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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第1章 百年後の新時代(ディストピア)
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エウロスVSセレーネ&テロス大臣

 エリア1、主要施設『テュラーハウス』そこは大理石で設えた床に白を基調とした大きな空間、そして奥には政府関係者や重要な人物が使用出来るエレベーターがあった。その『テュラーハウス』手前でヒュレーの外務大臣エウロスがテロス兵とサイコキネシス使いのセレーネと戦っていた。

「ローラーティオー!」

 エウロスの掌から霧雨のような風の刃が前方の敵兵に向け放たれ、攻撃を受けた敵兵は次々と倒れていった。これで東からの敵はだいたい減らせた。厄介なのはハエのように飛び回るドローンと、テロスの外務大臣、そしてセレーネがいるということだ。

「そろそろ諦めたらどうだ?」テロスの外務大臣は余裕そうにそう告げた。だが、それで諦める程、背負っている責任はそう軽くはない。

「なにがあろうとここを死守する」

 テロス大臣はため息をついた。その決意はかたいとみたからだ。

「セレーネ」

 言われたセレーネは地上に降り立った。

「多少の怪我はやむなし。だが、絶対に殺すなよ」

「……」

「ナメるな! 風波一閃!」

 先程の霧雨とは違い、高出力の極太レーザーのような突風がセレーネ達に向かって飛んだ。セレーネはテロス大臣の前に立ち自ら盾となると、最大出力のサイコキネシスを前方に放った。一瞬、両者の攻撃がぶつかり周囲に衝撃波が起きるが、それも直ぐにセレーネのサイコキネシスを打ち破ってセレーネに直撃した。

 黒い布切れと共に血が舞い、セレーネは足首だけその場に残し、あとは肉片となって周囲に散らばった。

「大臣まではやれなかったか」

 テロス大臣は腕をクロスし、セレーネの防御の後ろで自身もサイコキネシスでガードをしていた。

 セレーネがいなかったら大臣は今頃肉片になっていただろう。

「まさか……これ程の威力だとは」

「さて、お前だけになったがまだやるつもりか?」

「いや、それはどうかな?」

「なに?」

 すると、周囲に散った筈の肉片と骨と血液が集まりだし、それは足元のある場所へと集合しだした。

「なんだと!? あれでまだ死んでいないというのか! いや、いくらヒーリングでも死者を蘇らすことは出来ない……何の力だ」

 エウロスが目の前で起きていることに驚愕している間にもセレーネは肉体を再生し始めていた。

 ……アキレス腱、膝、太腿、腰、脊髄、臓器、筋肉、肩、腕、首、顎、頭、髪の毛。

 服まで直し、全てがやられる前の姿に戻った。

「あり得ない……」

 死なないサイコキネシスなんて聞いたことがないし当然前例もない。エウロスは考えた。恐らくこれがセレーネの持つエネルゲイアなのだろう。ヒーリングの最上位的に見える能力だが、回復とは少し違うイメージがある。というのも、自分が奴の腕を風で切り傷をつけた時、奴は直ぐには再生しなかった。いや、出来なかったと見るべきだろう。だとしたら、ヒーリング以外の可能性はある。ただ、ヒーリングはかなりサイコキネシスを使うから単に回復させなかった可能性もある。それでも自分の直感はヒーリングじゃないと訴える。だとしたら、死ぬことをトリガーとした『呪い』の一種か……少し試してみるか。

