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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第2章 龍の巣と時代の幕開け
41/51

北半球

【地理】


《南半球》


★カイリー達の現在地 ➡『地下都市』

     アンジェリー➡テロス国


特徴➡ 発展や人口、資源が多い

    北半球と季節が逆


温帯➡ テロス国、エルフの森、

    『龍の巣』

例外➡ 『移動要塞』エイドス国

冷帯➡ 陸地無し


《北半球》


★ルナの現在地➡北半球海域


特徴➡ 環境が厳しく発展までいかず

    南半球と季節が逆


冷帯➡『囁きの森』『闇の街道』等

寒帯➡『禍の鏡湖』『叫びの山道』等

 ルナを乗せた船は北半球の港に到着した。その港はテロスでもエイドスの国でもなければヒュレー国のものでもなかった。それらの国はとっくの昔にこの陸を放棄してからどの国にも属していなかった。あるのは、開拓を目指した各国が残した開拓者の為と研究施設の街だった。だが、今では人間の方が多かった。それは長い船旅を終え背伸びしながら外の空気を吸って、新しい土地に踏み入れた場所から街まで通りすがったのが人間ばかりだったからだ。ただ、だからといって人間だけではなかった。ヒュレーやテロス民もいた。ここでは珍しく色んな種族が混在し共存していた。それは人間にとって理想な場所にルナは思えた。だが、直ぐに空は暗くなり、雷鳴が轟くといきなり冷たい雨が降り注いだ。ルナはとりあえず港にある酒場へ逃げ込んだ。酒場では薄汚い男達ばかりでうるさく騒ぎながら酒を飲んでいた。天井の梁にはランプが吊るされ、埃をかぶっていた。掃除はマメではないらしい。酒場の窓には雨が打ちつけ、当分足止めされるのを覚悟した。その時、髪がミリタリースタイルのおっさんが窓の外を眺めていたルナに近づいてきた。

「諦めな。ここの雨は長い。降り始めたらその日はずっと雨さ」

「そんな!」

「やはりこの地は初めてか。お前だけか? 連れは?」

 おじさんは辺りを見回した。

 ルナは警戒して「はぐれただけよ」と答えた。

「雨が降り始めたのはついさっきだ。雨宿りに逃げ込めるとしたらここしかない。だが、俺は見ていたぞ。お前は一人酒場に来た」

 見ていたのかこの男は。だとしたら自分だけだと分かっていて近づいてきたタチか。

 ルナは答えずおっさんから離れようとした。だが、おっさんはルナのあとをついていった。それを見た他の客は笑いながら「追われてるぞお前。助けてやろうか?」と言ってきた。だが、追いかけてくる男は即座に「やめておけ」と言った。

「助けたらその後で金を請求される。ここで人助けはタダじゃない。善意で近づいてくる連中は金目当てさ。知らない奴はまず最初に騙され、払えないと分かると強制労働さ。それが女なら仕事は分かるな?」

「酷いな」客は席を立つとおっさんの前に立ちはだかり行く手を阻んだ。

「邪魔すんなよおっさん」

 その瞬間、おっさんは若造の客に一発拳をおみまいし、若造は唸りながらうずくまった。

「おい」

 若造の仲間達が一斉に席から立ち上がる。

「いいのか? ここで騒ぎが大きくなればここは出禁だぞ」

 それを聞いて男達は舌打ちした。おっさんはそいつらを横切りルナに「いいから来い」と言った。

 どうやら単なるからかいではないようだ。ルナはとりあえず警戒しながらも男に従った。

 角のテーブル席に二人がつくと男は酒を店員に頼んだ。そして、男は此方を向いた。

「何でこんな場所に一人で来た?」

「色々あって」

「色々あってか……それは皆同じさ。つまり、この中にはろくでなしもいる。お前はそいつらにとってはエサなんだ。食われておしまい。分かるな?」

「警告ありがとう。これは有料?」

「いや、無料だ。明日、ここから出ろ。色々あってもこんな所に一人でいるもんじゃない」

「他の場所もこんな所なの?」

「他? 他があると思うか?」

 おっさんは視線を壁に掛かってある地図に向けた。ルナもそれを見る。地図には恐ろしい名前が幾つも付けられてあった。

「何あれ?」

「ここに来た調査団が残した記録から引用した呼び名らしい。実際、この地は呪われている。不吉なことがあちこちで起きているんだ。もし、この街を出て他に行くにも地図無しでは無理だ。だが、あの地図は古い。調査団が作った地図からもう数十年経っている」

