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2回目 本社

 わたしがこの会社に就職して、最初に配属されたのは、本社の営業部だったわ。

 研修を終えて、緊張しながら初出勤。そこで初めて先輩社員だった坂崎に会ったの。

 わたしは彼の下でアシスタントをしながら仕事を覚えていった。つまり、彼は指導員だったのよ。

 もちろんわたしだけじゃない、同期があと三人くらいいたわね。彼らは今も本社でバリバリやってる最前線要員よ。

 でも、他の課に移動したりで最終的に坂崎の下に残ったのはわたしだけだった。

 当時から坂崎はやり手でね、担当していたのは重要な取引先ばかり。

 わたしはそんな彼の下で、重要サポート要員として頭角を現していったの。

 自慢とか自意識過剰じゃないわよ。

 営業職って外回り以外にも手間がかかる雑務が結構あるわよね。経理関係の提出書類なんてすごく小うるさい場合が多いし。

 そういうのをなるべく引き受けて、坂崎の仕事がスムーズに進むようありとあらゆるフォローをしたの。プレゼンに必要な資料を作って、課全体の状況チェックも共有できるよう気を廻して。

 その内、取引先との細々した折衝も引き受けて、まだ半人前の女子社員にできることは、なんでもやった。

 おかげで自分自身が営業に出れるようになる頃には、仕事に必要なものがなんなのか、よーくわかるようになっていたのは、ありがたかったわね。

 坂崎は、わたしがいるのといないのでは仕事の進みが全然違うって、手放しで褒めてくれた。

 あれは本当に、うれしかったなぁ。

 過去を吹っ切るつもりで仕事に邁進してたけど、それだけじゃない、やりがいと満足感を味わってたの。


 そんなこんなで一年が過ぎた頃。

 御子神社長――いえ、当時はまだ専務だったわ――御子神専務が、とある大掛かりな案件(プロジェクト)を発起して、坂崎は実働部隊のチーフに抜擢されたの。

 わたしもその企画に参加したわ。

 ええそうよ。御子神専務を社長に押し上げた、あのプロジェクトよ。今や我が社の大きな柱になってるわよね。

 でも、始まった当初は果たしてうまくいくかどうか、はっきり言って賭けだった。

 大掛かりな技術開発も必要だったから、経費もそりゃあ莫大だったし。コケてたら社長就任どころかクビだったかもね。

 坂崎も他のメンバーも、もう必死で動き回ったわ。毎日のように喧嘩一歩手前のミーティングが行われて、外回りで何足靴がダメになったか知れやしない。

 データ収集でパソコンがフリーズした時の騒ぎと言ったら、地獄もかくやよ。

 でもその甲斐あってと言うべきかしら、プロジェクトは大成功、御子神専務は社長に就任。そして坂崎チーフは、営業第一課の主任に昇格したわ。

 ええ、文句なしのエリートコースよ。

 新社長の覚えもめでたくて、このままいけば役員確実と言われるほどになったわね。

 あの頃はねぇ、わたしも彼の立身出世が誇らしくて、このチームに抜擢されたこともすごくラッキーって思ってた。

 そしてね。

 プロジェクトが一段落した頃、坂崎に突然プロポーズされたの。

 いや本当にびっくりしたわよ。だって、それまで全然そんな素振り見せなかったんだもの。

 会社でも、たまに行く飲み会でも、本当にただの同僚、後輩扱いで、恋愛事情のれの字も見せなかった――と、思うわ。

 本人曰く、初めて見た時から好みドンピシャだったけれど、素直に口説いたらどう見ても公私混同だからって、なかなか踏ん切りがつかなかったんですって。

