第78話 入学試験
城の門番に話すと中に入れてくれた。そこから案内人により、メアリーの部屋前まで案内される。
ドアをノックするとメアリーの返事があり、中に入れてもらえた。
部屋内は個室なのに30畳くらいの広さがあるリビング並の部屋で、大きなベッドや対談ようの机や椅子が並んでいた。その椅子にメアリーが座っていた。
「随分急な来訪だね…って腕がある!何があったの?」
「実は――」
凡太は神とのやり取りを一通りメアリーに話した。
「なるほど…。設定ミスの尻拭いの結果というわけだね」
「そういう事です。急な来訪になって、驚かせてしまいすみません…」
「別に気にしてないし大丈夫。それより貴重な願いを転移で消費する君の思考の方に驚いたよ」
そう言って笑うメアリー。
凡太はそんなメアリーの様子を見て、急な出来事が起きても全くぶれずに処理していく王女らしい度量を感じ、尊敬の念をいだく。
「夜も遅いし、今日はこの城に泊まるといいよ。学園には明日行こう」
「ありがとうございます」
メアリーと別れ、案内人に客部屋に案内されてそこで就寝する。
ちなみに客用でも15畳ほどの広さがあり、庶民の凡太にとっては落ち着かなかった。
次の日の朝。凡太はメアリー、レミと一緒に学園に向かう。
学園の名はブレント学園。
特待クラスと普通クラスの2クラスしか存在しない。そこで戦闘技術や学問を学ぶ。クラスの定員指定はない。入学試験に年齢制限はなく、毎日誰でも受け付けている為、人材確保の積極性がうかがえる。特待クラスの入学試験は難関である為、クラスの人数は未だに少ないそうだ。
3mくらいの門をくぐると、ドアサイズの白い看板に “←普通クラス 特待クラス→”と書かれていた。凡太が左に行こうとするとメアリーに止められた。
「君はこっちだよ」
「はい…」
特待クラスの話を聞いた時から嫌な予感がしていた凡太のちょっとした現実逃避が無駄に終わり、3人は特待クラスへ…行くかに思われたが、特待クラスの入学試験会場に来ていた。
「制服を着ないでよかったのはそういうことですか」
凡太はメアリーの顔パスで入学手続きが既に済んでいるものだと思っていた為、学園へは当然制服で行くものだと思っていた。ところが、朝は動きやすい服装に着替えるように言われていただけだった。
凡太は試験受付を済ませ、特待クラスの難関入学試験に挑むことに。
さぞかし嫌そうな顔をしているかと思いきや、嬉しそうだ。
(メアリーさんの顔が立てられなくて申し訳ないが、難関なら落ちても仕方ないよね)
初めから逃げ道が用意されている事で気持ちに余裕が生まれていた。
試験官から試験内容の説明を受ける。
「試験は1つのみ。あの的に攻撃を一撃当てることです。合否結果は後日通知書にて知らせます」
そう言って試験管が300m先に立てかけられた、大きい座布団サイズの四角形の的を指さす。
丁度他の受験者が試験を受けていたので拝見することに。
掌を的に向かって合わせて、手前にあった白いラインから火の攻撃魔法を放つ。
火が見事に的に命中した。
「試験終了です。お疲れさまでした」
試験官にそう伝えられ受験者は帰っていった。
この後も様子見で5人の受験者の試験様子を確認したが、全員が的に魔法を当てて試験クリアしていった。
凡太はこの試験の簡単さをみて、その奥深さに感心する。これだけ試験をクリアしている者が出ているのに合格人数が少ないのであれば、この試験はダミーである可能性がかなり高い。よって、別の合格基準を判断する要素が存在するはず。それを確かめる為、受験者の様子ではなく試験官の目の動きや体の向きを見ていたが、めぼしい要素は見つけられないでいた。
分析に時間をかけるのは待ってくれているメアリー達に申し訳ないので、仕方なく試験を受ける為、的と向き合う。
凡太の念動弾は射程30mが限界なので、白線からだと的へは届かない。
やれやれといった表情の凡太。
そのまま諦めるのかと思いきやメアリーにこんな質問をする。
「あれらの線には当然何か細工がしてあるんですよね?」
「うん。魔法無効化でも無効化できない、とっておきのやつをね」
「そうですか…それを聞いて安心しました」
凡太が質問したのは白線から的まで50m毎に地面にひかれてあった、青・緑・黄・赤・紫色の線について。メアリーの回答から凡太にとって良い意味での“とっておき”ではないだろう。
凡太は白線を跨ぎ、的に向かって歩き始めた。
その様子を見て、他の受験者が嘲る様に言う。
「あいつ、馬鹿か? なぜ魔法を使わない。試験説明用紙の注意事項に“色付き線を跨ぐごとに精神攻撃効果のある呪いが付加されていくから危険”と書いてあるところを読まなかったのか?」
昨日来たばかりの凡太はその紙の存在を知るはずがない。しかし、メアリーは当然この事を知っていた。
教えなかった意図とは…。
凡太ならそんなことを知らなくても試験をクリアすると思ったから?
初めから落とすことが目的だったから?
答えは今、線の先に進みだした男が解き明かしてくれるだろう。




