第76話 無能の消失
戦後の各援軍は…。
サムウライ軍団は戦後1時間ほど休憩してから村に帰っていったそうだ。今回の戦で二重斬空破の練習が不完全燃焼に終わった為、モヤモヤを発散するまで練習に打ち込むそうだ。どうか周辺の地形を変えないようにして頂きたいところだ。
フレイフ王国騎士団は、レオとワレスが兄弟話を軽く済ませた後に王国へ戻っていった。
ラコン王国騎士団は凡太の勧誘後、帰る準備をして王国へ戻っていった。
各軍のお見送りの際、バンガルがお土産にブレドー工房新作の糖質70%オフ菓子ブレドーを3箱分渡していた。各軍喜んでいたが、サムウライ村が特に喜んでいた様だった。昔は毒物の認識だったが、今は村を救った名産品として認識してくれているのだろうか。とにかく食べ過ぎには気をつけてほしいところだ。
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凡太は地獄のような食事後、一人でボーっとしたいと二人に言って別れた後、その辺を散歩し、ガンバール像の前に来ていた。時刻は22時になっていた。
「神様、すみません。今回も生き延びてしまいました」
手を合わせ念じるように言う。
縛りプレイ失敗報告だ。
凡太はレオに勇者覚醒以上の能力向上イベントを期待し、身代わり死に計画をたてていたが、反対にレオの能力すべてを渡され、自分が覚醒させられた。
また一から計画をたてる途方もなさを考え、凡太が疲れた顔をしていると急に像が光り出した。
「お元気ですか?平さん」
像から声が聞こえる急な事象に驚く凡太であったが、声に聞き覚えがあった為、少し安心して返答する。
「お陰様で…。もしかして申請の時にお世話になった神様ですか?」
「そうです。よく覚えていましたね」
「当たり前です。何しろ命を与えてくださった大恩人ですからね。あの時は本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらは適当に選択しただけなのでそこまで恩に思う必要はないですよ」
「いえいえ、そういう訳にはいかないのですよ。私はあの事故で死んでいました。今の私があるのも神様のおかげです。神様にとっては適当に選んだ命でも私にとっては厳選された命なのです。ですから恩に思わせて頂きますし、この恩を何かしらの形で絶対返す所存です」
「分かりました…。ではその恩返し、期待していますよ」
「はい、任せてください!」
神は凡太の恩返しスパイラルに巻き込まれていることに気づき、早急に譲歩した。
気を取り直し、像を使ってまで凡太に話しかけた本題にうつる。
「今回の魔物騒動は我々の製作ミスによるものです。これにより、平さん達が死滅するようなことがあれば、無条件で参戦し魔物を討伐した後に皆さんを蘇生させる予定でしたが、死滅するどころか全員生存でさらには討伐まで代わりにして頂いたので感謝を伝えたかったのです。今回は申し訳ございませんでした。そしてありがとうございました」
像は動かないが神様の声のトーンから、頭を下げている様子が想像できた。
「礼には及びません。というより、私に礼を言うのは間違っています。今回の勝因として、レオとレミさんの連携が大きかったと思っているので、礼は二人に言ってあげてください」
「神があなたを勝因と判断したことに不服ですか?」
「いえ…。出過ぎたことを言ってしまいすみません」
(不服だけど、神様がそう判断したなら何も言えないでしょうが…)
神のマウント取りにひれ伏すしかない凡太。
マウント取りはまだ続く。
「よろしい。ところで…あなたは恩を与えてもらったら返すという考えでしたよね?」
「そうですけど…」
「でしたら、今回の件で我々はあなたに恩をもらった。よって、その恩を返しましょう」
「え…?別にいいですよ!」
「私は神ですよ?」
「す、すみません…」
凡太がマウント殴りを喰らって謝った後、急に肩周辺が光り出す。
見る見るうちに両腕が再生された。
ちなみに神AIはレオの能力をすべて返還した凡太のことを無価値と判断している為、この神の助力に関して罰則はないようだ。
「これは手始めに過ぎません。好きな願いを一つだけ言いなさい。叶えてあげましょう」
(手始めでも充分過ぎるのでこれで結構ですって答えてもさっきと同じ感じになるだろうし…)
「レオ達を強くしてほしいとかでは駄目ですか?」
「駄目です。あなたは魔物を倒した時に自分が得るはずだった願いをレオに使いましたね?あなた自身に対しての願いのみでお願いします。それ以外は受付けません」
(万事急須か…それなら計画を進める為の手段として利用させてもらおうかな)
ヒソヒソと願いを伝える凡太。
その内容に神が呆れる。
「その程度のことでいいのですか?もっと有用な願いの方がよいのでは?」
「いいのです。先程神様は自身に対してと言いましたよね?有用か無用かの指定はしなかった。つまり、この願いが通らないのはおかしいのではないのですかね?」
「ぐ…」
立場が逆転し、今度は自身がマウントを取られることになった神。
仕方なくその願いを受け付ける。
「願いを叶える前に1つだけ忠告を。我々神に対して何やら大きな勘違いをしています。それに早く気づいてください。縛られるのはお互い辛いだけですから」
そう伝えると凡太の体がまた光り出す。
今度は体が活性化するような軽くなる感じだ。
「何をされたのですか…?」
「あなたを10歳若返らせてあげました。なぜそうされたかは察してください。では、願いの方を叶えるとしましょうか」
「全然察することができないんですけど…ちょっと待っ――」
凡太が説明を希望するも虚しくその場から姿を消す。
次の日の朝になっても村に凡太の姿が現れることがなかった。
移民の村だけあって誰も凡太が消えた事に関心がなく、いつも通り生活している。
まるで最初からそんな人間が居なかったかのように。
慣れ親しんだ場所から自分が居なくなっても何も変わらないという現実は、普通の人にとってはショックだが、あの男ならきっと喜ぶだろう。




