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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第83話 接待返し

 接待ではいかに相手を気持ちよくさせるかが肝である。試合は相手に勝つことを目的としている為、その目的達成の条件となる相手に攻撃し、ダメージを与えるということが重要。ダメージを与え続けていくことで、確実に目的に近づいて行っている為、充実感が増すからだ。

 また、人は幸福を手に入れた時よりも待っている時の方が幸福を感じやすい。宝くじを買った時や好きな友達と遊びに行く予定をたてている時などにそういう気持ちになると思う。

 よって、試合で相手を気持ちよくするためには、できるだけ長い時間、相手に攻撃を当てられる必要がある。その際に相手の得意な攻撃が見事に当たって大ダメージをくらうようならもっと良い。

だが、いくつか問題がある。

 まず、長い時間相手の攻撃をくらい続けないといけないのでタフさが必要だ。ましてや今回相手はエリート騎士団の団長である。手加減はされているといっても攻撃力は常人以上だ。そんな人の攻撃を普通の人が何発も耐えられるわけがない。

 次に攻撃をくらうタイミングだ。わざわざ相手に当たりにいっては、不自然過ぎてわざと当てられにきていることがばれてしまう。あからさまな接待は場を白けさせる為、相手の気持ちも萎えて、失敗する。そうならない為には、相手の攻撃パターンを事前に察知し、その攻撃が当たる瞬間にこっそりと隙をつくる必要がある。その為には相手の攻撃パターンを分析して最適な攻撃直撃点を目算することと、相手の攻撃への反応をいち早く行って隙をつくり出す行動をすることを試合中に動きながら考えなくてはならないので難しい。相手は団長。手加減中でもそれらを考えながら試合をするのは普通の人なら不可能だ。

 そんな普通の人にとっては無理ゲーな接待試合の様子をみていこう。


(よし。粗方攻撃パターンが分かってきたぞ)


試合開始から20分間回避し続けた凡太が団長の攻撃パターンの分析を完了する。人は自分の作業が全くうまくいかないと、脳がそれ以上思考しても無駄だと諦めて、脳の処理エネルギー節約の為、単調な思考回路に身を任せた行動に移りやすい。この単調な思考回路こそが、今回の分析対象である攻撃パターンだ。


 団長が高速移動し、目の前から消える。凡太の背後に一瞬現れるがこれはフェイントで、今度は目の前に現れ、凡太の胴体に対して左から右への横の一振りを放つ。凡太はそれをしゃがんでかわす。それを読んでいた団長は横振りの勢いを殺さず、右足に体重を乗せて右回転し、今度はしゃがんだ凡太に当たる様に自身も体勢を低くして二撃目を当てにいく。これまでのパターンならこれも凡太にかわされていた。

 しかし、今回は団長に幸運が訪れる。凡太が何かに足を引っかけよろめいたのだ。こうしてかわせる態勢じゃなった凡太の腹部に二撃目が直撃する。あまりの痛さに激痛の表情と共に腹を抑え、くの字に体を折り曲げて地面をのたうち回る。かなりのダメージを与えた様子だ。団長はそのダメージ量と今まで当たらなかった攻撃が急に当たったことに少し動揺した為、凡太から距離をとる。短く深呼吸し、呼吸を整えて、先程の自身の攻撃を思い返していると凡太がよろめいた場面がピックアップされた。よろめいた時の地面を見てみると、くぼみがあった。さらに周りの地面をみてみると、くぼみが数十箇所以上あった。これは団長が先程のような連撃を行う際に踏み込んだときにできたものだ。団長はこれを見て思った。


(俺の執念が生んだ幸運の一撃という事か)


20分間かわし続けられたが、攻撃を続けたことは無駄じゃなった。その攻撃が布石となり、凡太に見事な一撃を与えられたのだ。

今まで無表情だった団長の口元がようやく少し緩む。

くの字になりながら地面にはりつく男が、団長に気づかれないようにひっそりと、その少しの変化を目視確認する。そして、今まで苦痛の表情で歯を食いしばっていたこの男の口元も少し緩む。数秒緩んだ後は、またすぐに歯をくいしばり、苦痛の表情でよろめきながら立ち上がる。


「くそ、なんて失態だ!あの程度の攻撃をかわせないなんて…。それよりなんであのとき急にこけたんだ?」


 凡太は自分がつまずいた当たりの地面を確認し、くぼみに気づく。


「地面にいくつもくぼみが…。いつの間に…」


 驚いた顔をする。


「まさか…。あの踏み込みのときにできたものか?一見無駄のように思えた、かわし続けられるという行動が、ここにきて有用行動に変化するとは…。大したお方だ」

 

 凡太が団長のこれまで攻撃を続行した根気強さと幸運を心から称賛する。


「いえ、ただのまぐれですよ」


 団長は無表情のまま謙遜しているが、まんざらではない声色だ。


「まぐれな方が凄いのです。幸運はちょっとやそっとの偶然で手にすることはできない。手にすることができるのは努力を続けた人だけなんです。だからあなたに訪れた。幸運を味方につけた相手は非常に厄介です。ここからは私も全力でかわさせてもらいますよ!」

「今まで全力じゃなかったのはショックですが、少し楽しみです。あなたの全力が勝つか、俺の幸運が勝つか…。勝負です!」

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