第69話 脳筋軍団
狼男と戦闘中のノーキン。
お互い無言の戦闘となるかと思いきや狼男が話しかけてくる。
「グレントンサマヨリウミダサレタワレワレハ、ムゲンニゾウショクスル。キサマラニショウキハナイ」
「ほぅ…」
狼男の言葉通り、最初より狼男の数が増えていた。どうやら30秒毎に1体ずつ増殖するようだ。つまり2000体いれば、30秒経過で4000体。さらに1分経過で8000体になる。増えれば増えるほど不利になる。30秒経過した現在は4000体であり、もうすぐ1分経過しようとしていた。
ザンッ!
ノーキンが斬空破を放つも狼男には効いていなかった。グレントンの能力向上の相乗効果で硬度が飛躍的に増したようだ。
「ムダナコトヲ。コノママカズニオシツブサレルガイイ」
ノーキンが震えながら黙っている様子をみて狼男が勝ち台詞を吐く。
「これはいい…練習し放題じゃないですか」
その勝ち台詞のことなどお構いなしに喜ぶ。震えていたのは恐怖を堪えられなかったからではなく、嬉しさを堪えられなくなったからであった。
ノーキンが斬空破を放つ。
続けてもう一つ。
二重斬空破だ。
ザザンッ!
今度は狼男を両断した。
両断した後は死体ごと消滅するので増殖は止められたようだ。
「ナンテイリョクダ…シカシ、ソノヨウナオオワザハレンパツデキマイ」
ザザンッ!
ザザンッ!
ザザンッ!
二重斬空破の三連発。
さすがにドン引きして黙る狼男。
「いやーやはり動く的があるとやる気がでるし技の切れも増しますなぁ。アイ殿に触発されてこの技を練習していたのですが、村の皆がこの技の練習をするものだから練習台となる岩や的がなくなっていて困っていたところだったのです。今回はこのような練習の場を与えて頂き感謝します」
ザザンッ!
ノーキンの後方でも二重斬空破の音が聞こえる。
その音は後方以外のいたるところで聞こえ始めた。
始まったのだ。
サムウライ村人達の練習が。
「どんどん増えていってください。練習台がないと我々は困りますから」
ザザンッ!
「ヒッ!」
先程まで余裕だった狼男が怯え始める。
まるで狩られる前の小動物のように。
「あれ?全体の数がさっきより少なくなっていませんか?困りますよぉ。まだ練習は始まったばかりだというのに…。まさかこのまま終わるなんてつまらない事はしないですよね?」
ザザンッ!
しゃべり相手だった狼男が両断される。
「どうやらつまらなくなりそうです…残念ですね」
村人達による怒涛の練習により、練習台がどんどん減っていく様子をみてそう呟く。
練習台が尽きたサムウライ軍団は、左右の狼男の群れに突っ込み、おかわりをもらいにいった。結果、左右の狼男の群れも全滅した。
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グレントンのスタート合図から30分経過。
高速で刺傷を狙う触手をレオ達3人がかわし続けていた。
レオがかわし様に二重斬空破を放つも触手が身代わりとなるためグレントンに攻撃を当てられないでいた。斬空破をレオ、モーブ、アイが同時に連発するもやはり触手の身代わりで攻撃は不発にされる。
膠着状態が永遠に続くとレオ達が長期戦を覚悟し、少し集中を弱めた瞬間。それを見逃さなかったグレントンのギアが1つあがる。第3形態突入だ。これに気づいたのは凡太とモーブの2人だけだった。弱者の本能から強者のしてきそうなことを先読みしていたのだ。こうして先程より素早く威力の増した触手攻撃が繰り出された。
レオとアイの両足に攻撃が当たるかに思われたが、レオの方へはモーブが身代わりになる形で攻撃を肩代わりした。左太ももに触手が刺さり負傷する。
アイの方は凡太が咄嗟にアイの背中を押すことで回避できた。空中だったので、凡太はそのまま落下しカッコ悪い着地をしたが、アイはきれいに着地した。
「すまんが少し離脱する」
「上出来だよ、モーブ。レオの身代わりになった姿はかっこよかったぜ」
「すみません、モーブさん!僕が油断したせいで…」
「気にするな。お前がこの戦いの切り札なのだ。俺はその切り札を守れて光栄に思う」
「…」
落胆するレオの背中を叩く凡太。
「目は覚めたか?豆腐メンタル勇者」
「ああ…ばっちりさ」
システム音声『上位スキル“勇者覚醒”起動します』
レオの周りの雰囲気が重くなり始める。
どうやら目はばっちり覚めたようだ。
(さすがは主人公。土壇場での覚醒とか、かっこよすぎだろ…)
「レイナ、悪いが強化魔法を頼む」
「はい!」
珍しくレイナに強化魔法を要求した凡太。
「そのままモーブを連れてアイと一緒に下がっていてくれ。後は俺達2人でなんとかする」
「2人でって…。ボンタ様も行くつもりですか?」
「ああ、その為に30分間近くでじっくりパターンを分析させてもらったからな」
「あの中で分析を?やはり人間離れした思考をしていますね…。まぁどうせ止めても行くだろうし、もう勝手にしてください」
「おう!勝手にさせてもらうよ」
レイナがモーブを支え、離れていくところでアイが去り際に話す。
「役に立てなくてごめんね。結局またあんたに助けられた」
「十分役に立っていましたって。それに助けられたのはこっち!いつもありがとう」
「どういたしまして…っていつものことだけど調子狂うなぁ…。それなら、私の頑張りを無駄にしないようにしっかり足掻きなさいよ!」
「任せろ。得意分野だからな」
アイ、モーブ、レイナが安全な場所まで離れていった。
そこに各軍団の代表格であるムサシマル、ノーキン、ワレス、メアリー、レミが到着する。他の者は後方で待機中。敵が単体ということで足手まといとなる的を増やさず、戦を円滑にするための配慮であろう。
レオと凡太がグレントンに向かい歩き始める。
「いくぞ。足手まといになるなよ」
「君が足手まといになっても絶対に守るから安心して足掻くといいよ」
「このイケメンが…台詞までかっこいいじゃねーか」
「そういう君こそ、この場で堂々としているのはかっこいいと思うよ」
「無能だから空気読む能力が著しく欠如しているだけですー」
「ははっ!そこが凄いんだよ。こんな場でもいつも通りでいられるその心が」
「もういいですかね?終わりにしてしまっても」
こんな状況下でも楽しそうに会話する2人を見て、グレントンが痺れを切らす。
「いいですよ。でも残念なことに少し長くなると思いますよ?」
どういうことだと疑問系の顔になるグレントンに対し、凡太が一言。
「私達は足掻き上手ですから!」




