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無能おっさんの異世界奮闘記  作者: 成田力太
第4章 神設定な魔物編
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第71話 最弱思考の最強

「あの男の周りの空気が急に重くなった気がする…。どういう事でしょうか?」


先程までは空気よりも軽い存在だった男の急激な重さの増量に驚くグレントン。


「長引けば事態は悪化するとみた…。ならば全力で攻撃し、早急に終わらせる!」


グレントンの猛攻が開始する。

数百の触手が一斉に凡太、レオ、レミの3人を襲う。


ドスッ!ドスッ!


次々と周辺の木や地面に触手が刺さり、粉塵をまき散らしていく。

激しく速い刺傷攻撃の連続。

範囲も広く、範囲内の普通の生物は死を免れない。


「あれをかわしますか…。やはり予想は当たっていたようです」


100m離れた木陰にレオとレミを抱えた凡太の姿が。

2人をそっと下ろすとグレントンの前に高速移動した。


「他の皆に手を出した時があなたの最後です。その時生まれた隙で確実に倒す。なので、存分に弱者を狙いにいって構いませんよ。彼らはただの餌ですからね」

「敢えて仲間の価値を下げることで私の注意を自分に集中させたのですか。この期に及んで仲間の身を案ずるとは恐れ入ります」

「案ずる必要はないんですよ。なぜなら私がそうなる前に確実にあなたを倒すからです」

「強く出ましたね。分かっていますよ…。それを言うことであなたへの警戒を強めなくてはいけなくなり、仲間の方への攻撃は激減すると…。どうせあなたを消さないと状況は悪化したまま。よろしい、その挑発に乗ってあげましょう!」

「お心遣い感謝します、グレントンさん」

「その余裕、すぐに消してあげましょう」


グレントンの触手攻撃が再開する。


今度は少し違う。


触手が刺さろうとする瞬間、3~5本に枝分かれし刺傷を与えようと対象に向かう。

さらに今まで直線的だった攻撃が湾曲してしなるような動きをみせる。

不規則に増殖する攻撃へと進化した。

これではさすがにかわしきれない。


「どうです?面白いでしょう」


自身の攻撃の進化を称えるように挑発する。

苦戦する姿を想像しての一言だ。


バシュ!


凡太が伸びた木の枝を伐採するように枝分かれする寸前に触手を剣で切り落とす。

これでグレントンの自信作・枝分かれ湾曲攻撃が無効化された。


かわせないのなら、かわさなければいい。

攻撃そのものを破壊してしまえばいいのだ。


「すみません。つまらないのでもう少し面白くなりませんか?」

「ぐ…」


挑発返しをされ、悔しがるグレントン。

だが、すぐに切り替え召喚魔法を唱える。


大量の狼男が召喚される。

その数1万体。


しかも――


「ムサシマル殿。前に倒したものより1個体の能力がかなり上がっているように見えるのですが、気のせいでしょうか」

「気のせいではない…。明らかに以前より数段能力が向上している。我らと同等…いや、それ以上かもしれぬ」


あのムサシマル達が脅威を感じるほどの強化がされた狼男。

グレントンは第4形態。第2形態の頃と比較すれば能力は爆発的に上がっている。

故にこの相乗強化は必然である。


「ははは!これであなたは助けに行かざるを得ない。それによって生まれた隙で今度こそ致命傷を与えてやり――」


グレントンが凡太への攻撃宣言の途中で黙った。

目の前の異様な光景に言葉を発し続けることができなくなったからだ。

 

その異様な光景とは――


凡太の念動弾による狼男の大量討伐である。

凡太の念動弾と言えば、拳くらいのサイズで威力1の弱小技のイメージ。

しかし、今回は砲弾サイズでその威力は一撃で狼男を消滅させるほどになっていた。

狼男は魔力生成されている為、自身の魔力がなくなれば消滅する仕組み。

それを一撃で消滅させたということは…。


唖然とした顔で観戦するムサシマル達。


「なんて威力だ…。あれほど強化された狼男をたった一撃で…。しかも力を込めた1発ではない為、あの威力の弾が連発可能になっているというわけですか」

「うむ…。念動弾は使用者の魔力潜在量に比例し威力が増す技。レミ殿のスキルで勇者となったレオ殿の膨大な魔力潜在量が授与されたのだ。あの威力の高さはそれあってのものだろう。これが奥義の完成形…。通りであの強かった先代が完成できなかったわけだ」