「でも、ここよりマシかも」

 男は笑った。

「街から出たいなら門がある。そこから『囁きの森』へ行ける。その森を突っ切ればあの地図通り『闇の街道』が現れる筈だ」

「街があるじゃない」

「いや……そこは廃墟だ。人はいるかもしれないが、危険だ。悪いことは言わん。引き返せ」

「どこに? どの国も人間の居場所はない。噂だとレジスタンスが人間の国を建国しようとしていると聞いたことがある。建国としたらこの地になる筈」

「この地に今レジスタンスはいない」

「前はいた?」

「……ああ、いたよ。だが、それも暫く前の話しだ。レジスタンスが戦争からこの地に人間を逃してる時、レジスタンスの連中が北に向かった。ある調査をする為に。それ以来、その連中がこの街に戻ってくることはなかった」

「調査?」

「かつて他の種族が開拓に失敗したのはずっと北に何かがあって、多くの犠牲を出したからだっていう噂があってな」

「何かってなによ」

「ここにいる奴は誰もそれを語らない。だが、その何かを絵にしたものならある。俺はその絵を見た。黒い影のようなものだ」

 とても回りくどい言い方がルナは気になった。この男はそれを恐れているのか? それもこの男だけでない。男の話しが事実ならその影の噂を語らない理由はない。随分迷信している。

「その影はいったい何? 何故恐れられているの? いるかどうか分からないんでしょ?」

「さっきも言ったが、この地は色々な現象が起きている。それは北門の先からだ。だから皆恐れているんだ。そして、その影はこう呼ばれている……悪魔と」

「悪魔? あの悪魔?」

「そうだ」

 ルナはぽかんとした。

「最初の者は皆信じない。だが、北門を潜れば皆心変わりする。何故ならそこには恐怖が待っているからだ」

「もしかして行ったの?」

「行った。と言っても『囁きの森』を途中で引き返しただけだ。そこには沢山の霊がいて、俺より先を歩いていた奴は一瞬で囲まれて、俺はその隙になんとか逃げ出せたんだ」

「霊!?」

 幽霊はルナも信じられた。そうか、なら悪魔もいるのかもしれない、この世界に。




◇◆◇◆◇




 その頃、ヒュレー国エリア?? ではエイドス国へ戦艦を出す案は将軍によって却下された。それはエイドス国の戦艦が自分達の国を守る為に引き返したにも関わらず『占い師』の予言がエイドス国の滅びを予言したからだ。それは即ちエイドス艦隊でも止められなかったことを意味する。それなのに、此方の戦艦を出して無傷で済まないと心配してのことだった。戦力はテロス戦まで温存したいのが将軍の考えだった。

 そのテロス国ではスパイからの報告があり、新たな動きとしてテロス軍兵士とロボット兵が移動を開始し、港へ向かっていることが新たに判明した。そこには騎馬隊の新たな編成も行われていると。

 ターキスは腕を組んでいた。

「伝説の生き物の中でよく分からないのが麒麟だ。他の伝説の生き物は一体なのに何故麒麟だけはこうも数がいるのか。からくりさえ分かれば……」

 錬金術士は頷き肯定した。

「確かに、からくりが分からないことにはまた騎馬隊が攻めてくるだろう。あれは厄介だ。なんとかしたいところだ」

「恐らく麒麟の秘密はテロス国にある」

「あの者なら知っているんじゃないのか? 青龍を倒し今度は玄武を狙うあの者なら」

「成る程……あり得るな。よし、早速将軍に提案してみよう」

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