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ヘルファイヤ・クラブ~名門貴族の若様と若きギャングスターの華麗な冒険~  作者: ヨシオカセイジュ


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ダークサイド・パラダイス〜シルバーゴースト part2

「クソッタレ、ずいぶん長いこと使われてなかったと見えて、すっかり錆び付いて固まっていやがる。だが、このジャック様を舐めてもらっちゃ困るーー。よいしょっと!」


 ガチャリという音と共に、教会の扉に掛かっていた古めかしく大きな錠前が外れた。

「ほら、開いたぜ、お二人さん」

 ジャックは振り向くとハワードとノーラに告げた。

「あんな、そこら辺に落ちてるクギだけでよくもまあ……」

 得意げな笑顔を浮かべるジャックの、そのあまりにも手慣れた仕草に呆れたようにノーラがつぶやく。

「おいおい姉さん、あんまり褒めるなよ、照れるぜ」

「褒めてないわよ、あんたバカなの?」

「ひっでえなあ」


「入るぞ」 

 じゃれ合う二人に構わず、ハワードが扉に手をかけた。

 古くて重い扉が軋み、悲鳴のような音を立てながらゆっくりと開いていく。


「何だよ、金目になりそうなものは何も残ってねえな」

 ジャックが思わず発した言葉通り、教会の内部は歴史を感じさせる大きな祭壇を除けば十字架やマリア像などの聖像(イコン)、チャーチベンチと呼ばれる長椅子まで、ほとんどのものが持ち出されてすっかり荒れ果てていた。


「出入口はこの扉だけの様だが、さっきの人影はどこに消えたんだ?」

 ハワードとジャックが周囲を調べても、どこにもそれらしい出入り口は見当たらない。


「ちょっと待って」

 ノーラが唯一残された祭壇にヒョイっと身軽に飛び乗ると、注意深く匂いを嗅いでいる。

「ここに、わずかだけど誰かのいた気配が残っているわ」

「この祭壇に?別におかしなところは無さそうだけどーーあっ!ここを見てくれ!」

 祭壇を調べていたジャックが、床のある箇所を指さした。

「わずかだけど積もったほこりがズレている。この祭壇の下に何かあるんじゃないのか?」

 ジャックはそう言うと祭壇に手をかけ、押したり引いたり様々な方向から力を加えてみたが、微動だにしなかった。


「何よ、ほんと今時の若い子は見かけ倒し、膂力ってものが足りないわねえ」

「あーー畜生!そんなこと言うならあんたやってみろよ!」

「あのね坊や、レディは力仕事なんかしないのよ」

「汚ったねえなあ、なんだよこんな時だけ!」


「二人とも、下がっていろ」

 いつの間にかハワードがマントの下から剣を抜いて構えていた。


「お、おい!ちょっと待ってくれ!」

「危ないって、ハワード!」

 ジャックとノーラが慌てて離れると同時に、ハワードが祭壇に向かって目にも止まらぬ速さで剣を振るった。


 ずるりーー

 しばらくの静寂の後に、祭壇は中心から自らの重みに耐えかねるように、ゆっくりと左右に真っ二つに滑り落ちてゆき、やがて崩れ落ちた。


「お見事!」

「そんなことより、見ろ」

 崩れ落ちた祭壇の下から鉄製の扉が現れた。

 扉を開けるとその向こうには地下へと続く階段が現れ、その先は真っ暗な長い通路が続いていた。


「行くぞ」

「ちょっと待って。『グローバス・ルシウス』!」

 ノーラが呪文を唱えると、空中に光の球が浮かび上がり通路を照らし出した。

「これで安心でしょ?」


 三人はハワードを先頭に進んでいった。通路は降りながら続いていき、光の球はかなりの明るさを放っているが、その先はどれほど続いているのかわからないほど、闇に包まれていた。



「なあ姉さん、俺の気のせいかも知れないんだけどよお、何だか若様カリカリしてねえか?」

 ハワードから少し離れて歩くジャックが、ひそひそ声でノーラに話しかける。

「あー……、そうねえ、今回はあの子もちょっと気負いすぎてるところはあるわね」

「一体何なんだよ、車盗まれて乗り回されたのがそんなに気に入らねえのか?」

「まあ、それもあるけど、この事件に関しては色々あるのよ」

「面倒臭えなあ、もう」


「ノーラ!」

「ああ、ゴメン。おしゃべりが過ぎちゃったわね」

「そうじゃない。ここが終点みたいだぞ」

 長い通路の果てに大きな扉が三人を待ち受けていた。

「さあ、何が待っているか。『神のみぞ知る』ってやつね」


 だが、扉の向こうで待っていたのは三人の想像を絶する事態だった。

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