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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第1章 百年後の新時代(ディストピア)
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青龍戦【2】

「さて、こんなところでいいだろう」

 鉄の鎧は走るのを止め振り返り青龍を睨んだ。青龍もまた空中で止まる。あの光を警戒しているのか?

 そりゃそうだろう。見えているのが生まれた時から当たり前の生物にとって視界が奪われるのはそれだけ戦いが不利になるってものだ。だからこそ、最強も伝説にも通用する。

「さて、ここなら存分に戦える」

 鉄の鎧は剣を構えた。

 青龍はもう流石に気づいている。目の前の敵がただ『龍の巣』を荒しに来たのではないのだと。自分を倒す為に現れたのだと。

 すると、青龍の周りに急に火の玉のような燐光(りんこう)が大量に出現しだした。

「遂に本気というわけか」

 青龍は距離をとる戦法に変えたようだが、隙を見せれば青龍は降りて直接襲いかかることも念頭に入れておかなくてはならない。

 サイコキネシスでなんとか海面に立っていられるが、波の動きに揺られ足場は最悪。

 青龍は大きな声をあげ威嚇すると、燐光が高速で鉄の鎧に向かって飛んできた。鎧はサイコキネシスで海を蹴り、大きな水しぶきを起こす。空から降りそそぐ無数の燐光は海へと落下し、直後に大爆発を起こした。その度に水しぶきが何本も立ち上がった。その水しぶきから鉄の鎧が高速で現れる。それを目掛け、青龍は青い炎のブレスを放った。それは回避中の鉄の鎧へと直撃した。ブレスが海に当たり、白い煙が起こる。青龍は攻撃を止め、一旦静観した。直撃、煙の中から白い一閃が放たれた。閃光は空高く飛び青龍の頭を狙っていたが、青龍はそれを寸前で頭を横へと回避した。

 青龍には鉄の鎧を視認出来なかった筈だ。だが、それを回避できたのは単なる直感とはちょっと違う。きっとサイコキネシスで透視したのだ。

 仕方なく煙から鉄の鎧が現れた。

 さっきのは幻月(げんつき)で自分の偽物を青龍に攻撃させたのだ。だが、それは強敵相手なら一度しか通用しない。

 青龍は再び燐光を出現させる。

「させるか!」

 鉄の鎧は剣を構え、

「荒れ狂え綺羅羅糠星(きららぬかぼし)

 剣を振るった先から無数の光が曲がりながら青龍目掛けて飛んだ。だが、その手前にまだ放たれていない燐光にいくつか当たり、空中で爆ぜていく。その衝撃は近くにいた青龍に被弾させた。

 悲鳴のような鳴き声をあげる青龍。だが、それぐらいでは青龍に致命傷を与えるのは不可能。それに、奴には高速再生が可能だ。

 鉄の鎧は再び煌々としだし、青龍は目を細めた。だが、今回は鎧だけが光っているのではなかった。海全体が発光しだしたのだ。

光彩陸離(こうさいりくり)

 様々な色の持った光が放たれ、それは空にいる青龍でも鉄の鎧を視認出来ない程。

 夜ではないのに、これ程光があるというのに、それがかえって見えにくくしている。

 青龍は口を開いた。透視で位置を確認すると、その場所目掛けてブレスを放った。広範囲に広がった青い炎がまた海の海を暫く燃え続け、煙が発生しだす。

 直後、大砲をくらったような衝撃が青龍の横腹に直撃した。

 青龍は辺りを見回した。

 あれは大砲ではなくサイコキネシスによる衝撃波。青龍は怒りの鳴き声をあげ、更に空高く飛んだ。

 煙から出てきた鉄の鎧は背を向ける青龍を見上げた。

「どこへ行くつもりだ?」

 まさか逃げ出したわけではあるまい。となれば、何かくる。

 その前に準備をしておくか。

 その時だった。空高くから雷鳴が轟いた。

「まさか!?」

 雲より高く上がった青龍は雷を纏って、まるで黄色い龍は海へと急降下を始めた。

 鉄の鎧は剣を構える。ふと、あることに気づき下を見た。


 海。


「まずい!」

 青龍は鳴き声をあげると、空から雷が落ち始めた。それも一つではない。複数同時。

 クソッ、全て止めてやる!