奥義・念動弾を開発した先代はムサシマルより遥かに強かった。しかし、その強さをもってしても先代が完成できなかったと言っていたかったことにムサシマルはずっと疑問をもっていた。そして先代が奥義伝承の際の条件として弱いものを推していた件にも。

今、その疑問の答えが目の前に現れた。奥義を完成させた男は弱かった。自らの弱さを自覚するが故に他者の助力に全力を注いだ。結果、男の魂胆がどうかは分からないが、他人に与えた自分の力が数倍に膨れ上がり、本来その男の持っていた力を遥かに超える形となって男に還元された。

1人よりも2人。力が合わさればより力の総量は増していく。答えは単純で分かりやすいものだった。



グレントンが驚きながらも召喚魔法の詠唱を続けるが、凡太の討伐スピードが生産スピードを上回る。


こうして生まれたわずかな隙…。


それを待っていた凡太がグレントンの目の前に高速移動する。


「最初に忠告しましたよね?“皆に手を出した時があなたの最後”って」

「…!」


両腕を引き、連弾を放つ姿勢になる。



それを遠くで見ていたレオが話し出す。


「普通、圧倒的な力が急に手に入ると人はどうすると思います?」

「大抵はその力に驕り、大雑把な攻撃をするようになると思います」

「そうですよね…。普通ならそうだ。だけど彼は普通じゃない。こんな時でも最弱思考のままなのです」

「どういうことですか?」

「彼は転移してきてからずっと強者を相手にしてきました。彼の世界からしたらこちらの世界の人間はかなり能力が高かったからです。だからどんな時でも気を抜こうにも抜けなかった。一瞬の隙で自分がやられると自覚していたからです。そうやって固定化された自分を最弱とする思考は彼が圧倒的な力を得た今でも続いています。絶対的強者ならできるであろう隙が彼には微塵もできない。つまり彼は最弱思考の最強なのです。こんな規格外の人間を倒せる者はそうはいませんよ」

「最弱思考の最強…」


嬉しそうに話すレオと規格外の男の分析に脳の処理が追い付いていないレミ。



「これで終わりです!」


凡太が念動連弾を放とうとする。


「いえ、終わるのはあなたです」


グレントンの力がさらに増幅する。

最後の場面で最後の奥の手。


第5形態だ。


さらなる形態変化の直後。

どんな者でも急な変化に脳がついていけず動きにわずかな隙ができるはずだ。

ましてや最終局面。

確実に隙は生じる。

グレントンがそう確信し隙を探す。


…が、一向に隙がみつからない。


対象は今も体勢を崩さない。


それどころか――


「体魔変換・開」 

魔力が増大し、空気がさらに重くなる。


まるでグレントンが最初からそうすることを読んでいたかのような技の発動。

これによりさらに隙を覆い隠す。

隙を絶対に現れることのない深い領域まで追いやるように…。


一瞬の不意をつかれるような出来事に体が強張るグレントン。


これにより、グレントンの隙づくり策がカウンターされる形となった。


つまり、隙ができたのは――


「わざわざ隙を与えてくださり、ありがとうございます。その厚意に甘えさせてもらい、しっかりと叩き込ませて頂きます!」


今や隙だらけとなったグレントンに念動連弾が炸裂する。

威力も増している為、魔力を削るだけではなく外傷も与えていた。

あまりの威力と数の応酬に白目をむき、サンドバックのようにタコ殴りにされる。



「さすが…。やはり君は僕の勇者だよ」

「最弱…最強…」


グレントンと凡太の一連のやり取りをみていたレオが称賛。

そして、レミの脳が再び処理限界を迎えたのであった。

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