がり、足を引き摺り揺れるような奇妙な動きでゆっくりと近づいてきた。


「てめえら、近づくんじゃねえ!」

 ジャックは腰に差していた二丁拳銃を素早く構えたが、“それ”は気にするそぶりもなく、部屋の隅々から湧き出てくるようにその数を増やし、取り囲んでいく。

「ちっ!!」

 前列のひとりの心臓に狙いを定め撃ち込むが、身体から腐った体液を垂れ流すだけで、歩みを止めることはできなかった。

「銃が効かねえ!こいつらもあの豚の化け物と同じかよ!!」

「きったないわねえ、もう」

 飛び散った体液を避けるように、ひょいっとノーラがジャックの肩の上に飛び乗った。

「ジャック、こいつらは亡者(アンデッド)ーー動く屍よ。心臓を撃っても意味ないわ」

「マジかよ……じゃあ、どうすればいいんだよ!」

「あいつらを止めるには首から上、頭を吹っ飛ばすしか方法はないわ」

「頭だな、オッケー!」


 だが、頭を撃ちぬいても動きは止まらず、続いて二発、三発と撃ち込み頭部のほとんどを吹き飛ばすとようやく崩れ落ちた。

「やったぜ!」

 だがーー

『カチッ、カチッ』

 喜んだのも束の間、二人目、三人目まで倒したところで弾倉の弾が尽きてしまった。


「畜生、弾切れだ!」

「アンタねえ、残弾ってものを考えながら行動しなさいよ。まあ、そんな女子供の使うようなチャラチャラした拳銃を持って喜んでいるようじゃ仕方ないか」

「女子供の使う銃とはなんだよ!こいつは軍でも使用されている現行品をベースに、とびきり腕利きの銃職人ガンスミス別注した特別製(カスタム・オーダー)で、すげえ高かったんだぞ!見ろよこの黒檀のイカしたグリップを!!」

「グリップは銃の性能と関係ないでしょうが」

「わかってねえなあ、姉さん。この手に吸い付くような、しっとりとした微妙なフィーリングが大事なんだよ!」

「あのねえ、武器(そんなもの)は相手をきちんと破壊できれば、それでいいの。わかる?」

「あんたロマンってもんをわかっちゃいねえ!」

「そんな事はどうでもいいの。ちょっとハワード、まだなの?」

 呪いの柱を熱心に調べているハワードは、ノーラが呼びかけにも返答を返さない。

「もう、いい加減にしなさいってーー」


『おやおや、これだけ絶望的な状況の中でそれだけおしゃべりができるとは、さすがはウォルズリーの関係者だけのことはありますな』


 迫ってくる亡者の後ろから、微笑みを浮かべながら一人の男が現れた。そいつは顔色こそ他の亡者と同じように土気色なのを除けば、紳士然とした風体であった。


「ーーあら、(おつむ)空っぽの死にぞこない(アンデッド)だけかと思ったら、一丁前の口がきける灰色顔の屍食鬼(グール)もいるじゃないの。まあ、どっちも薄汚い屍肉漁りには変わりないけど」


 嘲るようなノーラの言葉に男は一瞬眉をひそめたが、すぐに気をとりなおすと気取った口調で話し出した。


「ふん……。この後に及んでまだ減らず口を叩きますか。しかし、まさかこれほど簡単に罠にはまっていただけるとは思いもしませんでした。まあ余計な手間が省けてこちらとしては願ったり叶ったりですがね」


「『罠にはまった』?ふふふ、お利口を気取っても、所詮は亡者に毛のはえた下等な化け物ねえ」

 まるで安楽椅子に腰掛けているかのように、ジャックの頭に片手を乗せてくつろぎながら笑いを浮かべるノーラの瞳が怪しく光った。

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