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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第1章 百年後の新時代(ディストピア)
17/51

来訪

 会談当日。その日は雷鳴が轟く悪天候だった。テロス側とエイドス側は二カ国とも船でヒュレーの東門出入口から入港する予定となっている。流石にテロスは麒麟に跨ってヒュレーに現れはしない。それは青龍がいるからだ。空からの外来は容赦なく攻撃的になる。だからそもそもヒュレーへは船以外に近づく手段はない。

 本日の予定としては二カ国の外務大臣を歓迎後、視察、その後に三カ国での会談が行われることとなっていた。その間、東の港での通常作業は全て停止、厳重な警備体制で迎えることになっている。

 会談の中身については非公開となり、その会談後の記者会見の様子は全国民のみならずエイドス、テロスにも放映され公開され、各国の記者団は制限つきで入国後、パスを渡される運びとなっていた。

 そして遂に、薄暗い海の向こうから稲光に照らされる船が見えた。それはテロスの船だった。それを聞いた政府関係者は緊張が走る。

 そして、ヒュレーの東門の分厚い扉が開き始めた。

 その様子はヒュレーの各テレビに流れた。現場にいるリポーターは興奮気味にその様子を歴史的瞬間と伝えた。




 その頃、テロスのとある街の飲食店。その巨大モニターにもその様子が流れ、AIによる音声でその様子が語られた。

 エプロンをしたルナはそこでロボットに紛れ仕事をしていた。そこでの職場はよく客が「人間がいると飯が不味くなる!」とよく怒鳴るのだが、ロボット需要の拡大で一時半導体不足に陥り、人間がこうしてロボットの代わりに働いていた。なんでも政府は兵士ロボットの生産を倍増する為に新世代の半導体に生産を回してしまっていた。

 だが、その半導体不足も一時的なもので直ぐに一般用ロボット供給も足りつつあった。結果、ルナはここをあと3日で辞めるはめになった。

 しかも、アンジェリーは今日の朝から姿を消してどこかに行ってしまっていた。

「おい人間、早く酒持って来い」

 歴史的という祝いにうかれているテロスはそうルナに向かって大声をあげた。

「はい。ただいま」

 ルナは負けじと大声で答えた。




◇◆◇◆◇




 ヒュレー、エリア30。そこにはテレビがなくラジオが流れ、その前にカイリー達が集まって一緒に報道を聞いていた。

〘速報です。本日エイドスの外務大臣が来訪し会談に応じる予定でありましたが、急遽エイドス側から会談を取りやめるとの連絡があったことを政府が公表しました。急遽取りやめた理由については不明とのことです〙