 しかも、蓋を開けてみれば、わたしが結構優秀な社員に育っちゃったものだから、ついそっちを優先させたとかなんとか。

 でも、うかうかして他の男に掻っ攫われそうになってきたから、焦っていきなりのプロポーズ。

 なんだかなぁって。

 だってその頃のわたしって、過去の婚約破棄のお陰で新しい恋に飛び込もうなんて気になれなかったところだったもの。

 親しくなった女友達とかに誘われて合コンとかにも参加したけど、どうにもそんな気になれなかったわ。 

 いえ、そういうことじゃなくてね。

 もちろん妹と浮気されてっていうこともショックだったんだけど、実を言うとその後のドタバタのほうがトラウマだったの。

 妹が家を出た後、事情は大学は元より、親戚や友達やご近所さんにまで広がって、あっちこっちでヒソヒソやられたのが辛くて。

 大学を卒業して家を出るまでの2年間は、本当に地獄だったわ。

 特に大学の同期生に意地の悪い人がいてね、わたしの方になにか問題があったから妹に走ったんだろう、なんてあることないこと言いふらすんだもの。

 なまじ、洋二って研究室でも優秀な学生として人気があったから、そういう悪意も寄せられたって言うか。

 だから新しい恋愛したり、ましてや結婚したい、なんて到底思えなかった。

 後継ぎ娘の責任からは逃れたんだから、この際一生独身でもいいかなって、覚悟を決めかけたところだったのよ。

 そんな所へ、交際をすっ飛ばしてのプロポーズよ。とてもとても、すぐには返事できなかったわ。

 ええまぁ、結局は受け入れたんだけどね。

 金曜日の晩に申し込まれて、OKしたのは週が明けてからだったわ。

 土日の間にそりゃあたっぷりと悩みに悩んで、どうしようどうしようってグルグルしてたんだけど、月曜に彼の顔をみたとたん『お受けします』ってスルッと口から出てきたの。

 その後は怒涛の勢いだったわね。

 双方の家族に通知して一ヵ月の間に顔合わせ、式場や結婚した後に住むマンションを探して。

 え?わたしの家族に会わせた時?――ああ、そうね。

 別に大してごたついたりはなかったわよ。

 実を言えば、早百合と洋二のことはずいぶん前から周知の事実だったの、仕事仲間ほとんどにね。

 いつだったかなぁ、確か夏よ。ビアガーデンか何かで飲み会をした時、わたしの過去を話す機会があってね。

 あまりにもわたしに浮いた話がないものだから、同僚が酔いにまかせて突っ込んできたの。 

 まぁ正直隠し続けるのも気が重くなってた頃だったし、こっちも酔いにまかせてチームのみんなにぶっちゃけちゃったの。

 当然ながら、一瞬ズーンと空気が重くなったわよ。

 でも、その時はちょうど仕事がうまくいったお祝いの席で、しかも程よくみんな酔ってたからね、あっという間に『そんなオトコと切れてラッキーだー!』とか『悪いのはアンタじゃないわよー!』とか、もう別の意味で盛り上がって。

 そういうわけで、妹夫婦のことは承知済みだったの。だから、自宅へ直接訪ねたりはしなかったわ。

 地元にある有名ホテルのロビーで両親と待ち合わせて、そこのレストランで食事して終わりよ。

 早百合と洋二、あと姪っ子と甥っ子に会うのは、結婚式の後でいいって、全員で一致したからね。

 もちろんわたしが坂崎家にご挨拶に行った際には、そんなことはなかったわよ。

 あちらのご両親にも事情は知らせてあったから、まぁ別の意味で緊張したけどね。でも、『大変だったね』で済ませてくれたわ。

 で、無事に婚約が整って、会社の皆にもそれを発表して。予定ではその年の内には結婚式を挙げるはず――だったんだけど。


 ご存知の通り、その婚約も破棄されることになっちゃいました。


 切っ掛け?