「お前のエネルゲイアは『闇』だろ? 死ぬことをトリガーにした『呪い』か? 大抵『闇』は『呪い』が多いと聞くが」

「……」

 セレーネは相変わらず何も言わなかった。顔も布で隠れているから表情も分からない。

 すると、またセレーネの周りに剣や銃が集まった。

「さっきの繰り返しか?」

 すると、テロス大臣が言い返す。

「さっきの大技は厄介だが、あれはそう何度も連発は出来ないだろう。そう考えれば撃たせる隙さえ与えずに攻撃を続け体力を奪わせた方がいい。どうかな?」

「あくまで戦いはセレーネとやらに任せ自分は参戦しないというのか?」

「どうだろうな」

 テロス大臣は曖昧な返答をした。

 そりゃ、正直に話すわけがなかった。となるとやはり2体1にはかわり無しか。

 せめて、先にあの大臣を殺れたら状況は変わる筈だ。

 早速飛んできた剣を風で吹き飛ばしながら弾丸はサイコキネシスで防ぐ。その間にも武器はどんどんセレーネの方に集まっていく。

 これではキリがない。エウロスは一瞬真上を見た。ここは青龍の巣の真下。つまり、エリア1には天井がある。

「これならどうだ」

 エウロスは天井に向かってサイコキネシスを放ち、破壊された天井の瓦礫がテロス達に降り注いだ。

「考えたなエウロス」

 テロス大臣はそう言ってサイコキネシスで瓦礫を全ておさえる。その隙に「ローラーティオ!」広範囲の風の霧雨をエウロスは放った。セレーネは簡単に防げるだろう。だが、テロス大臣は瓦礫をおさえる力で防御が手薄だ。霧雨は威力は弱くサイコキネシスなら簡単に防げるが広範囲が売りだ。

 セレーネは即座に反応しテロス大臣の前に行き盾になろうとした。いや、そうなるだろう。セレーネにとっての優先事項が大臣を守ることだから。顔は分からなくても、行動は読める。

 エウロスはカーブする風波を放った。一閃でないぶん威力は落ちるが、どちらにせよ防御ががら空きのテロス大臣なら確実にやれる。

 だが、エウロスの風波を瓦礫をおさえたままテロス大臣は防ぐのではなく横にそって避けた。

 プレコグニション!? テロス大臣はそれをやって見せたのだ。これなら防御が手薄になっても回避出来る。

 テロス大臣はおさえていた瓦礫をそのまま攻撃に転用し、サイコキネシスで瓦礫を投げつけた。

 エウロスは後方に下がる。サイコキネシスで防御やエネルゲイアの風で吹き飛ばすことも出来るが、セレーネが攻撃の姿勢に入っているのが見えた。これは攻めに急がず下がって振り出しに戻した方がいい。でないと此方の状況が不利だ。

 エウロスは下がった。だが、その後ろからテロス兵が剣を持ち、エウロスのがら空きの背中を突き刺した。

「なっ!?」

 おかしい……テロス兵は全て倒した筈だ。まだ、いたというのか?

 だが、そうではなかった。倒した筈のテロス兵が次々と起き上がってきた。

「理解出来ないかエウロス」

「……」

 エウロスは膝をつき、見上げるかたちでそこからテロスを睨みつけた。

「死がトリガーの呪いなら、仲間の兵士にもその呪いを宿したらどうなるかな?」

「まさか……」

「不死身の軍隊の出来上がりというわけだ」

「そういうことか」

「そういうことだエウロス。君がセレーネを倒せない時点で不死身の軍隊、我々に勝つことは不可能。いや、それだけではない。世にも珍しい闇のエネルゲイアが突然現れたんだ。無理もない。大抵は即座に対応出来ないものだ。誰もが想定しない事態故に君を責めるものもいないだろう。なにせ、闇のエネルゲイアを出現させたのは分かっているだけで数名しかいないのだから」

「敵の同情などいらん! 殺すなら殺せ」

「サイコキネシスで延命すればまだ人質としての価値はある」

「狙いはなんだ? いつから計画していた?」

 すると、外から爆発音が響き渡った。

「どうやら我々の狙い通り青龍はドローンに食いついてくれたようだ」

「その間にお前達の仲間が我が国に侵攻できるというわけか……。船は光学迷彩かホログラムで最接近したといったところか?」

「もういいだろう。降参したまえ」

 突如、エウロスは笑い出した。テロス大臣は片眉をあげる。

「なにがおかしい」

「いや……ここには青龍の他もあるというのに自信満々に言うもんだから」

「『白虎』のことか」

 すると、どこからか獣の鳴き声がヒュレー全体に響き渡った。

「ヒュレーには『白虎』を従わせるエネルゲイアがいるとか」

「とかではない。実在する!」

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