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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第99話 少女VSストーカー男

 レベッカとの一件が終わり、時刻は18時になっていた。 

まず、学園の方に無断で授業を休んだとことを謝罪しに行く。10分ほど説教され、休む場合は事前に報告するように念を押さたところで終了。

 次に研究所へ謝罪に向かう。ここ2週間は外での調査が多かったのと、トマスさんが事情を察してくれたからか、こちらでのお叱りはなかった。

 少し調査をまとめた報告書を書いて仕事が終える。そのまま食堂へ行くかと思いきやエケニス家のドア前に来ていた。

 凡太はレベッカにすべてを話し終えた後、仕事が終わったら家に来るように脅されていた。一体どんな仕打ちが待っているのか恐怖しながらチャイムを鳴らす。


「どうもー、ストーカー男です。襲いに来ましたー」

「おかえりなさい。ご飯もできているので食べてください」

(ドン引きされるどころか招かれているんだけど…)


 ストーカージョークにより、問題児判定され、無視か通報を期待していた凡太は面食らう。そのまま手を握られ家の中に引っ張られるように入っていき、椅子に座らされる。


「いただきます!」

「い、いただきます」


今朝のように強制的に食事に参加させられる。食事の方は相変わらず食べる側に向けられた気遣いで溢れた品になっていた。凡太がせめてもの足掻きで食べ終えた食器を洗い場に運んで洗おうとした瞬間、それらがレベッカの手によって運ばれ不発に終わる。何もさせてもらえない男はただただ、精神的苦痛を味わうしかなかった。


ひと段落し、レベッカが本題に入る。

 

「母が戻るまで不安なのでここで暮らしてくれませんか?」

「へ?」(どういう魂胆だ?)

「だめですか?」


 少しの沈黙。

 少女とおっさんの組み合わせは社会的にまずすぎるので、断りたかったが、自分がマリアを入院させる原因をつくったと認識していた為、断れなかった。こうなれば自棄になるしかない。敬語を崩し、苦し紛れにこう返す。


「いいよ。ただ、おじちゃんは、かなりの変態さんだから寝込みを襲うかもしれないよ。今夜は注意して寝なよ…ぐへへへ!」

「ありがとうございます、よろしくお願いします」


 渾身の激キモアピールがなかったかのようにスルーされ、丁寧に頭を下げられる始末。ドン引きさせようと思った側が、ドン引きさせられるという奇怪な事態が発生し、状況は混沌としていた。


 レベッカの魂胆について。仮にも気遣い聖人のマリアに育てられた人間である。そんな彼女が恩人に対して何もしないで日々をすごせるわけがない。恩を売られたら返す。彼女も凡太とマリア側の人間だったのだ。


(この期間中に恩を売れるだけ売ってみせる。最後に勝つのは私よ)


こうして、レベッカの戦いが静かに始まる。



~~~



 各自風呂に入った後、洗濯もので少しもめる。凡太は別々の方が良いと主張するが、レベッカはまとめてやった方が効率的ということで、凡太の主張は無視されたあげく、自分の洗い物まで取り上げられ、洗濯してもらうはめになった。


 就寝の時も少しもめた。レベッカが凡太の隣に布団を敷き始めたからだ。


「さっき夜中に襲うって言ったばかりだよね?」

「尚更都合がいいじゃないですか。隣にいるのでわざわざ移動して襲う手間が省けますよ」

「女の子ならもう少し男性に恐怖しなさい。てか、不安だから一緒に暮らすってことになったのに、その一番の不安要素を隣に置くんじゃないよ」

「スゥー、スゥー」

「寝たふりすんな」


 凡太はこの後も無視され続け、諦めて寝た。


 凡太が寝たことを確認し、狸寝入りを続けていたレベッカが凡太を観察する。



(やっぱり、襲うって言ったのは嘘だったんだ。少し警戒していたのがばかみたい)


 この後、警戒を解いたレベッカも眠りに落ちた。



~~~



 早朝、凡太は日課のトレーニングを終えて帰ってきた。


「おかえりなさい」

「ただいまー」


 シャワーを浴びて、椅子に座る。当たり前のように用意された料理を前に手を合わせる


「「いただきます」」


 3回目となると揃うものだ。こうして気遣いがたっぷりつまったいつもの料理を堪能し、学園に向かう前に凡太がサイドバックの中から大量の本を取り出す。

 

「これ、どうしたんですか?」

「研究所で余っていた本。よかったらあげるよ。いらないやつは捨てていいからね」

「ありがとうございます。生物学や強化学…私の好きなジャンルばかりだ!」


 レベッカが目を輝かせる。


「それにこの本も図書館でみたことない…。これも…、これもだ!」


 手に取るすべての本が未読だったらしい。本好きからすればうれしいことだ。


「じゃーそろそろいくね」


凡太はレベッカに手を振り、家を出る。レベッカは本を見定めるのに夢中で聞こえていなかった。



家を出て路地裏に来たところでガッツポーズする。

 

(喜んでくれたみたいでよかったぁ。徹夜で探し回った甲斐があったってもんだ)


昨夜凡太は狸寝入りをしていた。レベッカが寝た後、部屋の本棚を見る。レベッカが本好きであることは知っていたので、そこから本人の好きなジャンルや傾向を分析する為だ。分析後は研究所に向かい、他の研究員の人に頭を下げて、レベッカの気に入りそうな本を譲ってもらったり、買い取ったりして回った。その後、図書館にコネを使って入れてもらい(図書館の警備員も騎士団員)、先程集めた本の中で図書館にあったものを省いていった。こうして残った本が、今朝レベッカに渡された。


(甘かったな、レベッカ。俺と恩売り合戦をして勝とうなんて10年早いよ)


 恩を売ることを優先する者同士で通じるものがあったのか、レベッカの魂胆は凡太に看破されていた。しかも、看破するだけでは飽き足らず、反撃に転じてみせた。恩売り合戦が始まってまだ1日も経たぬ内に繰り広げられる恩売りの応酬。今後はより壮絶なものになっていくことだろう。

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