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戦う無能おっさん  作者: 成田力太
第1章 ガンバール村救済編
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第7話 武器への対策

昼。


 敵の戦力分析で使用武器が剣だけという事で、それを無効化する方法を考えていた。剣。剣は鋼。鋼は金属。金属を弱くする。弱くするには脆くする。脆くするには錆びさせる。

 連想ゲームが終了したところで仕事に余裕があった村人達に再び集まってもらった。人数は前回の倍の6人である。前回の実験が面白かったのか、前来てくれた3人と斬空波をうった人も来ていた。彼の名前はコザカ・モーブ。強い事はさておきやたらと存在感が薄く、モブ感が強かった。この雰囲気により、親近感が絶大に上がったので、これからはモーブさんと呼ばせてもらうことにした。ちなみに身長は180㎝で筋肉質。歳は30。顔はイケメンでも不細工でもない中間で髪型は黒髪短髪。半袖シャツに長ズボンといった地味な服装をしている。この風貌に関しても親密感アップの要因ばかりであった。


 ちなみに前回の実験のことについては、秘密の特訓みたいで背徳感がたまらないらしく、村長には話していないらしい。


(上司に報告しなかった俺が言うのもなんだけど、ホウレンソウは大事だよ)


 と心の中で突っ込む。


(この実験成果は村長に報告すべきだろうか? いや、そもそも実戦でうまくいかなかったら戦局をただ悪くするだけだしなぁ。自信が持てるまでやめておこう)


 そう決意し、本日の実験に入る。


 金属を錆びさせるには、塩水と電気だとどこかで聞いた記憶があったので、それを試してみることにした。塩水に関しては塩分濃度3%のものが一番錆びやすく、それ以上濃度を高めても錆びの進行速度は速くならないらしい。海水が大体塩分濃度3%。ところが、近くに海はなく、海を探しに行くにしてもこの世界の海水が塩分濃度3%かも分からない。サムウライの偵察部隊に怪しまれるのも嫌だったので、残る手段は、自分たちで作る事。幸いなことにこの村には塩があったので微調整していけばなんとかなりそうだ。 

 

 次に電気である。


(ここは魔法の世界だし、余裕っしょ)


そう思い村人に聞いてみた。


「雷属性の魔法が使える人はいないですか? 電気魔法とかでもいいです」

「カミナリ? デンキ? なんだそれ」


(訂正、余裕じゃありませんでした。…さて、どうしたものか……まず、1つずつ教えていくしかないよなぁ。でも堅苦しい用語使ってもこの前みたいに何だそれって顔されるだけだしな。よし、ここはあのノリでいくか)


「冬に毛布から出るとき、毛布とすれてバチバチってなったことある人―」

「はーい」

「それが電気っていうんだよ」

「へぇーそうなんだー」


(え? 今ので分かったの? なんで皆頷いてるの?)


 動揺する凡太をよそに「なるほどな」を連発する人や「あーあのバチバチがそうだったのか」と納得する人がいた。


(嘘だろ? 今の悦明だけじゃ明らかにに情報量不足だろ。普通は首傾げるところだ)


 自分の脳にツッコミを入れて正常に戻し、ノリ説明を再開した。


「空にモクモクって煙みたいなのあるでしょ。あれが曇って言うんだけど、雨の降る前や雨が降った時にピカって光ったり、ゴロゴロいったりすることあるよねー?」

「あるー」

「それが雷っていうんだよ」

「へぇーそうなんだー」

(さすがに慣れてきたぞ、その反応に)


「あのドーン! ピカピカってなるやつだな」と楽しそうに言う人。そして終いには「実に興味深い」とかいう理解のその先へ向かった人が現れる中、授業は終了。


 続いて実証に移る。アンに昨日聞いた魔法習得の基本通り、まずイメージを強固にするために各々30分たっぷりと雷や電気をイメージしてもらった。その後、イメージ強固ができたと見なし、各々に木の置物めがけて魔法を撃ってもらうことにした。村人たちが手をかざして魔力をこめ始める。


(今までその概念がなかったと知った時から諦めている。あんな糞みたいな授業じゃなにも理解できないだろうし。それでも俺に気を遣って、分かっておないのに「なるほど」と言ってくれた。そんな優しい村人さん達がいると知れただけで今日はもう満足だよ)


 諦めきった顔で俯いていると……


ドーン!

バチバチバチバチ!


ありえない音色と音量。その音がした方に急いで目をやると、的にしていた木の置物がきれいに裂けていた。隣の人のは置物が燃えている。


「嘘…だろ?」


 凡太は唖然とした。そんな中、


「よっしゃー!」

「すげぇすげぇ」


 喜び、はしゃぐ村人たち。


(いや、凄いのあなた達だから。普通こんな短時間で、しかも少ないイメージ情報で習得なんて無理でしょ。この人達やっぱり理解力凄すぎ)


 凡太は呆れ半分、称賛半分の気持ちで村人達の魔法習得を祝った。

 雷魔法も無事習得できたところで本日のメインデッシュの錆び実験だ。濃度を変えた塩水をいくつか用意し、容器に入れる。そこに剣をつけて先ほどの雷魔法を使ってもらった。

塩水は蒸発してしまったが、剣は錆びるどころか溶けている。


「おおー!!」


歓声を上げる村人をよそに再び混乱する凡太。


(あれ?錆びるはずじゃ…)


 凡太は小学校の実験を再度思い出し、とんでもない間違いを犯していたことに気づく。


(食塩水に電気を通す実験って鉄の錆びを取るためのやつじゃん)


凡太が間違いの発覚してあたふたしていると村人が、


「これで剣なんて恐るるに足らずだ。やったな」

「さすが、転移者だな。知識の量と応用力の格が違う」

「本当にありがとう。これで村が何とかなるかもしれない」


ワーワーと喜び合う村人達。


(こんな中、"塩水は間違いでした"なんて今更言えねー! それにしてもこの賞賛の嵐は何? こちとら大凡ミスかました恥さらしですけども)


(整理し直すと、剣が溶けたのは雷の熱によるものだろう。鋼の融点約1200度に対し、雷は約3万度。剣が溶けるわけだ。他の溶ける系の魔法といえば炎魔法だが、さすがに警戒して剣で受けずに体で受けて無効化してくるだろう。雷魔法は知られていないからこそ最初は警戒されない。だから、武器無力化として使えるのは今回が最初で最後になりそうだけど、今はこの窮地を凌げるなら充分だ。まぁ結果オーライだな)


 不安と緊張だらけな気持ちから少し解放され、浮足立った。


「よーし、塩水をどんどんつくろうぜ」

「おー!!」

「やめてー!!」


 凡太は浮足を地につけ、凡ミスを包み隠さず話した。こうして村人の評価は転移者→英雄→転移者と元に戻った。

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