「綺羅羅糠星!」

 振るった剣から無数の光が放たれ、落ちてくる雷を全て空中で当てにいった。

 空中ではバチバチとぶつかる爆発音で、花火のあとのように煙がおきた。

 すると、青龍を纏っていた黄色い光が徐々に消え始め、まるで電力不足になったかのように元の青龍の姿へと戻っていった。

 すると、落雷も止み鉄の鎧は反撃にかかった。

光波斬(こうはざん)!!」

 光速の斬撃が空にいる青龍の首に直撃した。

「落ちろおおおお!!」

 光の斬撃は青龍の首元へどんどんと深く入っていく。その度に血が溢れ吹き出た。だが、半分いった途中で進みが悪くなり始め、途中で完全に止まってしまった。

 駄目か……やはり伝説の生き物だけあって簡単にはいかねぇか。

 此方はもうほとんどサイコキネシスが限界に近づいてる…… 。

 一方、青龍は光の斬撃が消えた切り口からまた再生を始めていた。

 あの状態なら普通ヒーリングが使えたとしても死んでる筈だ。

 やはり化け物だな、ありゃ。

 思わず剣を握る手に力が入る。

 相手は大技を連発しているが、体力が尽きる様子は見えない。底の知れない敵にどう戦うべきか…… 。

 その時だった。青龍に数発連続の砲弾が飛んできた。青龍は更に遠くの海にいるテロスの戦艦を見た。

 青龍は燐光を無数に生み出し、数発分は砲弾に向け、残りは戦艦に放った。

 砲弾は全て燐光によって弾かれ、戦艦に向かって飛んできた燐光は戦艦の近くの海に落ち、直後に爆ぜた。一部は戦艦に被弾、戦艦は青い火を吹き、船員は海へ急いで飛び込んだ。

 青龍は更に急降下しそのまま海に突っ込むと、巨大な水柱を生み出し、そのまま海の中を移動しだした。

 海で待機していた戦艦は急いで移動を開始する。だが、青龍の動きにその鉄の船では到底間に間に合う筈もなく、青龍が一度テロス戦艦の真下を通過すると、水柱が立ち上がり、そこから青龍が浮上。近くにいた戦艦に巻きつき、長い体をもってその戦艦をへし折った。

 その戦艦に乗っていた兵士達の悲鳴が上がる。だが、そこに突然光の巨大な柱が出現し青龍の長い体を貫いた。

「お前の相手は俺だ。忘れるんじゃねぇ」

 青龍は怒りの鳴き声をあげ、へし折った戦艦を離し再び鉄の鎧の元へ向かって飛んだ。

光柱(サンピラー)

 すると、青龍が向かって飛んでくる真下、海面から次々と光の柱が立ちのぼり、回避に遅れた青龍はいくつかの柱に体をまた貫かれた。

 悲鳴をあげる青龍。

 それでも再生する青龍は貫かれた風穴も数秒で塞がってしまった。

 直ぐ様、青龍の周りに無数の燐光が発生する。だが、鉄の鎧も光の無数の玉を出現させ、両者はそれをほぼ同時に放った。

 無数の光の玉と燐光が飛び交い、またぶつかり、いくつかは海に落ち水しぶきを起こし、沢山の爆発と、衝突を繰り返した。そんな弾丸の雨のように降り注ぐそんな空間で、青龍と鉄の鎧はお互い怯むことなく目の前にいる敵に向かって一直線に走った。

「いい加減死にやがれぇ!!!」

 鉄の鎧はもう限界にきていた。全てをこの一撃に込める。

 青龍も相手が勝負に出たのを察していた。大きな口を開き、青龍もこの戦いを終わらせようとしていた。

 刹那、強い光が青龍の視界を襲った。

「何度くらってもそりゃ慣れないだろうよ。目が見えるってだけで気づいたらそれに頼ってしまうもんだ」

 鉄の鎧は青龍の頭上にいつの間にか飛んでいた。直前のサイコキネシスの高ジャンプ、からの脳天に剣を突き刺し!

 青龍は暴れまわった。だが、鉄の鎧は必死に振り落とされないよう、より深く剣を、その奥へと突き刺した。

 今だ!

「ヘブンズピラー!!」


 それは今まで見せた光の技よりも神々しく、巨大な光の柱は、天まで届いた。

 




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