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カイリーと緑のトンネル  作者: アズ
第1章 百年後の新時代(ディストピア)
14/51

戦闘訓練

 あれから半年。



 婆さんとカイリーは対面した。サイコキネシスを纏い、合図を待つ。審判を請け負ったレインが手をあげたまま両者を見た。それから勢いよく腕を振り下ろすと同時に「始め!」と合図した。

 先に動いたのは婆さんだった。手からサイコキネシスを放つ。だが、カイリーの周りをオーラのように纏ったサイコキネシスがそれを防いだ。すると、婆さんは床を蹴る刹那にサイコキネシスを放ち、その爆発的な瞬発力で一気に距離を詰めると、サイコキネシスを纏った拳が振り下ろされた。カイリーはそれをサイコキネシスで纏った腕でガードする。サイコキネシス同士の衝突が起き、衝撃波が巻き起こった。更に攻撃をやめない婆さんは拳、蹴り、ガードを瞬時に繰り出してきた。カイリーも負けじと格闘する。

「凄いカイリー! ほぼ互角だ」と見学していたボニーは言った。だが、レインは「いや」と否定する。

「カイリーの方が威力が上だ。婆さんの攻撃はちゃんと防がれてるけど、逆にカイリーの攻撃に婆さんは若干苦しそうだ。威力を完全に防ぎきれてないんだ。体力的な問題もあるとは思うけど」と答えた。

 すると、婆さんは一度床を蹴り後方に飛んで距離をとった。

「アポート」

 婆さんがそう唱えると、婆さんの右手に突然銃が現れた。

「少しは本気でいこうか」

「物体を取り寄せた!?」

「そう言えばこれは教えてなかったね。これもサイコキネシスの応用技だよ」

 そう言って銃口をカイリーに向けた。それを見てレインが慌てた。

「本気で撃つ気じゃないだろうな」

 だが、カイリーは冷静だった。そして…… 。

「アポート」

 カイリーはなんと婆さんと同じく唱えた。すると、婆さんの手にあった銃が消えてカイリーの手元に銃が現れた。

「まさか一回見ただけで出来るとは!?」

「この銃に銃弾が入っていなかったね」

「……透視か。随分上達したじゃないか。もう教えることもないな」

「銃弾ならアポートする時に一緒に装填しといた」

「!?」

「銃弾の保管場所は透視で分かった」

「アポート!」

 婆さんはそう唱えた。だが、カイリーはサイコキネシスで婆さんのアポートを防いだ。

 カイリーは銃の安全装置を解除した。

「……降参だ」

 それを聞いたレインは「勝負あり! カイリーの勝ち!」と宣言した。

 カイリーは安全装置を戻し、弾倉を外して二つとも婆さんに返した。

「もし、エネルゲイアを使用したら私負けてた?」

「あれ程上達したサイコキネシスならそれも防げただろうね」

 サイコキネシスを鍛え使いこなせれば、エネルゲイアは勝手に目覚め、また上達するという。実際、私とレインはエネルゲイアを目覚めさせた。レインは隠すつもりはないらしくパイロキネシスの特訓を始めている。最初はマッチの火ぐらいしか出せなかったものが徐々にライター並、ガスバーナーぐらい、そして野球ボールサイズの火を作り出せるようになっていた。火のかたちを自在に変えたりもでき、あとは火力をもっとあげれるようになるのが当面の目標となった。

 ボニーはというと、テレパシーが上達し、更にテレパシーの応用技で相手のプシュケーを乱したり洗脳術の特訓を始めている。

 メアリーはまだエネルゲイアに目覚めているのか隠しているのか不明だった。

「私考えたんだけどアポートの応用技ってテレポーテーションじゃない?」

「そうか!? だから婆さんはいつも一瞬で消えてるのか」とレインは言った。

 皆が婆さんを見ると素直に「そうさ」と答えた。

「そして、全員がこの部屋を出ることが出来たらはれて全員修行卒業というわけだ」




◇◆◇◆◇




 その日の修行が終わり、婆さんは寝室に戻った。そこへドアにノックがかかる。

「どうぞ」

 ドアが開き入ってきたのはカイリーだった。

「どうした」

「透視の件で一つ」

「……」

「当然お婆さんもその透視が使えるんだよね? だとしたらもう気づいていると思うんだ。私達の腕にある印に」

「あぁ、その通りだ。最初にお前さん達と会った時から気づいていたよ。まさか人間が能力も無しにテロスから逃げ出し五体満足でここまでやって来た。興味が湧いたよ。しかも、悪霊に取り憑かれているときた」

 そう言って婆さんは大笑いした。

「ならどうして」

「お前さん達が隠していることは分かっていたし、だから私からも言わないでおいたのさ。だが、バレたらのならもう気遣いもいらないね」

 そう言うとカイリーに近づきそれからいきなり焼印のある腕を掴んだ。カイリーは抵抗しなかった。婆さんを信じることにしたからだ。婆さんは黙ってサイコキネシスを送った。それは暫く続いた。特に痛みはない。むしろ、なんだか優しい感じがして不思議な感覚だった。

「終わったよ」

 婆さんは手を離した。私は裾を捲った。すると、テロスにやられた焼印が消えていた!

