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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第2章 龍の巣と時代の幕開け
38/51

VS騎馬隊隊長

 途切れることのない血の川、空高く今も成長し続ける屍の山、死をもたらす黒い霧は太陽を隠し大地を枯らす。

「黒の鉄仮面『戦争の騎馬隊長』ロデス」

 ロデスは再び自身の黒い麒麟に跨がった。

「錬金術士、お前がどういう術を用意しようと、戦争を終わらせることは出来ない」

「それはどうかな。お前が死ねば終わるかもしれん」

 ロデスは剣を構えると麒麟は錬金術士に向かって走り出した。

 すると錬金術士はリボルバーを出し、銃口を麒麟に向けると引き金を引いた。

 発射された青い弾丸は麒麟の肩に命中する。直後、パキン! と麒麟は全身を凍らせた。麒麟に跨がっていたロデスは驚きながら前方へ放り出された。一瞬で凍ったものだから急停止し、しかし前に猛スピードで向かう運動エネルギーが消失しきれていない為に凍った麒麟は形を崩し粉々になった。

 ロデスは起き上がり、錬金術士を見た。

「ターキス産氷結弾だ」

「錬金術士と戦うと奇妙な道具を見る」

「準備する時間さえあれば錬金術士だって戦える。だから常に錬金術士はあらゆることを想定し準備する」

「成る程な」

 錬金術士はもう一発をロデスに向かって発砲した。その弾丸をロデスは手に持っている弾丸で真っ二つにした。

「青い弾丸じゃない!」

 ロデスが斬ったのは緑色の弾丸だった。

「ああ、残念。それはシモス産のガーデンバレット」

 『食神植物』が生え始め急速成長が始まる。だが、ロデスは両手から紫の雷を放ち植物の動きを止めた。

「エレクトロキネシス……」

「厄介な銃だな」

「どんな弾が出るかはお楽しみさ」

 錬金術士は銃口を向けた。

「だが、電気よりは遅い」

 ロデスは手から電気を放った。

 弾丸が発射されたのはその後だった。電気をうたれた錬金術士はリボルバーを地面に落とした。

 一方、意地でも発射された弾丸はロデスの鉄仮面より斜め上を通り抜けた。

「残念だったな」

 ロデスは膝をついた錬金術士の前に立つと剣を振り上げる。そして、狙いを錬金術士に定めた。だが、直後にロデスの右腕に激痛が走った。思わず剣を落とし重さで地面に突き刺さった。

「なんだ?」

 すると、錬金術士の顔の皮膚だったものが溶け始め、一緒に髪の毛も抜け落ちた。

「これは『身代わり人形』!?」

「そうさ、『人形師』ラファの私そっくり人形だ」

 ロデスの背後から錬金術士の声が聞こえた。錬金術士は後ろから銃口を向けていた。

「さて、次はどんな弾だろうね? さっきは外してしまったからね」

 錬金術士は引き金を引いた。リボルバーから発射された弾は赤い色をしていた。

 ロデスの背中にそれが命中すると、そこから炎がぶわっと広がっていきロデスを炎が包んだ。

 ロデスは悲鳴をあげた。

 だが、それでもロデスは倒れるどころか地面に突き刺さる剣を引き抜いた。

 錬金術士はハッとし残りの弾丸全てを撃った。全てが命中し、猛毒や風、石化をくらった。それでもロデスら石化から殻を破るように突き破り、猛毒も炎も風もロデスを倒すには至らなかった。

「なんだったらお前は死ぬんだ? 不死身じゃあるまいし」

「確かに不死身ではない。だが、この程度でやられるくらいなら騎馬隊長は名乗れない」

「そうかい……」

 とんでもない化け物だと錬金術士は思った。だが、奴に命が、魂がある以上奴を殺す手段はある筈だ。既に死んでいる死者や魂のない動く人形とは違う。それだけが今の状況において救いだった。

 ラファの人形達がここに間に合い、数多くの錬金術士の分身体がロデスを囲んだ。全員が一斉に銃口を構えロデスに向けた。

 それを見て鉄仮面の奥に見える瞳が光って見えた。

「数で倒せるとでも」

 最後まで聞かずに一斉に銃弾が発射された。

 ロデスを中心に無数の爆発が連続で起こった。





 長い長い夜もようやく終わりが訪れ、海の地平線彼方から光が射し込んできた。それを見た僅かな騎馬隊は自分達の戦艦に向けて敗走した。

 あの激しい爆発の後でロデスの遺体どころか残骸を見つけることは困難だった。ターキスは遺体がないのでは奴が死んだのかどうかも分からない! と怒鳴り声をあげていたが、錬金術士にはどうでも良かった。防衛は果たした。この結果で大部分の騎馬隊をあちらが失ったのは間違いない。このあと立て直すにも騎馬隊への侵攻はもうないだろう。

