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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第1章 百年後の新時代(ディストピア)
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長い一日

 エリア?? 会議室。そこには壁掛けのモニターと七つの椅子があるだけの殺風景な部屋。そこにアイアスは色欲の錬金術士を連れて入った。既に一人は椅子に腰掛けている。獰猛な顔、ライオンのたてがみみたいな髪、鷹が狩りをするような鋭い目をした大男が。

「何故、部外者がいる?」

 男はアイアスの斜め後ろで立っている婆さんに向かってそう言った。それに対し錬金術士の婆さんが答えようとしたが、その前にアイアスが先に答え遮った。

「私がお連れしました。将軍の命令で」

 すると、男は舌打ちした。将軍の名が出れば従わざるを得ない。そんな男の名は『憤怒』のシモス。

 そこに杖のつく音が背後から聞こえてきた。

「なにやら揉める声が聞こえてきたが」

 それは老いた声。振り返ると入口に白杖を持ち、短く刈った白髪、鼻先が僅かに赤く、白濁した瞳の老人が立っていた。『傲慢』ヒュリスだ。

「何も」とシモスは言った。

「ならいい」

 シモスはそう言って白杖をつきながら椅子に腰掛けた。

 更にもう一人やってくる。そいつは桃色に光るハゲ頭に眉のない痩身な男だった。他の二人と同様の黒いスーツを着ているそいつの名は『怠惰』のラファ。いつもギリギリにやって来る。

「ラファが来たということはこれで全員か?」とシモスが言う。ヒュリスは「そうだろうな」と返した。

「となると集まったのは自分含めて5人か。それともアイアス、お前は兄貴の代理としてここに来たのか?」とシモスは訊いた。アイアスは首を横に振り「違います。自分は将軍の命令通り色欲を連れてきただけです」と丁寧に答えた。それは色欲を相手がする時とは態度が一変していた。

「なら、出てけ」

 言われたアイアスは色欲を置いて一人踵を返していった。

「やれやれ」婆さんはそう言いながら席につく。

 全員の名前の前にあるのはかつて社会を揺るがす犯罪を起こした時に呼ばれた二つ名だ。その後、その能力を政府に買われ雇われることとなった連中達。色欲の婆さんで言えば、錬金術となる。ただ、色欲の婆さんはその後政府の仕事から抜けていた。それがこうしてこの席に呼び戻されたとなれば、今回の議題はあれしかない。伝説の生物、青龍がやられた件だ。

 すると、モニターにあかりがついた。

 これから、今後の対応について会議が始まる。




◇◆◇◆◇




 その頃、アンジェリーは高電圧のフェンスの先にある森に入っていた。かつて、その土地には人間の街があった。だが、戦争で焼け野原となり、そこにテロスは科学の力で自然を蘇らせた。それでもこの区域が立入禁止のままになっているのには理由がある。だが、それは一般には知られていない。しかし、アンジェリーは知っていた。真実を。

 一度焼け野原になったのは事実だ。だが、それは戦争中によるものではない。空からこの星に降ってきた巨大な四つの隕石、その落下地点の一つがこの場所だった。

 残り三つは他の場所になる。

 それまでは人間が支配する世界だった。弱肉強食のピラミッドでいう頂点に位置する存在。それは二千年続いた。正確には1999年7月に落ちた隕石から世界のピラミッドが大きく変わる。隕石には新たな生物となる種があった。それが落ち、この場所でテロスが誕生した。

 後に四種族による神話によって神が新たな生命を誕生させたことにされる。戦ばかりする煩い下等な種を滅ぼす為の使徒として。

 だが、この世界の土地から生まれた私達と、そうでない四種族では決定的な違いがある。それは四種は少なくともこの世界にとっては外来種、土地の持つエネルギーは土地に生まれたものにしか扱えない。

 四種族を倒すすべがあるとしたらそれだ。

 そして、四種族もきっと気づいている筈だ。だからこそ、人間に知られるわけにはいかない。四種族は自らを人間より優れた種族だと偽る他なかった。

 だが、それも永遠ではない。

 この禁止区域は監視が手薄。そんな森にまさかテロスもレジスタンスの拠点があるとは思わないだろう。だが、日中でも薄暗いこの森は隠れるのには適している。空からの監視も避けられる。

 そうしてどんどん奥へ進んでいくアンジェリー。と、そこに

「止まれ」

 背中に銃口が突きつけられた。声は男のものだ。アンジェリーはゆっくりと両手をあげながら「何の真似?」と訊いた。

「念の為さ。武器は?」

「ない」

「尾行は?」

「見てたでしょ? ずっと」

 すると、銃口が降ろされた。

「アンジェリー」

「久しぶりディーン」

 アンジェリーは振り返って後ろにいた青年とハグをした。バンダナに黒い瞳、デニムオンデニム姿の彼は暫くハグをし再会を喜んだ。

「上手くいったな。皆驚いてるぞ」

「でも、流石にテロスとエイドスをこれ以上騙すのは無理になった」

「それはいいんだ。むしろよく出来たな。エイドス、テロスの両方のスパイなんて」

「皆の反応は?」

「皆驚いてたよ」

「そりゃ皆反対してたからね。絶対に無理だって」

「ああ。でも、君は本当にやってみせた」

「それで、テロスの現状は?」

「ああ、その話し何だが……」

「何?」

「ヒュレーとテロスは計画通りぶつかり戦争状態だ。ただ、予想しなかったことが起きた」

「なに、トラブル?」

「いや、むしろ此方としては嬉しい話しだ」

「?」

「ヒュレー国にいた青龍が倒された」

「え!?」




◇◆◇◆◇




 その頃、黄昏時、アンジェリーを追ってロングストロークエンジンの黒いバイクを走らせている黒髪の若年女がいた。

 恐らく、テロスとエイドスの両方のスパイ。二つの国の情報をあの女が握っている。となればあの女はレジスタンス。でも、いつから? 私と出会った時にはエイドスの奴隷として買われていた。なら、その前?

 いや、そんなのはどうでもいいや。だってあの女、本当は人間が復権するのを望んでいないんだもん。もし、望んでるのならなんで●●●●●●したのさ。きっと、レジスタンスも裏切るよあの女。

 あぁ…………早くアンジェリーに会いたい。

 女は更にスピードをあげた。

 今、どんな目をしてるのかな? 早く知りたいよ。




◇◆◇◆◇




 今日という長い長い一日は、百年の平和から戦争が始まり、ヒュレーの外務大臣が戦死、テロスの外務大臣が捕まり拷問、青龍が倒され、その青龍を倒した謎の鎧はテロスに捕まり、一方でアンジェリーはエイドスを裏切りレジスタンスに合理、更にそれを追うスパイの女。そして、カイリー達は一攫千金を目指しトーナメント戦に出場、全員一回戦を突破する。

 ここから新たな時代、世界大戦へと向かっていく…… 。

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