「なーんだ、エイドス来ないんだ」とレインは言った。

「エイドス、私見たことない」とボニーが言うとレインは笑って「ラジオだからそもそも見れないでしょ」と言って皆で笑った。

「そういえば婆さんは?」と私は訊いた。

「興味ないんだって。今、なんか錬金で調合してるよ」

「ふーん」

 私はそう言って一旦皆から離れて婆さんのところへ向かった。婆さんは釜で何か調合をしていた。その婆さんは私の気配に気づいて「なんだい?」と言った。

「錬金術してるって聞いたから。今日は依頼もなかった筈だけど?」

「個人的なものさ」

「エイドス、今日来訪しないそうだよ」

 婆さんは作業していた手を止め私を見た。

「エネルゲイアの特訓はどうしてる? 上手くいってるのか?」

「聞かないんじゃなかったの? まぁ、いいけど」

 私はそう言うと、手に負のサイコキネシスを宿した。それはハッキリと目に見える紫色をしていた。それを見た婆さんはそれが何なのか一瞬で分かった。

「呪いか」

「このサイコキネシスに触れたものに呪いを付与できるんです」

「それで呪具も作れるのか」

 私は頷いた。

「それじゃやって欲しいものがある」

「?」




◇◆◇◆◇




 『動く要塞島』エイドス国。幹部会議室。そこには錚々たる顔ぶれが集まっていた。

「テロスに潜入していたスパイから報告があったそうだな」

「はい。人間アンジェリーからはテロスにあるAI『クロノス』が突如起動したとのことです」

「原因は?」

「分かっていません。それともう一人のスパイからですが、テロスはヒュレーの国へ暗殺部隊を送ったようで、ただそれがどうも失敗したようです」

「誰を標的にしていたんだ?」

「それはまだ不明とのことで……」

「失敗したということはヒュレーに知れたというわけか。なのにヒュレーは三カ国の会談をやろうというのか? ヒュレーは何か考えがあるのか?」

「不明です」

「どちらにせよ、テロスはとんでもない問題を起こしてくれたものだ。百年続いた均衡が崩れ兼ねない」

「本当にひと波乱起きるかもしれないぞ」

「こちらから二カ国に対し自制を求めるべきでは?」

「いや、まだだ。まだ様子を見るべきだ」




◇◆◇◆◇





 ヒュレー、エリア30。

 そこでは私は婆さんに言われたものを次々と呪具に変えていった。

「こんなに沢山どうして必要なの?」

「今、上でテロスの政府関係者が視察をしているだろ?」

「うん」

「これは知り合いからの情報だが、テロスで昨日何かトラブルがあったようでね、その知り合いは私に警告を朝してきたのだよ。事が起きるって」

「どういうこと!?」

 その時、向こうの部屋からラジオの音が急に大きくなった。

〘緊急です! 会談に来訪していたテロスが急に我が国に対し攻撃を始めました!〙

「え……」

「もう始まってしまったか」




 エリア1 既にそこは火災が起こっていた。テロスが乗ってきた船から兵器ドローンが大量に出現し、エリア内を飛び回りながらそこにいたそこにいたヒュレーを襲い始めたのだ。

 それを見たヒュレー外務大臣エウロスは「どういうことだ!?」とテロス外務大臣に言うと、テロス外務大臣の後ろで同行していた職員は一斉にホログラムを解除し、スーツ姿から一瞬で軍服に切り替わった。直ぐ様、エウロスの警備が前に出て外務大臣の盾となった。

「今のうちに早くお逃げ下さい」

 セキュリティポリスがそうエウロスに言った直後、外務職員になりすましていたテロス兵の銃に撃たれ、射殺された。

 バタリと倒れ込むセキュリティポリス。

「さぁエウロス大臣こちらへ。あなたには人質になってもらう。素直に従っていただければあなたの身の安全は保障しましょう」

「ふん、保障などいらん」

 大臣はそう言うとサイコキネシスを纏った。

「あくまでやる気ですか。なら、セレーネ」

 呼ばれたセレーネは上にいた。サイコキネシスで飛んで待機していたのだ。

 セレーネは黒子のように全身黒い衣装を纏い、頭には黒い頭巾がしてあった。

「暗殺部隊か」

 すると、セレーネの周りに次々と武器が集まっていく。剣や銃、それらがセレーネのサイコキネシスによって集まると、剣先と銃口をそのエウロスに向けた。

「ナメられたものだ」

 エウロス大臣は構えた。直後、剣がまず上から弾丸のように放たれた。それに続いて銃は一斉に火を吹き始める。対するエウロスは腕から風を引き起こすと、突風をセレーネに向け放った。

「エウロス大臣はエアロキネシスか!?」

 テロス大臣は驚いた。

 風は剣を吹き飛ばし、放たれた弾丸はサイコキネシスでガードすると、弾丸はヒュレー大臣の手前で止まり、パラパラと弾丸が地面に落ちた。

 すると、セレーネの左上腕が斬れ血が流れた。

「……」

「まさかさっきの突風が剣をただ跳ね返すだけの技だったと思ったのか」

 あの突風に紛れエウロスは鎌鼬を起こしセレーネの上腕を斬ったのだ。

「分かっただろ? 本気でやれば首も落ちるということが」

 だが、セレーネがそれで退くことはなかった。

「退いてはくれんか」

 エウロスはため息をつくと、ようやく本気になった。

 エウロスの纏うサイコキネシスが数段と上がり、その周辺の空気が重くなった。

 その時だった。

〘緊急!緊急! テロス艦隊突如出現。また、西、南、北門が敵兵によって開かれました!〙

「なんだと!」

「やる気を出したところ申し訳ないがエウロス大臣、我々を中に入れた時点でこの国の防御は破られたも同じ。どこの国にもある話しだ。外より内側からの攻撃には弱い」

「最初からそれが狙いだったのか!?」

「勝ち目はないぞエウロス」

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