第85話 接待用強化魔法
凡太の発言内の“あれ“を明らかにするべく、サムウライ修行時まで時を遡る。
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レオと凡太が模擬戦中。
「凡太の強化魔法は独特な力強さがあって良いね。すぐに凡太の強化魔法だって気づけるよ」
レオの褒める言葉に、褒められたくない凡太は渋い顔をする。
「もしかして戦闘中に仲間に肉体強化をかけると毎回褒められる感じになるのか?うかつだった…」
「それでよくない?実際褒められるというか、感謝されて当然のことをしているわけだし」
「それでは駄目なんだよ。褒められたり、感謝されるのは気持ち悪いし、魔法をかけられた相手は“せっかく強化魔法をかけてやったんだからちゃんと結果は残せ“みたいな変なプレッシャーを感じるわけだろ?最悪じゃん」
「相変わらず、ひねくれているね…。どこが駄目なのだか、僕には分からないや」
レオの肯定の言葉を無視して、自分の世界に入る凡太。あーではない、こーではないとぶつぶつ言い、数十分間思考し続けてある答えに行き着く。
「強化魔法を使ったことに気づかれないようにすれば良いんだ…」
「は…?」
恒例となった凡太のとんでも発言。それについていけず、理解不能になっているレオ。
ここから相手に悟られない為の強化魔法練習が追加される。
強化魔法の効力を徐々にあげていき気づかせない手法は、2週間ほどでなんなくできるようになった。しかし、これには大きな欠点がある。強敵と戦った場合は、すぐに強力な強化魔法を仲間にかけないといけない為、徐々に上げていく方法では遅すぎるのだ。
強力な強化魔法をかければ、相手にすぐ自分が魔法を使ったことがばれてしまう。どうしようもない問題に頭を抱える凡太であったが、急に閃く。
(だったら、ばれる前に消せばいい)
凡太は強化対象の攻撃の瞬間に強大な魔法をかけて、攻撃の効力が攻撃対象に伝わった瞬間に強化魔法を解く方法を思いつく。早速その練習をすべく、レオに的に対し攻撃する練習をやってもらう。その際に、先程の要素を組み込んだ強化魔法を行う。レオは凡太の訳のわからない練習にも笑顔で付き合う。度量の広さは健在だ。
的にレオの強化された木刀での一振りが炸裂する。
「解くのが遅すぎる。さっきのだとバレバレだよ」
「マジか…。結構解くのを急いだつもりだったけどこれでも駄目か…」
他者への強化魔法練習で攻撃の瞬間に強化することはなんなくできたが、強化魔法を解くタイミングに苦労していた。それもそのはず。魔法をかけられることは知覚認識と類似している為、認知されないようにするには、対象の反射神経を上回るスピードで解かないといけないのだ。
再度的あてを開始。木刀の一振りが的に命中。
「かけられた感覚はなったけど、解くのが速すぎて、強化分の攻撃力が的に乗らなったよ」
「難しすぎる…」
想像以上に難題のようだ。
こうして、悪戦苦闘すること2か月…。
レオの木刀の一撃が的に炸裂。
「かけられた感覚はなし。攻撃も強化分は乗っていたし、よかったよ」
「やったぁ…やっと完成だ」
こうして接待用強化魔法を会得した。
この頃の成功率は50%と確実ではなかったが、コツさえ掴めれば今後の練習で確率は確実に上がっていくことだろう。
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時は現在に戻る。
団長は、気絶した凡太に治療魔法をかける。
「最初から全力で攻撃をしかけていって正解だった。危うく彼に手加減されたまま終わるところだったよ」
「そうですね。彼は身体能力は高くないものの、反応してからの動きが速く、無駄がなかった。私はどれだけ力を出し切ろうと彼に攻撃を当てられるが気がしませんでした」
団長と部下の会話から、団長が一切手加減をしてなったことが判明する。つまり今回の試合は凡太と団長の接待合戦ではなく、凡太の一方的な接待試合だった。
「後半の彼の回避速度の上昇には驚きましたが、それに匹敵する攻撃速度の上昇はお見事でした。それに最後の一撃はもの凄かったです」
「彼に負けまいと無我夢中でやっていたから実力以上の実力を出せたのはたまたまだ。そのたまたまは彼の持つ不思議な力によるものかもしれない」
「不思議な力とは?」
「彼と戦っていると、自然と力が湧いてきて思った以上の力が出せるようになるんだよ。それにいつもより自分の攻撃のキレが増したように感じ、気持ちよく戦闘を行えた。これが攻撃速度や威力の上昇につながったのかもしれないな」
「確かに不思議ですね。能力を引き出す力か…。今度は是非私も戦わせて頂きたいものです」
どうやら凡太の強化魔法の使用には気づいていないようだ。接待試合は無事完了したのである。
気絶した凡太はそのまま使用人に渡され、着替えさせられた後、客部屋のベッドに寝かされる。
次の日の早朝。凡太の目覚めは良く、体も快調だった。
打ち所がよかったからか、団長の治療魔法の効果が覿面だったようだ。そのまま日課の早朝トレーニングに向かう。
トレ中、やたらと団員に話しかけられる。昨日の試合がすでに噂になっているらしく、試合の申し出をしてくる団員も多くいた。凡太は、接待は嫌いではないが、気絶する趣味はないので、この申し出をやんわりとかわし続ける。しかし、こちらの回避技術は向上しておらず、その後試合を何戦も組まれるようになったにはまた別の話だ。




