第64話 デジャヴ その2
レオ達の帰路。
見送り・見送られも一段落して本格的に村に向けて出発する。
ホスゲータは2匹。
となれば必然的に兄妹ルートに突入したレオとアイが相乗りする形になるだろう。
凡太も当然そう思いホゲオに股がった。
するとなぜかアイが乗ってきた。
しかも凡太の前にだ。
「アイさんや。乗る方を間違えてはおらんかい?あと前に乗られると見え辛いのだけど…」
「間違っていないわよ。ごちゃごちゃ言ってないでさっさと行くわよ」
(レオよ、これはどういうことだ?アイは君の恋人だろ?)
心の中の声を訴えるようにレオの顔を見る。
(さて、なんのことかな?全然わからないよ。それにしても二人はお似合いだよね)
少しとぼけて微笑ましいものをみるような顔をしているので、そんなことを言っているように凡太には見えた。
(微笑ましいものを眺めるのはこっちのはずだよね?)
レオは混乱する凡太を無視するように進みだした。
もちろん先程の表情は崩さないまま。
「ほら、しっかり手綱を握りなさいよ」
「あ、うん…」
こちらが手綱を握る為、アイの両手には掴まるものがなく不安定なのとやたらと凡太の方へ体を預けてくるので危ないと思い、後から抱き着く形になった。
「良い乗り心地ね」
アイが満足そうに言う。
(前が見辛いし、乗り心地はそんなによくないって言うと殴られそうだし黙っておこう…)
ホゲオはいつもより遅く移動していた。
空気を察しったからか、この前のように凡太を口の中で甘噛みできなかったのを残念に思ったかは分からないが…。
1時間ほどするとアイが眠りだした。
昨日のウルザの件で不安が増し、あまり寝付けなかったのだろう。
昨日は不安そうな顔をしていたが、今は安心しきったような顔をしている。
(アイがこの顔をできるのも今回のレオの活躍があってこそだよなぁ)
レオに感謝しつつ、昨日の事を振り返る。
レオが習得した上位スキル勇者覚醒は間違いなく今後の主力になるだろう。
本人はまだ自由に発動できないと言っていたが、いずれできるようになるだろう。
なぜならレオこそがこの世界での主人公だから。
今回のこのスキル発現でそれを確信した。
現在のレオと俺の関係はどうだろうか。
レオは俺のことを自分の勇者としてかなり高く評価しているし、俺専属の護衛兵になるとか言って王国での高待遇を拒否したと聞いている。
はっきりいって訳が分からない。
俺のどこにレオがそんなに肩入れする要素があるのだろうか。
無能、弱者、無価値といった肩入れしない要素なら充実していていくらでも答えられるのだが…。
しかし、肩入れしてくれるのは悪い事ではない。
今後の展開的にイコロイやウルザと戦わなくてはいけない場面が絶対に出てくる。
そこで主人公が怒りによって圧倒的に強くなるバトル漫画あるあるのインフレイベントが発生するだろう。
そのときに怒りの素となるのが俺の死。
愛着動物が死ぬことによって確実に勇者覚醒以上の力が出現するだろう。
なぜならレオが主人公だから。
俺が無価値であるというところが良い点だ
死んでも誰にも迷惑が掛からないし損害も無いからだ。
脳内妄想でもいつものように自虐ネタで締めくくっていると、
「そういう…ところよ…」
アイが起きてつっこんできたかと思えば、寝言だった。
凡太はそんな姿を見て優しく上着をかける。
(何にせよ、ようやく縛りプレイともおさらばだ)
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アイに上着をかける凡太の姿をみてレオが思いに耽っていた。
アイがあそこまで安心しきっているのはボンタのおかげだな。
誰がどうみても二人はお似合いだ。
だからサムウライ村での宴の時、彼にアイの事を頼んだ。
思い返せばアイとの壁を取り払うだけでも凄かった。
でも今回のボンタはもっと凄かった。
僕が一生かかっても無理だと思っていた兄上との仲の修復を会って2日でやってみせた。
さらに両親ともいつでも会える状態にしてくれた。
僕の家族との関係をすべて修復してくれたんだ。
この恩は一生懸けてでも返さないといけない。
だからこそ、彼の近くにいてどんな危険からも守り抜く。
それが僕の使命だ。
使命としたが、半分は別の感情だ。
彼の側でアイやモーブさんが仲良く笑ったり、怒ったりしているのが見ていて幸せなのだ。
彼の近くでは皆が彼に気を遣うことなく素の状態でいられる。
それは彼自身に壁を感じないからだ。
これは凄い事だが彼なら『無能で無価値だから気を遣う必要はないんだよ』と言って自分の評価を低く見積もるだろう。
しかし、これこそが凄い。
自分の弱さを受け入れ、さらにそれを周りの為に生かしているのだから。
彼の側にいると楽しいし学ぶ事も多いから自分にとって最良の環境だ。
だから側にいたい。
これが別の感情の正体だ。
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神役所、調整ルーム。
ルーム内でチーフが慌てていた。
「おかしいな…昨日はレベル51にしといたはずなのに99になってるよ。これじゃ強すぎてバグ強敵みたいになるだけで一方的にやられてしまうぞ。3日後に転送予定だから急いで書き換えないと…」
「チーフ!すみません。こっちの調整手伝ってもらっていいですか?」
「今行くよ!」
そう言って魔物の調整を後回しに。
そこへチーフの部下がやって来る。
「これが昨日チーフの言っていた魔物の設定データか。昨日の話ではついに完成したってあんなに楽しそうに話していたからもう確認は済んでいていつでも転送しても良い状態だろう。チーフは最近忙しそうだから転送くらい代わりにやっておこう。確か3日後だったっけ…」
カタカタ…
「3日後にして…転送!さぁ私も溜まっている仕事終わらせなくちゃ」
部下は仕事に取り掛かかる為、自分のデスクに戻る。
魔物が凡太の異世界に転送される。
村近くの森。
魔物の周りに結界のようなものが発生し、72時間タイマーが作動する。
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レオ達が村に戻るとアイの歓迎もなく静かだった。
村人を探していると全員が広場に集まっていた。
バンガルがなにやら村人達に説明している。
こちらに気づくと走り寄ってきて、懐かしいフレーズを言い放つ。
「この村3日後に消されるから」




