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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第1章 ガンバール村救済編
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第8話 戦の目的

夜。会議用テントにて。


いつもの議会メンバー4人と1人が集まった。今回の議会は凡太がバンガルに無理を言い、開いてもらった。


ある疑念があったからである。


「なぜすぐに滅ぼそうとせず、1週間の有余を与えたのでしょう?」


実力差は明らかで戦った後の結果も明らかなのに、なぜこんな回りくどいことをするのか最初からずっと引っかかっていた。


「俺たちの恐怖する姿をみて楽しむためだろ」


スグニはそう言うが、違うと思った。なぜなら、


「ヤミモトさんやサムウライの人は義理堅い性格だと聞きます。そんな人達が、今まで交流のあった村を攻撃したいと思うでしょうか? 普通なら絶対しないはずです。今回はアークに何か脅されている節がある事はご存じかと思います。そして、アークに必死に抵抗した結果が、この1週間という期間をもたらした。これは彼らの最後の抵抗の証だと思います。そんな彼らを無下に敵だと思えるでしょうか。だから、私はこの戦では味方はもちろん彼らにも傷ついてほしくないです。なぜなら、彼らも味方だからです」


凡太の熱弁が終わったところで、皆静まり返る。各々がサムウライの人たちを敵視していたことを後悔する後ろめたい気持ちになっていることが分かる。


「で、俺達はこれからどうすればいいんだ? 味方に攻撃なんてできないだろ」


解決の糸口が見えずに凡太に丸投げするバンガル。そしてそれに追い打ちをかけるように凡太がさらに意味不明の一言を放つ。


「降伏しましょう」

「はぁ?」


4人が声を揃えた。


「降伏は一時的なものと考えてください。降伏し、配下に加わることで、しばらくは重税や強制労働など酷い扱いを受けるかもしれませんが、サムウライ内部の情報が格段に集めやすくなります。それにアークの行動も監視しやすくなり、脅しネタの原本を見つけやすくなるでしょう」


フムフムと頷く4人。凡太は話を続ける。


「しかし、開始早々いきなり降伏するのも危険で、何か策があるのではと怪しまれて警戒を強められるだけならまだしも、逆上されてボコボコにされる危険性もあります。ですから、できるだけ接戦を演じ、仕方なく降伏せざるを得なくなったとういう状況にする必要があります。そのためになるべく敵の戦力を削る必要があるのですが…」

「俺達にその削り役をやってほしいって事だろ。最近何か村人達が俺に隠している感じがして気になっていた。話の流れ的に、ボンタがあいつらと一緒になって、何か対策を作っているって事だろ?」


(やっぱりバンガルさんに言ってなかったんだ。村の人、サプライズ好きすぎだろ。それとさすがの理解力。できる男との会話はスムーズで気持ち良い)


「はい、そうです。実戦ではどうなるか分からないですが、残りの期間を目一杯使って精度を引き上げていく予定です。あーでも期待しないでくださいね。まだまだぜんぜん精度なんて低いし…やっぱなし!期待ゼロでお願いします!」


 精一杯のハードル下げ。


「期待してるぜ! 何てったって俺達の命を預けるものだからな。しっかりつくってくれよ!」


 しかし、再び上げられるハードル。


(もしかしてさっきよりも上がってないか? 命預けるとか言っているのだけど)


 最後、全員に頭を下げ懇願した。


「サムウライの人々を助けたいんです! こんな無能の言うことを聞くのは癪に障ると思います。正直呆れ切っていると思います。でも、どうしても助けたいんです! 協力してくれませんか?」


長いこと沈黙するかと思いきや即答が返ってきた。


「もちろんするさ。任せとけ」

「ええ、やりましょう」

「そこまで言われたらのぅ、年寄りはこういうのに弱いんじゃ」

「え? 超嫌なんだけ―――」バシッ バンガルの平手打ちが背中にヒット

「ちっ…しょうがない。やるよ…」


「ありがとうございます!」


 この戦に勝利という輝かしい言葉はなくなった。敗北が確定している戦の決行。1日目と状況は変わらないが、敗北の意味が大きく変わった。次に滅びる敗北と次に繋げる敗北。後者を選んだ彼らのやる気は増すばかりだ。



それから、各々自分が今できることを精一杯やり、日々はあっという間に過ぎていった。


そして、今日。いよいよ待ちに待っていない戦当日だ。

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