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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第91話 校内ランキング戦

 ブレント学園では校内ランキングがあり、順位は週に1回のランキング戦での勝率で決まる。実力差を考慮し、特待クラスと普通クラスは分けられている。

ルールとして殺すのは禁止で相手が降参宣言するか、ダウン(地面に10秒以上倒れる事)、気絶すれば勝ちとなる。制限時間は30分で、経過すると両者の傷量に差があっても自動的に引き分けとなる。武器の持ち込みは剣のみ可。強化札の使用は不可だが、強化魔法の使用は許可されている。ただし、試合前に使う事は禁止で、鎧や盾など防御力が上がる装備も禁止されている。

 なお、特待クラスの人数は凡太を含めて50人。新入生の凡太と包帯男は50位からのスタートだ。

 

今日はランキング戦の日。凡太の相手はデン・ガーシェという茶髪天パのギリシャ人っぽい顔立ちの中肉中背の男だ。歳は20。双子であり、ドン・ガーシェは彼の兄。順位はデンが5位、ドンが4位とどちらも高順位だ。特待クラスでの高順位ということでかなりの実力者であることがうかがえる。


凡太はこの王国に来て以来、戦闘でつねに手加減をされていた。新天地では周りの人物が今まで以上に強くなる。これはバトル漫画でよくあるインフレ現象だった為、凡太が驚くことはなかったが、現実を見せつけられ落ち込んでいた。血の滲むような修行をつみ、ようやく平行線に立ったと思ったら、新天地でいきなり線からはじき出されれば、そのような気持ちにもなるだろう。こうして、憂鬱な気持ちでランキング戦会場である闘技場に向かう。

闘技場はサムウライ村のものと類似していて四角型だった。観客席で初戦の36位と45位の試合を観戦する。どちらも相手の出方をうかがっているらしく、高速移動の速さが凡太でも捉えることができるレベルだった。抜刀の速さも団長や包帯男と比べると遅かったので、体力温存しているのだろう。試合は両者が温存を維持したまま引き分けで終了した。


(これが特待クラスの戦い方…)


 勝利が確実だと判断できるまで徹底的に待つスタイル。無理に勝ちにいかないので、隙が生まれることはありえず、非常に堅調で戦い辛い。


(戦術を突き詰めていくとこうなるのか)


 凡太はこのクラスの戦術に感心する。そして、自身の勝率の低さを悟る。分析時に凡太の実力のなさが露呈すれば瞬殺されるということ。足掻けるだけ足掻きたい身としては、できるだけ瞬殺は避けたい。

また、手加減はされたくない。手加減されるということは実力差があり過ぎるという事。手加減されない為には、その実力差をうめる必要がある。

これらの願望をかなえる為、凡太はある決断をする。その決断を胸にしまい自身の試合の番を待機室で待つ。


 60分後、凡太の試合の番になった。闘技場中央に向かう。観客は結構入っており、上位者デンの人気がうかがえた。デンと対峙する凡太。団長や包帯男と同じ雰囲気を感じ、強者であることを確信する。


審判がスーッと息を吸い込む。


「はじめ!」


「体魔変換・開」


 審判の合図と共に凡太の周囲の空気に異変が生じる。体魔変換よりも膨大な魔力生成を一度に行う技で、強者特有の魔力探知能力を刺激する。これに対し、デンは目を見開いたが、それ以上の動きはなかった。静止続行は手加減を表す。一応瞬殺は待逃れたようだ。


(この程度で静止を崩さないことは分かっていたさ。では、これならどうだ!)

  

凡太が一瞬目を瞑り、集中を高め――


「体魔変換・全開!」


グレントン戦のときに見せた20秒間だけ体力から魔力への変換量を数倍にできる技。これが相手に瞬殺されず、手加減されない為に凡太のした決断である。開始早々に自身の全力を見せることは特待クラスでは愚行であったが、この男の生き残る道はこれでしか開けなかった。


(どうせ負けるなら、20秒だけでも足掻き切ってやる!)


 膨大な魔力量が凡太の周りから溢れ、周りの空気がピリつき始める。強者なら反応するレベルであるに違いない。凡太はそう確信し、目を開けてデンの様子を見る。そして絶望した。


(まさか…これほど差があったのか…)


 凡太が全力を出したにも関わらず、デンが静止を続けていた。これは未だに凡太が手加減対象という事で、自分にとっては本気を出すに値しない者であることを証明している。

 凡太の修行により築き上げた自信は全て崩れ去った。もはや何の希望も残されていない。


(こんな人に勝てるわけがない…。この人だけじゃない。特待クラス全員だ。レベルが違い過ぎる…)


凡太は落胆し、“全開”を解いて両膝を地面に着く。そして――


「降参です…」


審判が凡太の敗北宣言を受け取り、


「勝者、デン・ガーシェ!」


 審判の勝者宣言。

観客がどよめいている。おそらく凡太の全力を見たことで、大した事のない実力が露呈したからだろう。それを受け入れながら、心身ともにボロボロの状態で闘技場を後にした。

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