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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第95話 卑怯なヒーロー

 精神的に余裕がない時は傍で支えてくれる人間が必要だ。

 仕事事情は解決できそうではあったが、そちらの環境が整うまでにマリアの精神と体力が持つか分からない。早急にマリアの過労を軽減する必要があった。見ず知らずの人間がいきなり休むように懇願しても聞いてくれないので、信頼関係がある程度いる。短期間で信頼関係を築くにはどうすればよいだろうか?

 ふと昔見ていたドラマの悪役がチンピラ数人を雇って女性を襲っているところを助けるシーンを思い出す。自作自演の狡い手だが、他にすぐに信頼関係を築ける方法は浮かばなかったのでこれにすることに。

 チンピラ役は誰にやってもらおうか悩んでいると騎士団員が凡太との試合の予約にやってくる。ダメもとで事情を話してチンピラ役を頼むと、なぜか快く引き受けてくれた。接待試合の効果だろうか?

 自作自演のヒーロー作戦は、今夜23時頃、彼女の帰路で実行予定だ。


時刻は23時。

マリアはいつも通り、近道で路地裏の薄暗いところを一人で歩く。ここを抜ければアパートに到着する。ところが、今日はいつも通りではない。道奥にガラの悪いチンピラが3人いたのだ。慌てて引き返そうとするマリアだが、チンピラにからまれる。


「女が一人でこんなところに居たら危ないよぉ。俺達が安全な場所に案内してやるよ」


 そう言って、チンピラの一人がヘラヘラしながらマリアの手を掴む。マリアが逃げようともがいている内に残りの2人に囲まれる。


「さぁさぁ一緒に行こうぜぇ」


 マリアが観念し、諦めかけたその時――


「やめろ!」


スーツ・ネクタイ姿の凡太が登場する。


「誰だてめぇは?」

「誰だっていいだろ?それより、その人を放せ」

(ん?予定では2人だったはずなのに1人増やしたのかな?)


予定人数と違うチンピラの数に困惑しつつも、役を全うする為、チンピラに殴りかかる。顔面に凡太の軽めのパンチが当たる。予定では、殴られたチンピラ役がその威力にわざとビビッて全員退却する流れだった。

しかし、チンピラはひかなかった。それどころか凡太に殴りかかってきたのだ。最初はこれも演出ととらえた凡太であったが、マリアの怯える顔をみて我に返る。


(こいつらは本物のチンピラだ)


暗くて分かりにくかったが、近くで見た顔が見知らぬ人物だったことから確信した。


(逃げるにしても、高速移動を使えるのであれば逃げきれない。俺ができるのは時間稼ぎだけで倒すことができない。つまり、エケニスさんを護ることができない…)

 

 凡太はこの王国での人物がすべて自分に手加減するような実力者だと認識している為、自分の方が圧倒的に弱いと思っている。だからこそ、足掻くことしか浮かばないのだ。

 

(俺が標的にされている内はまだいい。気が変わってエケニスさんを襲い始めた場合は対処ができない)


 殴られながらも必死に解決策を練る。そして――


(だったら、エケニスさんに襲わせればいい)


どういうことだろうか?


その答えを示すべく、凡太が口を開く。


「体魔変換・開」「体魔変換・全開!」


 凡太が全力モードになり、20秒間全魔力をマリアへの強化魔法として消費する。

 襲わせるということは、マリアを圧倒的に強化することでチンピラをボコボコにすることだった。

20秒経過、凡太が気絶する。“全開”は魔法の効力が詠唱者の気絶後も10分は継続するのでそれだけ時間があれば充分だろう。ところが、マリアは動かない。確かに肉体は強化されたが、精神は強化されておらず、恐怖ですくんでいたのだ。これでは、折角の10分が無駄になってしまう。


チンピラは、凡太が気絶したことで、標的をマリアに変えてゾロゾロと再び囲む。マリアは恐怖状態。マリアが受け身のまま10分が経過するように思われたその時――


「ニゲタイ…コワイ…カエリタイ…」


 凡太の本能が目覚める。

突然立ち上がったことに驚くチンピラ達だったが、すぐに殴り掛かる。パンチが凡太の顔面に当たり吹き飛ばされる。いつもならかわせたはずだが、今回は先程のチンピラ達によるリンチで足を怪我していて、うまく回避できない状態だったのだ。

そのまま立てないまま、3人の足蹴りをくらう。何分か蹴り続けられ、ようやく凡太が静かになる。3人がマリアの方を向き歩こうとすると、凡太が2人の片足を掴む。


「なんだよ、ひつけぇーな!」


 再び足蹴りされ続ける。


その様子を恐怖しながら見ていたマリアは思う。


(なんであの人は、あの状態で自分より強い人に歯向かえるの?)


 職場での社長のパワハラを受けていたマリアは、強者と認識した人物が自分の前に現れると恐怖で動けなくなるようになった。今回のチンピラにも同じものを感じていた。


(あの人は私を助けに来てくれたのに、私のせいで死んでしまう)


 強者に怯えて恐怖し続ける日々と、助けに来た人を見殺しにして過ごす後悔の日々を天秤にかける。出した答えは――


(見殺しにした方が辛いに決まっている!)


 決心し、チンピラ達に反撃を仕掛けに行くマリアだったが、攻撃をしたことが人生で一度もなかったので困惑。とりあえず、がむしゃらにグルグルと両腕を回転させながら、チンピラに特攻する。その回転は音速を超える。それにより発生した高威力の連続空気弾がチンピラ3人を襲う。


「なんだこ――」


台詞を言い終える間もなく、遥か後方に吹き飛ばされる3人。

 ここに、(時間制限付き)最強のシングルマザーが誕生した。



 数分後、団員が路地裏に慌てて到着。マリアと凡太の到着が遅かったことで自分達が集合場所を間違えていたことに気がついたのだ。しかし、すでに誰もおらず、何の変哲もない様子。強いて言うなら、遠くの壁に3人のチンピラがめり込んでいるくらいだ。

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