 あちらの『クロノス』は百年前の戦争時のデータ以外で此方の防衛力を戦闘力を本当の意味ではまだ把握出来ていない。地下都市という国事態、空から見えるものでもない。今回の情報を収穫に今後の作戦に修正してくるだろう。そう錬金術士は予想した。




◇◆◇◆◇




 ヒュレー国近海、テロス艦隊。その指揮をとる艦長は捕らえた元エルフの王へ現れた。元エルフの王は拷問されてか体にはあちこち痣があった。今は椅子に縛られている。

「元エルフの王よ、我が騎馬隊がヒュレーにいる白虎を倒したと報告を受けた」

「白虎を?」

「そうだ。お前が倒そうとしていたあの白虎だ」

「なら、あとは朱雀と玄武、それに麒麟だけだ」

「それはどうかな。いくら麒麟について知っていようと今のお前では触れることさえ叶わないだろう」

「俺を解放しろ。そうすれば玄武は俺が倒してやる」

「なんだと?」

「お前達にとって自由に行動出来ない理由は背後で待機しているエイドスの艦隊だろ? 更にエイドスは移動し近くに来ている。白虎を倒したのは褒めるが、どうせ騎馬隊はその戦でかなり減らされたんだろ?」

「何故そう言いきれる」

「分かるさ。ヒュレーから強いサイコキネシスを幾つも感じとれた。お前達はそれすら感じれないんだろ? だが、俺には分かる。かなりの凄腕だ」

 艦長は即座にこの男に隠しても無駄だと悟る。

「それで何故お前を解放することになるんだ?お前の重要性はこれからの交渉においてキーになる」

「だが、もし俺がエイドスと、いや、玄武とやり合って勝てばエイドスの艦隊はお前達をおさえている状況ではなくなる。その間にお前達はヒュレーに攻め込み一気にとる」

「お前は玄武だけでなくエイドス兵士とも戦うことになるんだぞ」

「構わんさ。俺は負けない」

「たいした自信だな」

 正直、この男の強さなら勝てなくても暫くの間は引き付け役になってくれるかもしれない。

 そんな時、本国から連絡を受けた兵士が艦長に報告へやって来た。

「艦長」

 兵士は艦長に耳打ちする。

「なんだと!?」




◇◆◇◆◇




 テロス国『空中都市』その黒城『国防棟』の会議室。そこに副大臣と数名の官僚が席についていた。

「それでレジスタンスが捕らえられなかったとはどういうことだ?」と副大臣は会議室の前に立つ司令官を問い詰める。

「申し訳ございません。現在全ての監視モニターを再度調査にあたらせております」

「AI『クロノス』もこの事態は想定外のようだったが、何者かが裏切ったのではないのか?」

 その時、会議室にある電話機が鳴り出した。司令官はそれに救われた気持ちになった。

「何だこんな時に」

「私が出ます」

 官僚が立ち上がり受話器を取ると暫く会話してから顔をあげ副大臣を見た。

「副大臣にお電話です」

 副大臣は受話器を受け取ると「もしもし、お電話かわりました」と話した。それから暫く副大臣が黙って聞いていると急に「なんだって!?」と大声をあげた。




◇◆◇◆◇




 ヒュレー国近海、テロス艦隊。

 兵士は艦長命令で元エルフの王に黒い首輪をつけた。

「それには位置情報と爆弾が仕掛けられてある。無理に取ろうとしても爆発する仕組みだ。お前の望み通り解放してやる。ただし、お前には玄武と戦ってもらう。勝っても負けてもここに戻ってこい。そうでなければその首が吹き飛ぶことになる」

「ああ、分かった」

「ボートは出してやる。あとは自力でエイドスまで向かえ」

「一つ訊いていいか?」

「駄目だ。質問は無しだ。さぁ行け」

 艦長は元エルフ王を急がせた。

 それにはそうする理由があった。それはごく一部しか知ることが出来ない。今は…… 。

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