 そうねぇ、なにが切っ掛けなのかって改めて思い返すと、ちょっと悩むわね。婚約を皆に発表して以降、あれもこれもみーんな原因の一つって気がするもの。

 でもまぁ敢えて言えば社長かしらね。

 ええ、御子神代表取締役社長のことよ。あの人が無理を通した結果、とも言えるからね。

 いえ、そうじゃないわ。

 確かに坂崎が結婚したのはあの人の娘だけど、別に婚約を破棄するように強要された訳じゃないもの。

 まぁそこに至るまでに色々あったわけで。

 その“色々”の発端が、社長からの指示だったのよ。

 まず最初にね、わたしと坂崎の婚約を直属の上司である営業部長に報告したわけ。

 業務手続としては、妥当でしょう。

 そしたらその知らせが巡り巡って社長まで届いて、御大からお呼び出しがかかったの。

 で、言われたのよ。

「職場結婚は実に良いことだけど、同じ部署でプライベートを持ち込まれると困る、ここは一つ、新見君にはチームを外れてもらって、別の案件を担当してもらえないか」

 ってね。

 さすがに不本意だったわよ。

 そりゃ結婚退職をほのめかされたってわけじゃなかったけど、それまでわたしだって必死に喰らいついてた仕事だったし。

 そしたらね。

「実は、婚約(このこと)がなくても、新見君には是非受けてもらいたい仕事があったんだ。君のユニークで尚且つ適宜な判断力を投入して欲しい案件がある」

 って、言われたの。

 しかもよ。

「この件は他者から見たら、私情を交えた甘さゆえだと言われるかもしれん。だが決してそんなことはない。成功すれば間違いなく我が社と関連会社全てに利益を見込める、ビックプロジェクトなんだ」

 なんて持ち上げられてね。

 そんな美味しい仕事なら、他にも適任者がいるんじゃないか、って聞いたら、色んな要素を鑑みてわたしが一番だって。

 外ならぬ社長にそこまで言われちゃ、そうそう拒否もできなかったわ、わかるでしょう。

 それに、確かにこのまま同一チームにいたんじゃ、なにかと公私混同を疑われるかもって心配もあったし。

 結局、わたしは社長の話を受け入れることにしたのよ。


 それが、社長の娘である茜さんとの仕事だったわ。


 坂崎の奧さん――旧姓、御子神茜さんのことは知ってるかしら?

 ええ、我が社の系列子会社の一つを任されてる女性実業家で、高名なデザイナーよね。

 わたしが初めて会った時、彼女は自分のブランドを立ち上げたばかりだった。

 美術大学卒業してインテリアデザインの道を目指してたんだけど、大学を卒業した際、父親が自分の縁故(コネ)でうちの会社に入れたらしいわ。かなり強引にね。

 で、まぁ。志望とはかなり違う仕事ではあったけど、中々優秀な業績を上げて、コネ入社のお嬢さんって見下してた連中の鼻を明かしたんですって。

 ところがね。

 やっぱり自分の道を行きたいって、親の反対を押し切ってアメリカに渡り、あっちでセンスを磨いて見事にインテリアデザイン――いえ、空間デザイナーの地位を確立して帰国したの。

 御子神社長はその茜さんに、当時建設予定だったリゾートホテルの内装を依頼したんだけど。

 あ、知ってるのね。まぁ有名になったものね、あのホテル。

 そう、茜さんはあのホテルのデザインで賞を取ったの。

 ――そこに行きつくまでの苦労は、半端じゃなかったけどね。

 御子神茜って人は、確かに素晴らしいセンスの持ち主だったわ。彼女のデザインで作り出される空間は、そりゃあもう素晴らしいの一言に尽きるわね。

 でもね、なんて言うのかな。その見事なデザインを、実際に具現化するために必要なスキル、みたいなものが、ごっそり欠けてる人でもあった。

 彼女のデザインを実際にやろうとすると、建物の基礎から造り直さなきゃならないとか、こんな突拍子もない効果を出すためには、未だ実験段階で世に出ていない技術が必要だとか。

