第65話 無能の誤算
村が3日後に消されるというパワーワードの経緯を聞く為、バンガルに説明を受けるレオ達。
「今朝いつもの通りガンバール像にお参りしていたら急に光り出した。そして『3日後に近くの森からとてつもなく強い魔物が現れる。急いで村から遠い場所に離れよ』とだけ伝えて光はまた消えたんだ」
「それで村人全員を集めていたわけですか…」
「命にかかわる危険な事なだけに必要なものだけ持って非難を早急に始めようとしていたんだ。お前達も帰ってきてすぐのところ申し訳ないが、避難準備をしてくれ」
ここで無能男がいつものようにKY発言をする。
「私はここに残って一人で魔物と戦います」
「何を言っているんだ?馬鹿か?」
「はい、馬鹿です。丁度とてつもなく強い魔物と戦いたいと思っていたところでして…。私の圧倒的な力をみせつけてボコボコにしてやりますよ。さぁ皆さん!こんな馬鹿の相手をしていたら時間の無駄ですよー。早く非難してください」
馬鹿な奴だと誰もが思うような発言。
それを聞き、村人達が何かを悟ったような顔で移動し始めた。
本当に凡太は馬鹿だったのか?
レオの超インフレイベントきたー!
いつくるか心待ちにしていたらもうきやがった。
今回像が光ったって話だから本当に神様の贈り物かも。
神様ありがとう。存分に利用させてもらいますね。
村人全員避難して安全確保。
死ぬのは俺だけ。
何日か後に消された村の跡地で俺の遺体をみてレオが覚醒。
魔物を圧倒的強さで倒す。
俺が居ないからアイとの交際が進んで兄妹ルート攻略。
俺も縛りプレイ攻略で両方ハッピーエンド。
我ながら完璧すぎる…。
凡太が妄想している間に先程まで非難準備で慌てていた村人達が居なくなっていた。
レオ、アイ、バンガルがなぜかこの場に残っていた。
馬鹿を放って全員避難準備してすぐに村を出ていくと思っていた凡太が驚く。
「なんで皆さんは非難しないのですか?」
「その必要がないと分かったからだ。勝てる見込みがあるから残ると言ったんだろ?」
「確かにあるんですけどまだ要素(自分の死)が圧倒的に足りてないんですって」
「圧倒的に足りない要素?足りない…数…なるほど兵力か」
「いや、そうじゃなくって…」
「話は聞かせてもらった!」
ムサシマルが現れた。
「師匠、どうしてここに?」
「バンガル殿の最新体力測定器を見に来ていたのだ。その帰りに面白い話が聞けた。我らサムウライも参戦するぞ。村長の危機だからな」
「村長はあなたでは?」
「確かに村長権限は私にあるが、形上ボンタ殿が村長なのは変わらぬ」
「そんな権限もない張りぼてみたいな村長を守る必要はないですって。皆さんも避難してください。近辺だと巻き込まれかねませんよ」
「張りぼての方が守りがいがあってよいではないか。いや、むしろ張りぼてだからこそ面白い」
「面白い要素が一つもないんですけど…」
静かに笑い出すムサシマルに凡太が諦めたように言う。
「では戦の準備を整える為、一度帰る。2日後に会おう」
ムサシマルが村を後にする。
「フレイフ王国に援軍要請に行ってきます。兄上にお願いすれば何人か騎士を連れて来られるかと思います」
「任せたぞ」
「なんか話勝手に進んでいるし…」
レオがバンガルにそう伝えると王国へ向かっていった。
先程非難したと思われた村人達が防具や武器を家から出してきて手入れをしていた。避難準備ではなく戦準備をするようだ。
「俺も準備してくるよ」
バンガルも自分の家に戻っていった。
「どうしてこうなった…」
「みんなあんたの事を信じているからよ」
今やすっかり凡太の左腕装備品と化したアイが言う。
「あんたが残るということは勝てる見込みがあるからと信じてね」
「不確定でもか?」
「うん。だって不確定でもあんたは結局残るつもりなんでしょ?」
「そうだけど…」
「だったら皆も残ると思うわ」
「皆馬鹿なのか?」
「そうかもね。あんたのせいで馬鹿になっちゃったのかも」
そう言って笑うアイ。それを理解できないというような顔で眺める凡太。
そのまま夕食の為、食堂に向かった。
そこでモーブにも会ったが、同じような反応をされ、避難どころか全身全霊で護衛するとまで言ってきた。
食堂でモーブと別れ風呂に入った後、アイを家まで送った。
左腕装備がようやく解除される形になる。
アイが名残惜しそうにしていたが「また明日」と伝えると嬉しそうに「また明日」と答え家に入っていった。
凡太が家に帰るとレイナが待っていた。
無駄だとは思ったが一応聞いてみる。
「レイナは非難しないの?」
「主人を捨てて逃げる奴隷がどこにいますか?」
「ですよね…」
「あと厳守事項もあるのでボンタ様の側を離れる事は絶対無いです。まぁ厳守事項がなくても離れる気はないのですが…」
(項目1は夢・目的だからないとして、項目2の自分勝手要素か。俺を困らせるみたいな魂胆かな…?厳守事項が無くても離れないって言っているし。先日のタックルの件もあるし、相当嫌われているのだろう)
「まぁ勝手にしなさいな」
(やばくなったら勝手に逃げていいからな)
「はい。勝手にさせていただきます」
(最後までこの人の側にいる)
2人の思惑は違うが、どちらも相手を気遣う箇所だけは一致した。