「嘘っ!?」

「これがヒーリングの力。サイコキネシスの一番難しい技だ。これを使える者はそういない。だから、軍でヒーリングを使う衛生兵は全員階級は少佐以上だ。それを使えるだけでどこでも優遇される」

「それじゃお婆さんはどうなんですか?」

「私か? 私は昔なら錬金術士とヒーリングでそれなりに引っ張りだこだったさ。でも老いた。今は隠居生活さ」

「何かあったの?」

「秘密」




◇◆◇◆◇




 翌日。その日は午前中からエリア1~3は物々しい雰囲気の警備が厳重に敷いていた。というのも数日以内に80年ぶりの三カ国の対面式の外交がこの国で行われることとなったからだ。それまではリモートでの会談ぐらいだったのだ。

 その80年ぶりに行うこととなったきっかけは議題にあるテロス国内での襲撃事件。当初は種族間の争いを狙った人間側の罠ではないかという憶測があったが、ロボット施設の襲撃事件以降の半年間も幾つかの軍事施設が狙われ被害にあったこと、そしてどの施設でも襲撃が起こる前に青い蛇を見たという目撃情報が幾つもあったこと、そしてその青い蛇は現在も施設周辺を含め確認がとれていないことから、その青い蛇を見たというのは集団催眠にかかった者が見たものではないかと推測された。つまり、能力が使用された可能性が高いと判断され、そうなると人間以外の種族の可能性も捨てきれなくなる。それによりテロスばかりを意図的に狙われ続ける不満も国民は感じていることからテロス国内ではヒュレーやエイドスに対し差別が起きていた。そこでどうにかするべく、80年ぶりの対面となったのだ。というのも、エイドスもヒュレーもテロスで起きている事件に対して関心があったからだ。

 そして、そのニュースはカイリー達にも新聞で知った。

「まさか、あの事件がそこまで話しが広がってたなんてな」とレインは驚いていた。

「確かに、あの蛇の異常発生から既におかしかった」と私は言う。

 でも、能力という存在を知らなければ本物だと間違えてもおかしくはない。

「これから世の中、どうなっちゃうんだろうね」とレインは言った。それは誰にも分からなかった。

 因みにレイン達三人は婆さんのヒーリングの能力で全員焼印を消してもらっていた。

「連中のことだからまず人間を滅ぼそうとか言うんじゃない?」と私は言った。別に冗談で言ったわけでもない。割と本気だった。そして、三人もそう思ってしまうからぐうの音も出なかった。

 だからレインは婆さんに振り向き「ねぇ、何か知らないの?」と訊いた。だが、婆さんは「さぁね」とだけ答えた。

「興味ないの?」

「ないね。お偉いさん同士の話しなんて民には関係のない話しだ。それに狙われてるのは軍の施設であって民じゃない。そこだけはハッキリしている。明らかに戦力を削ぐ為だろう。しかし、本当にそうかな? 最初に襲撃を受けた施設は全壊とはならなかったし、攻撃が中途半端。それに最初に狙う施設としてはもっと他にあった筈だ。最新兵器とかな。これではまるで狙う施設の順番まではあまり考えられていない感じだ。そもそも始まりからおかしい。ロボットを破壊したのをエルフの仕業にするのはいいが、次々と施設を狙うのはエルフの仕業にしようとした最初の企みから外れる。エルフは当然監視された筈だ。しかし、エルフに動きはないし、いくら自然環境でテロスといざこざがあったとはいえ、軍事施設を大胆に狙う根拠としては弱い。全ての作戦行動に一貫性がない。むしろ、世界に混乱を与えるのが狙いか……これは思ったより単純ではないかもしれない」

「そうなの?」とレインは訊いた。

「推測できるのはそこまでだ。さぁ、お前達。修行の続きだ。物騒な世の中になりそうなら尚更身を守るすべを身に着けるんだ!」

「はい」と三人は同時に返事をする。メアリーだけは一人頷いた。

基本はサイコキネシスを鍛えれば鍛える程、技の範囲が広がるが、個人の得意不得意に成長は左右される。また、サイコキネシスのレベルが上がると個のオリジナルであるエネルゲイアの能力が現れたり、レベルが上がったりするので、まず能力者はサイコキネシスから鍛える。


サイコキネシス➡攻防➡アポート➡テレポーテーション

   ⬇     ⬇

   ⬇    ヒーリング(超レア)

テレパシー➡催眠術

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