 そうでなくても、明らかに予算オーバーでしょうって見積もりを平気で出すし、かと思うと、スタッフに支払うギャラを全く顧みずに仕事を依頼するし。

 もうね、芸術気質がどうのって問題を通り越してたわ。

 技術者の中には、アカネのデザインは紙とパソコン中に有るのが一番無難だ、なんて言う人もいたほどよ。

 要するにね、わたしは茜さんのデザインを実現するための人員として抜擢されたの。

 件のホテルっていうのは、ご存知の通り大型リゾート施設内にある目玉の一つよ。

 宿泊施設に一流レストラン、各種イベントに対応できるホールと、まぁこれでもかと色んな設備があって、そのかなりのデザインを茜さんが手掛けたの。

 ――今思い出しても、良くやれたものだと思うわ。

 どれだけ走り回って頭を下げたか知れやしない。技術者や制作工房の『いくらなんでも無理ですよ』って台詞はもう聞き飽きるくらい聞いたわね。

 救いは社長が娘に甘くて、予算がどれほど嵩んでも許してくれたことかしら。

 でもねぇ、それにだって限界ってものがあってね、社長はともかく、経理関係からの突き上げがすごかったのなんの。なまじ社長がバンバン許可を出すものだから、青くなってたわよ。

 そういう苦労を丸投げして、本人ケロッとしてるものだから、尚更ね…。

 ええ、もう胃腸薬が手離せなかったわよ。

 そんな状況で結婚準備なんて出来るわけないじゃない。

 しかもね、その頃坂崎の方も仕事が煮詰まってたみたいなのよ。わたしが移動になった後、取引先の一つがゴネだしたらしいの。

 その会社ことはわたしもよく知ってたから、さもありなんと思ったわ。

 プロジェクトの中でも重要な仕事を任せてる下請けの関連なんだけど、そこの社長って言うのがこだわりの強い人で、気に入らないことがあると、もうすっごく臍を曲げると言うかなんと言うか…。

 え?ああ、そうなのよ。

 わたしがチームにいた頃、その会社との折衝を担当してたことがあるわ。社長の機嫌を取って仕事を進めさせることが最重要任務だった。

 あの社長は確かに面倒な人だけど、それは仕事に厳しいってことでもあるから、決して理不尽じゃないのよ。その辺りをきっちり抑えて、筋の通る提案を出せば、ちゃんと応えてくれるの。

 だから、仕事は一旦任せることができればすごく安心できた。

 そういうのって、とても重要でしょう。

 なのに、その社長のご機嫌を損ねるなんて。

 で、まぁ。

 わたしと坂崎は、結婚の延期をせざるを得なかったのよ。


 それが、良くなかったのかしら。


 わたしは仕事では茜さんと組んで、プライベートでは坂崎と付き合ってたわけだけど、いつの間にやら茜さんと坂崎が近づいてたの。

 ううん、そうじゃないわ。

 坂崎と茜さんはね、元々知り合いだったの。ほら、言ったじゃない、茜さんは元々うちの会社に入社してたって。

 坂崎とは同期だったのよ。

 一緒に新人研修を受けて、同じ指導員について仕事を覚えて行ったんですって。

 その後、配属先こそ違ったけど、なにかと張り合うような仲で――まぁライバル関係だったみたい。

 ええ、決して私情なんて絡むような仲じゃなかった…らしいんだけど。

 人間関係なんて、なにがどうなるかわかんないものよね。

 あれはホテルの仕事がようやく一段落してホッとした頃だったわ。

 力が抜けたのが原因なのか、季節の変わり目のせいか、わたし体調を崩して寝込んじゃったのね。

 ただの風邪だったんだけど、大分疲れがたまっていたんだと思う。結構な高熱が出て、丸っと一週間近く仕事を休む羽目になってね。その間、坂崎が代わりに茜さんのサポートをしてくれたのよ。

