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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第5章 ラコン王国編
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第81話 結果発表

 学園長と2人の男性教師が凡太の合否判定について会議室で審議していた。

 学園長は160㎝と小柄でやせ型の40代男性。顔は卵のような楕円形で細目。短髪黒髪の73分けで大きな黒ローブを着ている。男性教師二人は50代。どちらもスキンヘッドでメガネをかけており、身長180㎝ほどの標準体格だ。

 

「彼を合格にしたいのですが、いかがですか?」


学園長の決定に男性教師の一人が意見を述べる。


「反対です。彼は魔力なしで身体能力は並以下なので、実戦練習についてこられない…というよりできないでしょう」


魔力や身体能力はいつ測定されたのか?

答えは門をくぐった時である。

門の地面には測定装置が埋め込まれており、地面を踏んだ者の魔力・体力(身体能力+気力)の数値を測定できる。学園に入った瞬間から合否選定が開始されていたということだ。


 学園長が男性教師に返答する。


「実戦練習は数をこなし、慣れていけばついていくことは充分可能でしょう。それよりも、彼は魔力こそないですが、気力は測定不能でした。これは興味深い人材ではないですか?あと身体能力こそ低いですが、体の筋肉のつき方や古傷の状態から努力の痕跡を窺え、強い意志と高い意欲が窺えました。以上のことから合格とするに相応しいと思いますが、いかがでしょう?」

「彼が適した人材であることは認めます。しかし、特待クラスですよ?他の生徒との差があり過ぎる。強い劣等感をいだき、孤立して意欲が急激に低下することが考えられます。そうなれば、彼の成長性を潰してしまう危険性があるので、良くないと思います」

「彼はそれほど柔ではありません。その程度の事で失速はしないでしょう」

「それはどうしてですか?」


教師の疑問に、やれやれといった表情で学園長が質問に質問で答える。


「あなた方はあの試験を魔法無しでクリアできますか?」


二人とも手をあげられない。魔法無しであの試験をクリアすることは不可能だと認識しているからだ。その中でクリアするには、常軌を逸した精神力が必要となる。それは周りの劣悪な環境程度では決して折れることのない意思がある事の証明となる。二人はそれに今更ながら気づいたようで、恥ずかしくなって俯いている。その反応見て学園長が言う。


「これが彼を合格とした最たる理由です。納得していただけましたか?」


 二人はそのまま黙って頷き、凡太の合格を承認した。


今回の線関連の負荷設計はすべて学園長が担当していた。そもそもダミー試験の為、受験者の慢心を誘う魔法さえ使えれば誰でもクリアできる簡単なものにしていた。

 線に関しては遊び感覚で設計していた。今まで魔法が使えない人物に一度も会ったことがなかった為、わざわざ的に近づいていくという行動は誰もしないと思って適当に考えていたからだ。学園長は、遊ぶならとことん遊ぶ派だったので、どうせなら誰もクリアできないような設計が良いと考えた。こうして、自分が最悪だと思う精神負荷妄想がたっぷり込められたデスラインが完成した。


学園長が考え込む。


すべての線を越えて的に一撃を入れるのは絶対不可能。これまで、数十人が線に挑んだことがあったが、進めて赤線を越えたところまでで、紫線にたどり着いた者は今まで一度も見たことがなかった。


 その不可能を可能にしてしまった人物は、魔力がなく、身体能力も低いし、有用スキルも持っていない。学園長はその人物の試験中の様子を振りかえる。


(最低最悪の状況下。彼は誰もが停止するところで前進した。その後はまるでトレーニングをするかのように前進ペースを早めていった。もしかすると、あの悪条件と似たトレーニングを日常的に行っているのでは? それはつまり、彼にとってあの悪条件こそが普通だという事。もしかしたら彼なら私の実験に耐えられるかもしれない)


学園長のモルモットとして高評価を得る凡太。

最低最悪の下には何が待っているのだろうか。



~~~



合格通知をもらった凡太がメアリーの部屋に突入し、ごねていた。


「この通知、間違っていますよ!どういう審査の仕方をしたかは分かりませんが、裏であの試験以外に適切な分析をしていたことは察していました。それにより、私の魔力がないことと身体能力の低さは知れたはずです。それに私は試験中に気絶したのでその時点で不合格ではないでしょうか?」

「君の言う通り、試験以外で適性があるか詮索していたのは事実だよ。その上で学園長達が合格と判断したのだと思う。あと、試験は気絶する前にしっかり的に一撃を入れていたからちゃんとクリアしていたよ」

「そんな馬鹿な…。それでも納得できません!私は――」

「君は合格した。いいね?」

「は、はい…」


 メアリーの王女らしい威圧ある一言により、凡太のゴネは遮られ、それ以上の反論をせき止めた。そして合格を承認せざるを得なくした。


「ここに今来てくれたのは丁度良かった。君の働き場所が決まったから伝えに行こうと思っていたんだ」

「良かった…。配慮ありがとうございます。どのような場所ですか?」

「魔法研究所だよ。そこでは、戦闘に有用な魔法から生活に役立つ魔法まであらゆる種類の魔法を開発・分析している。君は異世界転移ということだから、こちらの世界にない知識を持っているはずでしょ?それで君が適任だと思ったんだ」

「おお…面白そうな職場ですね。適性まで考慮して選んで頂きありがとうございます。いつ頃から働かせてもらえますか?今日からでも構いませんよ」

「意欲的なところ申し訳ないけど、明日で構わないかな?君の上司として適した人物が丁度戻ってくる予定なんだ」

「急かしてすみません。明日でも大丈夫です。私に適した人物とは?」

「昔、学園をトップで合格した優秀な人だよ。事情があって退職していたんだけど、最近その人と会う機会があって、話していたらまた戻って来てくれることになったんだ」

「なるほど。そんな優秀な方だからこそ、私の至らなさを充分カバーしてくれると考えて配置していただいたわけですか。確かに適任ですね」

「そういう意味で適した人物と表現したわけじゃないんだけど…。まぁいいや。とにかく明日からよろしく頼むよ」

「はい!」


 この後、メアリーが父(王)に凡太を紹介しておきたいという事で、一緒に挨拶をしに行った。メアリーの父は60歳過ぎの小柄な姿で白髪。黒ぶちメガネをかけていた。凡太の事をメアリーから既に聞いていたらしく、初対面でも和やかな感じで話しかけてくれた。こちらが萎縮しない様に気さくに話す姿に凡太は『さすが、王様だ』と感心した。

 王様は自分の妻(メアリーの母親)が、10年前に病でなくなっている事も話した。そんな悲しい事を淡々と話したのは、おそらく凡太が「妃様は?」という地雷ワードを踏んでしまう可能性を率先して潰した為だろう。こんな新参者にも気遣いを忘れない王に対し、凡太は『この王様大人過ぎ…素晴らしすぎる…』と心底驚いた。

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