 まぁ難しい業務はほぼ終わってたし、会社と茜さんの仲介ができる人なら誰でもOKではあったんだけど。

 今にして思えば、そんな後始末的な仕事を、選りによって主任の坂崎が請け負ったってところが、ねぇ。

 わたしの見舞いに来た彼が、『婚約者殿のサポートも仕事の内だ。後は任せておけ』なんて軽く言ったのも笑っちゃうわよ。

 熱が下がって久しぶりに出社したら、いきなり社長室に呼ばれたの。

 そこには社長だけじゃなく、罰の悪そうな顔の坂崎と茜さん。そして、弁護士バッジを付けたおじさまが雁首揃えて待ち構えててね。

 ま、そう言うことよ。 

 わたしが熱でうんうん言ってる間に、あの二人はデキちゃってたってわけだ。

 弁護士のおじさまは、賠償がどうたらとか慰謝料はこのくらいでこうたらとか、現実を受け入れかねているわたしに対して、そりゃもうビジネスライクなオハナシをポンポン出してくださってねぇ。

 すごく卑怯だと思わない?

 悲しいには違いないけど、せめて本人が『実は、すまない』って正面から言って謝ってくれたなら、あそこまで情けない思いはせずに済んだと思うの。

 その時わたしがどんな顔をしてたのか――鏡がなくて良かったわよ、本当。

 弁護士さんの話をぶった切って、坂崎の顔面に一発喰らわせてやったわ。

 平手ですって?そんな甘っちょろいモノで済むわけないでしょう。拳を鼻っ面に叩き込んだわよ。

 で、ボーゼンとしてる社長父娘と顎が外れそうになってる弁護士さんに向かって言ってやったの。

「そちらは傷害、こちらは婚約不履行で告訴し合いましょう。茜さん――御子神さんからの謝罪は受け付けるつもりはないので、悪しからず」

 ってね。

 なんて言うか、もう無くすものは何もない、どんな泥仕合だろうとやって見せようじゃない!って気持ちだったわ。

 もっともわたし程度の非力なパンチじゃ、大したダメージにはならなかっただろうけど。

 結論から言うと、告訴は無しになって、わたしと坂崎は婚約を破棄したわ。

 なにしろ殴られた本人が、『悪いのは自分です。彼女に非はありません』って言って土下座するんだもの。

 豪勢な社長室のフカフカ絨毯の上で土下座するスーツの男って、一種異様な光景だったわ。

 

 その後のドタバタは端折(はしょ)るわね。


 わたしは茜さんの仕事を降りて、本社からも出ることになったわ。

 それこそ社長の強権でね。

 いっそ退職しようかと思ったんだけど、当時の上司だった営業課長に引き止められたの。

 どう見ても悪いのはあちらで、娘可愛さに無理を通した社長にも非がある。この状況で退社されたら、今のご時世どんな悪評が立ってもおかしくない。ここは一つ、怒りを抑えて会社に残ってもらえないだろうか。

 ってね。

 虫のいい話だと思ったわ。

 正直、そんなの蹴っ飛ばして転職してやろうとした。

 でも、課長がそりゃあもう必死残留してくれって頼むものだから、とうとうあきらめて転勤を受け入れたの。

 え、なんでそんなことになってたかって?

 うーん、そうねぇ。まぁもう知らせても大丈夫かな。

 わたしもずいぶん後になってから知った話なんだけどね、その頃御子神社長の立場って、ちょっと危なかったらしいのよ。

 強気な仕事のやり方で昇りつめてた人だったから、社長に就任した後も結構敵がいたのよね。

 あ、さすがにその辺は知ってるのね。

 そう、元々専務の御子神派と常務の長峰派で対立してたじゃない。

 例のプロジェクトのことだって、あまりにも冒険すぎるって反対意見が出てたみたいだし、ましてや前衛的すぎる娘の仕事を強行するのは公私混同も甚だしい、社長としていかがなものかってね。

 で、更には娘のために、婚約破棄の全面プッシュよ。

 まだ既婚じゃなかったとは言え、どう考えても不品行よね。

 これで被害者のわたしが後足で砂かけて退社した日には、下手したら株価にも影響が出る騒ぎになりかねないってことだったわけ。

  

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